2018年10月10日

スペイン食い倒れツアー'18 その8

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第8章 バルセロナ怒涛の最終日

地下鉄4号線JAUME I 駅がピカソ美術館の最寄駅である。
降り立ち、うろうろしているとそこらを歩いている人に
「ピカソ美術館だったらその道だよ」と二度ほど声をかけてもらった。

ピカソ美術館に行く、と顔に出ていたのだろうか?親切な声がけに感謝しながら迷わずに到着した。

年代とともにがらりと画風が変わる。
幼少期の繊細で精密なデッサンからは信じられないキュビズムへの変遷。

「なんでこんなに変わるんだろー?」
銘子がつぶやくとそばにいた加乃が言った。
「付き合う女性で変わるのよ!」
そうだったのかー。
ピカソって守備範囲広かったのねー。

ここでもミュージアムショップに立ち寄り、タクシーで宿に戻る。
荷物を置いて昨夜予約していたレストランへ向かうべくさっと支度する。
ホテル前からタクシーを拾ってレストランへ。

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『ボデガ1900』という人気店。
シェフのおまかせなので何が出てくるのかはお楽しみ、というシステム。
お腹の空き具合を聞かれる。それによってタパスの数を調整してくれるらしい。


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まずは木のスプーンに乗った緑の玉。オリーブオイルだという。
ツブ貝のようなものやウニ、牡蠣、サイズはアサリで味ははまぐり風の貝に海鮮中心のタパスが続いた。
最後に牛肉のワイン煮込みが出てきて終了。


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デザートにコーヒーで大満足の夕べだった。
お土産物があまり買えていないので、スペイン広場にある闘牛場を改装したショッピングセンターへ向かったが店は閉まっていた。


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タクシーで帰ってきてWi-Fiにつながった途端にメールが届いた。
エールフランスからだ。

「えー。雪で飛行機飛ばへんかも、ってー。変更するなら今、って言ってるー」

でた。旅行中、何度も2月9日のパリ・シャルルドゴールの天気をチェックするたびに出てくる『雪』マークに一抹の不安があったのだが…的中。

とにかくオンライン情報をまめにチェックすること、そして事前チェックインのメールが来たらまたグレードアップもしたい。
バルセロナからパリへはなんとかいけるだろう。しかし話はそこからだ。

最悪はパリで一泊か。一泊で済むか?雪で数日閉鎖なんてことになったらどうしよう。
ま、そのときはそのときだ。色々考えてしまい熟睡できない夜になった。

午前4時頃に『1時間遅れで飛ぶことになった』と連絡が入った。
リビングに集まってチェックインするもグレードアップのページに飛べない。
空港カウンターで聞いてみよう、ということになりそれぞれ身支度をする。

午前7時5分にお迎えのタクシーがくるのでそれまでに簡単に残っていたパンとコーヒーで簡単な朝食を摂る。
後になってここで食べておいてよかったーとなるのだがこの時はそれを我々は知らない。

バルセロナーパリ間のフライトは予定より1時間遅れとなった。
チェックインカウンターでグレードアップの問い合わせをすると560ユーロだという。
78,000円かぁ。
うーん。今回はプレミアムエコノミーで少し広いし、ま、帰りはそのままで行こうか、ということになった。

これも後になって沙織がいうには、この560ユーロというのはエコノミークラスからのアップ料金であって、
プレミアムエコノミーからだったら往きと同額くらいではなかったか、と。
このときは飛行機が飛んでくれさえすれば、とばかり思っていたので余裕がなかった。

そして後で後悔することになるのだった。

スーツケースを預けて免税手続きへ向かう。
ここは中国か、と思ってしまうほどの中国語が飛び交っている。
そしてどの中国人も免税手続きの書類が束のようになっている。すごい購買力。結構時間がかかったが、
これで数千円は戻ってくるのだ。

搭乗口に行くとすでに列が出来ていたので自動的にそこに並んだ。

1時間以上並んでいるとその搭乗口からわらわらと人が出てきた。

到着口でもあったのね。
で、もちろん阪急電車じゃないから終点折り返しですぐに乗り込むことは出来ずにさらに立って待つ。
清掃タイムですね。

そしてやっと機内へ案内された。

そのときになって銘子は気付いた。
自由席じゃないんだから律儀に列に並んでなくても、すぐそばのカフェで搭乗が始まるまでゆっくりしてればよかったのだ。
ああ、失敗。

パリに着いた。ここでユーロ圏出国手続きだ。並んでいる列の先頭がもめている。
あきらかに怪しそうなおばさん。列が進まない。係員が来て列を分けてくれた。これでなんとか手続き終了。

久しぶりの2Eへ。豪華になっている!とにかくここで最後のお土産を買いまくるのだ。汗をかきつつそれぞれ走り回る。
銘子が一通り買い物を済ませて搭乗口へ戻ると加乃がそこにいた。まだ時間はある。

