2015年11月15日

母と泊まれば

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今日はひさびさの『愛の立ちくらみ劇場』〜!
(もちろん登場人物の名前は仮名でっす)

14日早朝5時40分。銘子のiPhoneが鳴った。

『今、出たから』

銘子の父、渉からの『帰るコール』ならぬ『出たよコール』だ。

到着を見計らって銘子は道に出て待つ。
早朝なので数分で渉の車は銘子の自宅へ到着する。

渉は昨日もゴルフ、今日もゴルフ、翌日もゴルフに行く
元気な老人である。

認知症の母、律子と暮らしている父の唯一の気分転換なので銘子は
元気で出かけてくれるならそれでいいと思っている。

ただ、土曜と日曜の二日に渡って早朝銘子の家に預けられる律子は
たまったもんではない。

こういったこと(週末連ちゃんゴルフ)は年に一二度のことなので
銘子は母の好きな海のそばのホテルを予約する。

母と娘の女子会である。

弟の家で銘子は車を降ろしてもらい、弟の車を借りて
律子がいるマンションへ向かった。

前の晩から多めに睡眠剤を飲んでいる律子は
微動だにせず爆睡であった。

まだ6時にもならない…。

銘子が洗濯機を覗くと結構な洗濯物が。
暇なので洗濯を始める。

ふと洗面所をみると洗面台がくったくた。
鏡も合わせて磨きをかける。

トイレを恐る恐る覗くと…。
きゃー。

ここもしっかり掃除する。

ここまで終えて覗くとまだ律子は爆睡している。

キッチンもしかり。
70歳にして主婦デビューした渉は、料理と洗濯はしても
掃除はしない。水周りの掃除なんてもってのほか。

排水溝のズルンズルンと戦って寝室を覗くと律子が
目を開けていた。

目が合うなり『ご無沙汰しておりますぅー』と。
なんでやねん。

掃除はほとんど終えていたので律子の身支度を整えて
冷蔵庫にあった買い置きのあんぱんを食べさせた。

掃除ですっかり疲れていたので冷蔵庫からそのまま
出したからか、ひとくち食べた律子は間髪入れずに
『冷た〜い』。ごめん、悪かった。

銘子は残り半分をオーブントースターで温めた。

食後、律子を車に乗せ、銘子は自宅へ戻った。
一ヶ月に一度の律子の顔剃りをし、自宅の掃除と
洗濯を済ませて泊りの準備をする。

自分にかまってもらえないからか律子の機嫌が
悪くなってくる。

昼、簡単なトーストを野菜ジュースで流し込もうと
思ったらご機嫌斜めの律子は食べながら歩き出す。

もー、この忙しい時に!律子のカットの予約時間が迫る。
月に一度は銘子の近所のサロンでカットしてもらってるのだ。
掃除機をかけた部屋を律子はトーストを食べながら歩く。

『もー、おかあさん、何で歩くの?!』

『知らん!』

知らん、って、もーっ!