「ビールでも飲みません?」
オイスターバーがあったのでそこのカウンターで500mlを一気飲みしてしまった。
喉が渇いていたのねーん。


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その頃、沙織はラデュレのマカロンの列にならんでいた。

それぞれ怒涛の土産物追い込み買いを済ませて搭乗口でぐったりしているとやっと機内への案内が30分遅れほどで始まった。

プレミアムエコノミーの席はたしかにエコノミーよりは広くなっている。
が、往きで贅沢した分、体はそれを覚えていた。
朝5時に起きて少しのパンとコーヒーを食べてからすでに10時間が経過しようとしていた。

窓側から加乃と銘子、通路を挟んで沙織。
その隣が三席あって通路を挟んで二席。沙織の隣は空席のようである。
そこへたぶんエコノミーからグレードアップされてきたと思われる子連れの夫婦がやってきた。

夫婦は沙織の横に幼児二人を、そして妻が通路側の一席に座った。
夫は妻の一つ前の席に座った。これが沙織の悪夢の始まりだった。


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加乃はずっと窓の外を見ているが真っ白で何も見えない。
こんなに雪のシャルルドゴールは初めてだ。2〜3時間座ったまま待機しただろうか。
急に窓に土色の液体がぶちまけられた。

待機中に飛行機に付着した氷や雪を溶かす液体で処理した後、管制塔の指示に従って離陸準備に入るとアナウンスが入る。

一気飲みしたビールで酔うこともなく、まんじりと離陸を待つ。
きっとビジネスだったらすでにウェルカムシャンパン飲んでるよなーなんて思いながらひたすら待って午後5時15分、飛行機はテイクオフした。

午後6時過ぎ。やっと食事が配られる。むさぼるように食べる。そして飲む。


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ウェルカムドリンクの泡を飲み干し、選択肢のない小さなボトルの白ワインも赤ワインも飲んでしまう。


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悲しいかな、往きの贅沢を思い出す。
朝から並びっぱなしの立ちっぱなしだった。疲れ切っているはずなのに眠れない。

映画を観る気力もない。

隣の沙織は寝相の悪い幼児に何度もパンチを浴びている。

「うつらうつらしてたり気を抜いてたら急に(パンチが)くるから、ほんまに『うっ!』ってなるねん〜」

大阪に着くまで数10発受けたらしい。
ずいぶん経ってからやっと気付いた母親が席を変わったようだがもう少し早く気付いて欲しかった。

加乃も疲労困憊の状態だった。
旅の終わりは日常の始まりでもあり、これが憂鬱極まりない。

楽しかった数日。
三人で歩いているとそこは外国とは思えないほど不思議にリラックスできた。
最後の飛行機に関しては遅れて遅れて並んで待ってと色々起こったが、
その他はすべてスムーズに段取り良く進み、食事も美味しかった。

素晴らしい仲間と素晴らしい旅行ができたことに感謝だ。

三人とも機内ではほとんど眠れずに大阪到着。
スーツケースは無事に受け取り解散となった。

外は冷たい雨が降っていた。加乃の涙雨か?

また行こう。いい仲間とサンセバスティアン。最高の旅行だった。
また行こう。絶対行こう。今回一緒に行けなかった仲間とも。

サンセバスティアン、バルセロナ、最高!
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2018年10月09日

スペイン食い倒れツアー'18 その7

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第7章 バルセロナ最終日、バスツアーの大杉漣

バルセロナに行くならやはりサグラダファミリアは外せない。
旅行前に調べてみるとまずはチケットを予約しないといけないことがわかった。
塔に登るエレベータの時間指定?うーん、ややこしい。さらに調べてみると、
バルセロナをざっと廻ってサグラダファミリアの中まで連れて行ってくれる日本語でのバスツアーを
見つけたのでこちらを予約しておいた。

午前9時20分、凱旋門前集合。

朝ごはんをさっと摂って、三人はアパルトマン前からタクシーに乗り、集合場所へ向かった。

もちろん、運転手にノート(『  LArc de Triomf 』と書いてある)を見せる。
数分で到着。

2月8日木曜日の朝9時過ぎ。普段の朝の風景だ。
自転車が勢いよく通り過ぎる。
犬の散歩も多い。
人懐こい犬が寄ってくる。
人懐こい飼い主も話しかけてくる。


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そこへトレンチコートを着て、髪を引っ詰めた化粧っ気のない女性が、
何かを大書きした紙を持って現れた。ツアーの関係者のようだ。

どこからともなくその女性に向かって日本人が集まってきた。

「はい、出席をとります。XXさん、OOさん…」

全員が集まったようなのでバスへ向かう。どうもこの女性がガイドを務めるような。
誰かに似ている。イントネーションは確実に関西人だ。

「誰かに似てない?」
「そうそう、私もそう思ってた」
「あ、大杉漣!」
「そうや!大杉漣や!!」

大杉漣ならぬ、蓮子さんとここでは呼ぼう。
バスに乗ってすぐに名乗ってくれたのだが本名はマイクの雑音で聞き取れなかったからだ。

バスはモンジュイックの丘へ向かっていく。
途中のところどころでミニガイドが入る。
コロンブスの像が立っている。彼の指差す方向に新大陸はないのだそうだ。
方角的には間違っているが、像の設置場所の都合でとにかく海を指差すようにしたそうな。

バスは丘を登っていく。丘の中腹でカラフルな車とすれ違った。
蓮子さんによるとこの丘は『自動車教習所のコース』になっているそうだ。
たまにエンストするので教習車の後ろを走るときは注意が必要なのだとか。
丘の名前の由来は『ユダヤ人の山』で、かつてユダヤ人の墓があったからだそうだ。


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丘の上からの景色が美しい。
バルセロナ万国博覧会やバルセロナオリンピックなどが行われるたびに新しいタワーやビルが建ち、
街が整備されていったそうだ。市街を望むと遠くにサグラダファミリアが見える。
あそこへ行くのかー。

バスに乗り込み、車窓から市内観光をする。
モンジュイックの丘のふもとには1992年バルセロナオリンピックのメイン会場となったスタジアムがある。
今では当たり前のようになったオリンピック開会式でのドラマチックな演出はバルセロナオリンピックから始まったそうだ。

火のついた矢をアーチェリーの選手が放って点火したとか。
これを実際にテレビで見ていた蓮子さんは鳥肌が立ったそうだ。
熱く語る蓮子さんだが銘子はほとんど覚えていなかった。
そしてツアーの客の中にはそのオリンピックの開催された1992年に生まれていなかった人も多かったからか
反応が薄かったようだ。仕方ないことなのだがなぜか悲しい。

市内を走りながらガイドは続く。
大きな闘牛場が現れた。
今は巨大ショッピングセンターになっているそうだ。
蓮子さんによるとバルセロナでは古い建物をすぐに壊してしまうのではなく
それを生かせるものが決まるまで何年でも寝かしておくらしい。

古き良き景観はそうして保たれる。
何でもかんでも壊して新しいビルを建ててしまい、どの主要駅の駅前もどこも似たような作りになっている
日本のことを銘子は思った。


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バスがサグラダファミリアに到着した。
この界隈にはスリがたくさん出没するのでくれぐれも注意するように言われる。
別に周りをにらみながら歩けというのではなく、
ただバッグのファスナーを閉めてその上に手を添えるとか、
バッグをコートの中に仕舞ってしまうとか『私は気をつけていますよ』という雰囲気を醸すだけでいいのだそうだ。


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まずは少し離れた公園のようなところから写真撮影。
池に映り込んだサグラダファミリアと鏡面のように撮れるスポットがあるらしい。
試みたが難しい!


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『生誕のファサード』から入場する。
建築途中でガウディーは亡くなってしまうし、その死後起こったスペイン内戦で設計図や模型が破壊されるなどで
建設の続行は不可能かと思われたのだが、わずかに残された資料で今も完成をめざして工事は続いているのだそうだ。

1882年に着工し、ずっと建築中だった工事現場が教会となったのは
2010年のことで、2005年には工事中なのに世界遺産となっている。

東西南北の4つのファサードに18本の塔が建って出来上がり。
1980年台に300年はかかるだろうと推測されたが
近年の建設技術の向上もあり、完成は2026年の予定という。

蓮子さんによると近くの村である程度パーツを作って運んできて組み立てる工法になってから
劇的に工期が短縮されたそうだ。

ファサードの彫刻で聖書の内容が具象化されているので見るだけで理解できるようになっていて、
生誕のファサードではキリストの生誕の物語を表現している。

中に入る。全てに圧倒される。建物ではない、生き物のようだ。


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一旦外に出て『受難のファサード』を見る。
『生誕のファサード』とは全く違うテイストでキリストの受難から復活までの物語が表現されている。
そして蓮子さんが言った。


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「あそこに立っている像、何か見たことありませんか?」

あ。あれは。正面『ネガのレリーフ』のヴェロニカの後ろに控える兵士…

「スターウォーズに出てた」


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もちろん、こっちがオリジナルだそうだ。
教会の内部を見て宮崎駿さんもインスピレーションを得たそうなので
色々と影響を与え続けるものすごいパワーのある造形物である。

そしてところどころにガウディーの遊び心が垣間見られる。
受難のファサードから見る鐘塔にはローマ字で何か刻まれている。


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Sanctus』と読める。蓮子さんによると、これはガウディーの考えたお祈りの言葉で、
世界各国からやってくる見学者がそれを見た時に
「あれなに?Sanctus,Sanctus…」とつぶやくことになる。
それぞれ言語が違う世界の人間が「Sanctus, Sanctus」と同じ言葉でお祈りをする、
というガウディーの遊び心だと。すごすぎるー。

で、この鐘塔は2018年現在で完成しているのが8本。そしてこれからあと10本建つのだ。
そして蓮子さんとはここでお別れ。塔に登る予約をした人を引き連れて行ってしまった。
我々はここから自由行動だ。

地下にあるガウディーのお墓参り(?)をしてからショップを周り、
地下鉄でエシャンプラ地区へ向かう。沙織が調べてくれたタパス料理の店を目指す。
Tapas 24』という人気店。すぐに見つかり、少しだけ並んで席へ案内される。


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三人並んでのカウンター席。
『パン・コン・トマテ(Pan con Tomate)』係りのお兄さんが延々作っているのが見える。
注文を待ち、料理が来るのを待ち、食べながらもずっと見ていた。もうこれでもう一人で作れるもん。