カットは律子のまどろみの中で終了した。
サロンの椅子から降りる際には熟睡状態で
脇を支えて歩かないといけない状態に。

この日泊まるホテルでは朝食は付いているが
夕食は部屋に弁当を持ち込む予定だった。
これを買いに行く頃から律子はかなり手強い状態に
なっていた。

歩いてくれない。足が前に出ない。
車に乗り込んでくれない。
寝ているのか、反抗なのか。

雨が降ってくる。

何とか助手席に押し込み、発進。

口の中でぶつぶつ文句を言っている律子。

『え?なんて?おかーさん、なに言ってるの?』

『そやかて、&%%$$#”*』

言いながらシートベルトを持ち上げて頭をくぐらせて
脱いでいる。

なだめながら銘子は元の位置にベルトを戻す。

しばらくすると靴を脱ぎだす。
しっかり紐を結んであるのでこれは断念したようだ。

再度、シートベルトを脱ぐ律子。

戻す銘子。

この攻防が幾度となく続いた。

静かにしているのでふと銘子が助手席に目を向けると
律子はシートベルトを噛み締めていた。

慌てて外す銘子。

運転もなにもあったもんじゃない。

なんとか無事にホテル到着。

ラウンジでビールを飲み、律子を風呂に入れることにした。
服を脱ぐ頃は反抗が最高潮に達していた律子。

シャツを脱がそうにも袖をしっかり握る。
靴下を脱がそうにも両足を踏みしめて上げてくれない。
浴槽をまたいでくれない。

握りしめる手の指を一本一本外してとにかく風呂に入れた。

出た頃には少し気持ちがほぐれたのか
律子はご機嫌になっていた。

ここで夕食!

必死の思いで買ってきた弁当を広げる。


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食べさせた後は歯を磨いてベッドに横にさせるとあっという間に
寝てくれた。ここから朝まで起きずに寝てくれたので
銘子は助かった。

翌朝、朝食が運ばれてきた。


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これも結構食べてくれて、チェックアウトまでベッドに横になったり
しながらも大人しくしてくれたのだ。


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折しもこの日は神戸マラソン。
このホテルからすぐの国道2号線は朝から13時半まで通行止め。

これに銘子が気づいたのは宿泊の数日前のことだった。

きゃ〜っ!

ホテルに確認の電話を入れると、車の乗り入れは規制中は無理なので
公共交通機関で来てくれ、という。

そんなん、この母親を連れて、無理〜〜〜!!

このホテルのチェックアウトは12時。
ホテルの案内は、チェックアウト後はホテルラウンジで
規制解除されるまで時間を潰してほしいとのこと。

しか〜し。最近反抗期の母親が大人しくしてくれる保証はないし、
どれほどの宿泊客がホテルラウンジに集まるのか分からない。

銘子は部屋の午後2時までのレイトチェックアウトを願い出た。
ホテル側は予約状況で渋っていたが、なんとか交渉成立したのだった。

朝9時からの朝食を終えて、銘子は律子の顔マッサージやら
パックを施して時間を潰した。幸いにもマッサージで気持ちよくなったのか
律子は1〜2時間ほど寝てくれたのだ。

午後2時前。チェックアウト。

神戸マラソンの影響が残るであろう2号線を使うのは諦めて
銘子はずんずん北上し、阪神高速北神戸線経由で帰路に着いた。

帰りの車の中の律子は大人しく座っていてくれた。
あんまり静かなので『おかーさん。起きてる?』と聞くと
『生きてるー』と答える。

生きててくれたらそれでいいのよ。おかあさん。

こんな女子会、おかーさんがもっと元気な時にもっともっと
行っておけばよかった。そう思うと運転中の目が
涙で見えなくなってしまうので車の中に流れていた曲に合わせて
声に出して歌い出した。

『ありがとう、って伝えたくて
 あなたを見つめるけど
 繋がれた右手は
 誰よりもやさしく
 ほら この声を受け止めている』

余計に泣けてくるやん!


このお話はハックションである。

〜おわり〜



posted by Avril at 21:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場
この記事へのコメント
神戸マラソンの日の神戸宿泊お疲れ様でした。
本当に親孝行な銘子さん♪読んでいて涙が出ました。
素敵すぎます。
このお話、、、フィクションでもないでしょうが、
ハックションでもないと思います(^_-)-☆(笑)
Posted by torako at 2015年11月20日 14:09
torakoさん

コメントありがとうございます。
今回の母との女子会は本当に怒涛のお泊まり会でした。

その疲れを残したままの一週間はかなりキツかったです。

でも月曜に母に会った時に『お世話になりましたー』と
言われました。
海を見ていたこと、泊まったことは全て忘れているのにです。
不思議な思考回路ですね。

でもこの一言で全て報われるのです。
また連れて行ってやろうと思います。
きっともっと手強くなると思いますけどね!
Posted by AVRIL at 2015年11月20日 23:12
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