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料理に大満足して店を出て、沙織を先頭に『ロエベ』へ向かう。
幸いにもスペイン人だが日本語学校に通っていたというおねえさんが付いてくれたのでスムーズに買い物ができた。

またもやここにも中国人が買い物に来ていてなにやら沢山品物を出してもらってワイワイしていた。
その子供は退屈なのかそこらをウロウロし、ショーケースのカウンターテーブルに肘をつきながら
親は買い物途中にスマホをいじっている。

残念ながら沙織がずっと探していた片方のイヤリングはすでに生産中止となっていたが、
沙織は革の手袋、加乃はブローチ、銘子はサングラスを買った。
入り口近くにいる中国人よりも格段に買った品物の数は少ないはずなのに
奥のソファー席へ案内され、お茶のサービスまでしてもらう。なんだか得した気分!

そこからまた地下鉄に乗り、怒涛のラストスパート。

ピカソ美術館だ!
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2018年10月08日

スペイン食い倒れツアー'18 その6

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第6章 バルセロナ満喫とカサ・ミラ閉店ガラガラー

2月7日水曜日。バルセロナでの初めての朝。
簡単に身繕いをしてキッチンへ集合する。
前日に買い揃えていた材料で朝食だ。
加乃がなんちゃってトルティージャを焼いてくれた。
生ハムにサラダ、ヨーグルトにオレンジジュース、コーヒー。


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朝からお腹いっぱい。

さ。バルセロナの胃袋、サン・ジュセップ市場(El mercado de Sant Josep)
通称ボケリア市場へ出陣!

この日の夕食は加乃が腕をふるってくれる、その食材を仕入れるためだ。
旅行先の市場で食材を買って料理して食べる、というのを最近の旅行で実践している加乃は、
今回もこれがしたくてわざわざキッチン付きの宿にしたのだ。

アパルトマンからは路地を抜けて徒歩15分ほどのところにあるのを地図で確認する。
少しゴチャゴチャした路地を歩いているとおいしそうなパン屋さんがあった。
ショーケースを覗くだけで楽しい。
朝食でお腹いっぱいになったはずなのに『ひとくちドーナツ』を買うことにした。
4つで1ユーロ。


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店を出た、いかにも観光客な三人に、小銭を紙コップに入れて
ガチャガチャ揺らしながら痩せた物乞いがすり寄ってきた。

店での支払いを終えた財布をバッグに速攻で仕舞った加乃は、
紙ナフキンで包んだドーナツひとつを物乞いに『はい!』と渡した。

『ドーナツやなくてお金が欲しいねん』と言わせる暇も与えない早業であった。
物乞いはしばらく受け取ってしまったドーナツを唖然と見ていたが、
ポイッと口に放り込むとスタスタ立ち去っていった。


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『ドーナツ、ひとつ余ったからちょうどよかったわね』加乃がにっこり笑った。

路地を抜けると大きな通りにぶつかった。
ここがランブラス通りだ。目的の市場はすぐ先にあった!


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あふれる食材。ごったがえす人。呼び込みの声。
ああ、何を買おうか。

一通りさっと見て回った末に決めた夕食のメインは牛フィレステーキ。
エビとホタテのグリルもいいな。
あ、ホワイトアスパラがある!小さな小さな新じゃがもある!

『ホワイトアスパラ欲しいけど、あの束は大きすぎるわ』と加乃。

『えー?分けて売ってくれるのと違いますぅー?』と沙織。

すぐに沙織は店の中のおっちゃんに呼びかけた。
そしてアスパラの束を指差してすぐに手で半分に縦に割るジェスチャーをしながらきっぱりと日本語で言った。

『それの半分、欲しいねん』

これがまた見事に通じた。
おっちゃんは束を外して半分になったアスパラを見せながら
『これぐらいでいいか?』いうそぶりをしてくれた。

『ぐらしゃす!』

さあ、メインのフィレ肉を買うぞ!と肉屋さんへ行くが、
牛肉だらけでどれがステーキ用なのか分からない。

銘子がノートを取り出して走り書きした。

『 STEAK → FILETE  150g x 3 

ステーキ用のフィレ肉150gを3つ欲しい、という意味だ。
店のおねえさんにガバッと見せる。

おねえさんはノートに目を走らせるとすぐ頷いた。やった!通じた。

ショーケースからドでかい肉の塊を取り出してゆっくり切り分けてくれた。
支払いは15ユーロを少しだけ下回った。二千円しない。安い。
さらにデザート用にきれいな苺も買い、軽く市場付近で昼食を摂ることにした。


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PAELLA BAR というパエリア専門店を見つけた。
よし、先夜の塩辛パエリアのリベンジだ。


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注文時におにいさんが、パエリアが焼きあがるまでに時間がかかるので
何か他につまむものも注文したらどうか、と言う。
お薦めを聞くと『パン・コン・トマテ』だというのでそれにする。


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新聞の朝刊を三つ折りにした位の平たいバゲットを二枚おろしにして
トマトとオリーブオイルで味付けてある、それは大変美味しかった。
きりっと冷えた白ワインでパエリアを待つ。


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ここのパエリアは美味しかった。
米のアルデンテ具合が絶妙である。
日本で食べるとお約束のように飾りのレモンが刺さり、縁はかなり焦がしてあるが本場は違うようだ。
表面はオーブンではなくバーナーで焼いたような感じだ。
ああ、うんまい。これも日本に帰ったら真似しよう。


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荷物を持ち帰って午後の予定を立てる。
加乃は以前にバルセロナの観光をしているので、沙織と銘子に
『どうぞ行ってらっしゃい!夕食は私が作っておくから』と言ってくれた。

スマートフォンでバスの乗り場と時刻表を調べるとすぐ近くに乗り場もあり、
出発時間ももうすぐではないか!
部屋の中はフリーWi-Fiなので調べ物をするにはとても助かる。

まずはグエル公園をめざして二人は出発した。
沙織と銘子がバス停に着くとそこにはすでにバスが停車していた。
運転手に行き先を確認して乗り込む。

バスはぐんぐんとグラシア通りを山手に向かって走っていく。
地下鉄でも行けるとガイドブックにはあったが、駅からしばらく登り坂を歩かないといけない。
バスだと公園入り口近くの停留所まで行ってくれるので嬉しい。

入場券の売り場は有人窓口と、券売機があるのだが、
その券売機の前に陽気なおにいさんが立っていた。

「はーい、二人?じゃあ、このボタン押してー。現金かな?カードかな?」
操作するのは各自だが、おにいさんがガイドしてくれる。
カード決済でパスワードを入力するときには大袈裟に向こうを向いていてくれる。

そして今買ったチケットの入り口はここだ、と地図で示してくれた。
入場時間も指定されているようだ。

時計を見るとあと数分。すでに沢山の人が並んでいたので後に続く。
どうも入り口を二つに分けて時間差を作って入場させることで混雑を緩和させているようだ。
頭いいー。


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グエル公園。


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作ったガウディーさんもすごいけど、任したグエルさんもすごい。
もともとは学校も市場も備えた住宅街だったのが、住宅を誰も買わなかったので
計画変更で公園となったそうだ。
イギリス風住宅というが、どこをどう見てもガウディー風でしかないじゃないか!


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沙織が一言つぶやいた。
「やっぱりガウディーって頭おかしいよね」
銘子も黙って頷いた。


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ここで言う『おかしい』というのは褒め言葉で『常人ではなく天才だ』という意味である。

観光客でごった返す園内。自撮り棒を振りかざす人もいる。
折角だからと沙織に言われて銘子もカメレオンと写真に収まった。
日が落ちるまでにもう一つの目的地、カサ・ミラへ向かうため、元の停留所からバスに乗る。
このバスが大渋滞に巻き込まれ、カサ・ミラに着いたら閉館してしまっていた。


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諦めきれない沙織は併設されているカフェに行こうと銘子を誘った。
ちょうど壁際の席が空いていて、そこの窓からカサ・ミラ内部が少しだけ見えるではないか!


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「よかったねー、少しでも見られて」と話していたら
係りのおにいさんが現れて早口で何か言ったかと思うと、
その窓に緑色のシャッターが降ろされてしまった。
けちー。閉店ガラガラーやんか。


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店内には中国人の富裕層の家族連れが何組かいて、
両親はそれぞれずっとスマートフォンをいじり、
子供はそれが終わるのをつまらなさそうに待っていた。


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二人が地下鉄でアパルトマンへ戻ると加乃が料理を用意してくれていた!


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前菜はオリーブ二種類とアーティチョークとホワイトアスパラガスに焼きししとう。

魚料理は赤いエビとホタテのグリル・レモン添え。

肉料理はフィレステーキと蒸してからさっと焦げ目をつけたミニポテト添え。


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デザートはいちご。

ワインが1本空いた。

明日がバルセロナ最終日。
最後の晩餐はどこにしようか、と相談の末、『エル・ブジ』のシェフが経営するタパスが充実したバルに決定。
ネットで予約できるのが嬉しい。
これならお互い聞き間違いなどがないので安心だ。

こうしてバルセロナ滞在2日目が終わった。
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2018年10月06日

スペイン食い倒れツアー'18 その5

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第5章 サンセバスチャンからバルセロナへ

2月5日月曜日、サンセバスチャン二日目の朝。
シャワーを済ませてさっぱりした三人は朝食を求めて宿を出た。
昨夜、あんなに食べたのに朝になると空腹を覚えている。

宿の正面にラ・ブレチャ市場(Mercade de la Bretxa)がある。
昨日のツアーガイドのルルドさんによると、食品衛生やテロ対策もあって地下に移転したのだそうだ。
エスカレーターで降りていくと生ハムや魚、野菜に肉、様々な店が軒を連ねている。
あった、あった、端の方にバルが。
カウンターで忙しそうにしていたおじさんが朝食のメニューを見せてくれた。


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オレンジジュースにトルティージャとパン、そして生ハムのピンチョスに
チョコレートデニッシュのデザートがついて7.70ユーロ。


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注文の際に、加乃がメニューを指差してから「どす(dos)」と言った。
しかも指は、親指と人差し指と中指の3本立てている。

ややこしいので説明する。

加乃は「メニューのこれを3つください」と言う際に、
言葉ではなぜか「3(とれす)」ではなく「2(どす)」と言ってしまい、
さらにややこしいことに指を3本立てる。

「2つください」と言いながらゼスチャーでは「3つ」と言っているから聞き手は混乱する。
日本人は折っている指の方を(3本立てて2本折り曲げているから)数えるのか?…などと思ってたりして。

「どす(dos)、いや、違う、とれす(tres)!」

なぜ加乃の頭の中でスペイン語の2と3が混線してしまったのか、
このやり取りはこの旅行中何度となく発生するのだった。

さて、食事は大満足で、そのままホテルには戻らずに昨日行った料理教室にあるショップでお土産もの探しに向かう三人。

日本で下調べしていた時に、ここのショップのエプロンを見つけた銘子は、絶対に欲しい!と思っていた。
エプロン以外にも、魅力的なものがかなりある!
様々な食材に目を奪われる。色々なフレーバーのオリーブオイルに塩、パエリアの素に…ああ、全部欲しい。
加乃も沙織も銘子も本気モードで買い物をし始めた。

しかし旅程はここからまたバルセロナに移動する。
この時点でスーツケースの重量をあまり増やしたくはない、が欲しいものは欲しい。
それぞれ葛藤しながら品物を吟味する。それでも精算時にはかなりの量になっていた。

レジのおねえさんは開店してすぐの爆買い日本人にサービスの気持ちでおまけまでつけてくれた。
サービスの気持ちは嬉しいが、瓶詰めのハチミツだった。中身だけで軽く500gはある。

それぞれの包みに入れてくれたが、三人とも「う、重いからあえて買わなかったのに…」と言葉を飲み込んだ。
「重いから結構です」と断ることもできたのにそれも誰も言わなかった。
「¥0(タダ)」の魅力だった。

一旦荷物を置きにホテルに戻る。
その夜はせっかくだからレストランに行こうとフロントのおにいさんに聞いてみることにした。

さすがに星付きのレストランは予約できないだろうなーと思いつつもダメもとで聞いてみると、
おにいさんも『無理ちゃうかー?』と言いながら電話してくれた。
すると店は予約で一杯、というのではなく、閑散期なので長期休暇中だとか。
二軒とも休暇休業中だったのでおにいさんのお勧めのお店を予約してもらう。

軽く昼食をとるのに小雨降る中を旧市街へ。ピンチョス、やっぱり旨い。


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通りを歩いていると…「あった、あった。ここが夕食予約したレストランやね?」
「そうそう、ここやわ」、そうこれで確認も出来てしまった。
それから二軒ほど回ると満腹になってきた。


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ふと甘いものが欲しくなり、カフェでホットチョコレートとチュロスを頼んでみる。
ここではカップに入ったチョコレートにチュロスを突っ込んで浸して食べるようである。
さっそく試してみるが、なんとも初めての濃さ。
まさに湯煎したチョコレートそのもので、浸したチュロスはチョコレートコーティングされて甘さ100倍となる。


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腹ごなしに散歩をすることにする。…しかし夕食までに空腹になるのか?

コンチャ湾の海岸遊歩道の端に大きな鉄のオブジェがあるそうなのでそこへ向かうことになった。
ずんずんずんずん歩いていく。雨と風が強くなってきた。
海岸ではほとんど人がいない。
散歩に連れてこられたのか、一匹の黒い犬が肌寒い雨の中を走り回っていた。


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ずんずんずん、ずんずん…ずん。黄色のテープが張ってあり遊歩道はそこから進めなくなっていた。
風が強いので波もかなり荒い。オブジェは諦めて街中に入る。
体が冷えていたので温かいコーヒーを飲む。ここで加乃はホテルに帰って休むと言う。
夜の食事に備えると言っていたが、寒い中を海岸沿いを連れ回したから冷えてしまったのかもしれない。

あとで分かったことだが、三人はこのオブジェがある場所の反対方向へ向かっていたらしい。
寒い中の歩き損であった。

沙織と銘子はそのまま街歩きを続けた。
沙織はLoewe(ロエベ)で探し物があるというので二人で店に入る。
落としてしまったイヤリングの片方を探していたのだが残念ながら見つからなかった。

それからZARA HOME などに寄りホテルへ戻った。

さあ、サンセバスチャン最後の晩餐だ!

昼間に確認してあったのですんなり行けたレストランはCasa Urola という店で、1階はバル。
2階がレストランになっている。予約していると伝えると2階に案内された。


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期待が膨らむ。それぞれ前菜とメインとデザートを頼んだ。
盛り付けも味も全て期待以上で大満足だ。


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TXACOLI(チャッコリ)』を1本空けた。
大いに食べて喋って飲んだ。
スタートが午後8時半だったので食べ終わったら11時を過ぎていた。
三人が店を後にする頃でもまだその店も界隈も盛況で、スペイン時間を羨ましく思うのだった。

翌日は軽くホテルの近所を散歩してカフェで朝食をとる。
ここでもまた加乃は「どす、いや、とれす!」と言っていた。

どこで食べてもトルティージャがすこぶる旨い。
日本に帰ったら絶対に真似しようと銘子は心に決めた。


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ホテルをチェックアウトしてタクシーを呼んでもらい、バスターミナルへ向かう。
ここからビルバオ空港行きのバスに乗るのだ。


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空港に着くとまだチェックインカウンターが閉まっていた。
今回はVueling航空というLCCを使う。
1時間と少しのフライトとはいえ、50ユーロしないのだ。


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で、チェックインの時間になってもまだ開かない。
カウンター内に誰もいないが数名が並びだしたので慌てて後に続いた。
少しして係りのおねえさんが急ぐ様子もなく、ゆったりと現れてチェックインが始まった。

そのあと、カフェでビールを飲んだり売店を冷やかして過ごし、搭乗口へ。
バスのピストン運転で飛行機まで運んでもらい、タラップを登る。


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さらば、サンセバスチャン!また来るよ!

飛行機は思ったよりも快適で無事にバルセロナへ到着した。

客待ちしていたタクシーに乗り、宿泊先へ。
もちろん行き先を大きく書いたノートを見せる。これでかなりスムーズに伝わる。
バルセロナではアパルトマンを借りることになっている。そしてすんなり宿に到着。

部屋は3ベッドルームに浴槽付バスルームとシャワーのみのバスルームがそれぞれ一つに
リビングルームにダイニングルーム。洗濯機は外のベランダにあった。


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荷物を置いてすぐ、近所のスーパーへ買い出しに行くために台所を物色する。
コーヒーはカプセルが数種類あり、ビールも1ダース以上ある。
これって勝手に飲んで良い、ということだろうな。だったらとても嬉しい。


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朝食のパンに卵に生野菜、そして水に牛乳にオレンジジュースを買ってきた。
食材を冷蔵庫に収めたあと、夕食は近くの店で軽く済ませることにした。

『確かこの辺りがタパス通りだったような…?』
『あれ?』

ウロウロした末に適当な店が見つかったので入る。
簡単なタパスを三品とパエリアを一つ頼む。
気さくで陽気なアジア系のおねえさんが皿を持ってくるたびに『おいしい?』と聞いてくる。
普通に美味しいので『おいしーです!』と答える。


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最後にパエリアが来た。それぞれ取り分けて一口食べた途端、三人ともつぶやいた。

『からい…』

まるで塩の分量がおかしい。小さじの分量を大さじで入れた?と思うほどに塩辛い。

おねえさんがやってきて尋ねた。『おいしい?』

三人は声を揃えて『からい…』
首をかしげながらおねえさんは残ったパエリアを下げていった。
厨房で大きな声でのやり取りが聞こえたが何を言っているのか分からなかった。

アパートに戻りそれぞれ荷物の整理やシャワーを済ませてベッドに入る。
行程はあと2日。バルセロナを満喫するのだ!!

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2018年10月03日

スペイン食い倒れツアー '18 その4

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第4章 サンセバスチャン満腹ツアー

ビルバオのバスターミナルの電光掲示板を三人はずっと見ていた。
15時発の『SAN SEBASTIAN』行き、もしくは
『DONOSTIA』行きがどのレーンなのかなかなか表示されない。
ちなみにSAN SEBASTIANはスペイン語で、DONOSTIAはバスク語。
どちらも同じ街の名前だ。ややこしいがこの両表記に慣れなくてはならない。
郷にいれば郷に従え、である。

「あ!出た!」

掲示板に表示されたレーンまでスーツケースを転がしていく。
バスはすでに停まっているがドアは閉まったままだ。
バスの正面の行き先表示を確認すると間違いなし。さらに出発時間まで待つ。

そして出発時間の直前に運転手がやってきて荷物入れのドアを開けた。
ぞろぞろと他の乗客がスーツケースなどを積み込んでいく。
なるほど。
客が各自で積み込むシステムらしい。
沙織がプリントアウトしてくれていた予約確認書を提示して席に着く。

それぞれ一人づつ窓際に縦一列に並んだ。
沙織が景色を堪能できるよう、全員窓側に座席を取ってくれていたのだ。
ちなみに帰りは反対方向も見られるように予約したとのこと。さすがである。

バスは定刻に発車。
風景は市街地からすぐに牧歌的なものへと変わる。
山の斜面では所々で羊が放牧されている。車窓を楽しむ。

きっかり予定通りにサンセバスチャンのバスターミナルへ到着。
地下の降り場からエレベーターで地上に出るとすぐタクシー乗り場が見つかった。
すかさず加乃が聞く。

「銘子さん、あれ!準備OK?」

「もちろん!」

ホテルの名前と住所はノートに大きく書いてある。
後部座席からそれを見せると運転手はすぐ頷き、アクセルを踏んだ。

あっという間にホテルに到着。小さなペンションのようだ。
旧市街に面した通りにあり、便利そうである。


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受付のおにいさんにそれぞれ部屋の鍵をもらう。
加乃の部屋は『LABOA』、沙織の部屋は『HEGOAK』で、
そして銘子の部屋は普通に『201』。
かなり不思議でランダムな命名である。おにいさんが説明してくれた。

このホテルのオーナーが好きな歌手が『LABOA』で、
その人の曲で好きなのが『HEGOAK』というのだそうだ。
名前は個性的だが、『LABOA』も『HEGOAK』も『201』も
部屋はほとんど変わらぬ作りなのだった。


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一息入れて、いざ、ピンチョスツアーに出発だ!
徒歩ですぐの場所にある『Mimo クッキングスクール』が
展開しているツアーに参加するのである。
これは日本からネット予約しておいたものだ。
初めての街で山のようにあるピンチョスの店を効率的に廻るためこれを利用するのである。

カーキ色のコートを着たかなりパワフルな感じの女性が現れた。

「はーい!お腹空いてる〜?」

ガイドのルルドさんはクッキングスクールで料理を教えたり、
ピンチョスツアーを引率している、この旧市街出身のママさんである。
ロンドンに住んでいたこともあって英語が流暢である。
おのずと全編英語のツアーとなる。

銘子は英語がよく分からないので、加乃と沙織の後ろについていく。。

「はーい、こっちにいらっしゃーい!」

勧められるままカウンターの席に着くと、ルルドさんがグラスを並べ始めた。

「白がいい?それとも赤?」

「じゃあ…白を…」

我々3名とあと2名が合流して合計5名のツアーとなるようで、
揃うまで飲んで待っていよう、ということらしい。

がっつり注いでくれる。

ホテルの朝食をしっかり食べてから美術館のビストロでランチ。
移動はほとんどバスとタクシーだったのでお腹が空いていない不安を抱きながら
ワインをちびちび飲んでいると…若い男女二人連れが現れた。

オーストラリア出身のカップルで世界一周の途中で立ち寄ったとか。
バックパッカーというよりも洗練された、いわゆる『シュッとした二人連れ』である。
若くして世界一周…なんの仕事してるんだろうか?

いや、世界は広い。いろいろな人がいるのだ。
軽く談笑したのち、さあ、出発だ!


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地元っ子のルルドさんはどこに入っても知り合いがいるようで、
勝手知ったる店とばかりにさっさと5人分の席を確保してくれる。

最初の店に入る。
やっぱりバスクでの第1杯目は『TXACOLI(チャッコリ)』でしょー!と
ルルドさんがいうので全員それにする。

白の発泡ワインのようで、これのグラスへの注ぎ方がすごい。
水芸のようだ。右手でボトルを高々と掲げ、
左手にグラスを持って大きく腕を開きながらおじさんは瓶の注ぎ口を凝視している。
グラスは見ていない。でもこぼさない。プロだー。
液体は大きな弧を描いてボトルからグラスへ注がれる。

この高い位置から注ぐことで、細やかな泡が立ち、香りも開くのだそうだ。

この飲み物にそれぞれ2個ずつピンチョスがやってくる。
『ししとうをシンプルに炒めて塩で味付けしたもの』と
『エビのソテーにたっぷりオリーブオイルをかけてバゲット風のパンの上にのせたもの』の2種類だった。


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ししとうが旨い。シンプルでいい。


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そして次のピンチョスをかじると、パンがふわっとエビと一緒にちぎれる。
上に乗せる具材と柔らかさが合ったパンなので同時に噛み切れるのだ。
さりげないが、なかなかの気遣いである。

具材だけがびろ〜んと全部口に入ってきたりしないのだ。すばらしい。

エビにかかったオイルが指にまとわりつく。ここでルルドさんが一言。

「はーい。指や口をぬぐった紙ナフキンは床にポイっと捨ててね」

足元を見ると丸まったナフキンが転がっている。
これが多い店ほど繁盛しているということなので気にせずポイポイせよ、と。

幼い頃からゴミはゴミ箱へと躾けられて育った日本人三人には
かなりの抵抗があるが…ここは郷に入れば従うのみ、
とそっと足元に『置きに行く』のであった。


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「はーい、次の店に行くわよー」

次の店でも飲み物1つにピンチョス2つがノルマ(?)である。
めくるめく海鮮、肉、野菜。4軒目でもうギブアップ状態になりつつあった。


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オーストラリアからやって来た二人ももう無理!
ということで最後はデザートのお店になった。

「えーっ?もうお腹いっぱい?だめじゃ〜ん!まだもっと行く予定だったのにー!」
みんなが手をつけられなかった皿を平らげながらルルドさんは言った。

最後の店でデザートをいただき、解散となった。


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親切にも、後でどの店に入って何を食べたかメールしてくれるそうだ。
店の名前もすべて記してくれるそうなので再訪可能だ。

飲み過ぎと食べ過ぎで疲労困憊の三人は
それぞれホテルの部屋に入った途端にベッドに倒れこみ、
シャワーも浴びずに一日が終わったのだった。


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2018年09月30日

スペイン食い倒れツアー '18 その3

第3章 グッゲンハイム美術館とビストロ

2月4日日曜日。しっかり眠って体力回復した銘子はゆっくりストレッチ体操を始めた。
コンコン。
ドアがノックされる。加乃だった。

「銘子さん、私お腹すいたから先に行ってますね」
「はーい」

銘子は慌てて身支度を整えてフロント階にあるレストランへ向かった。
加乃と沙織は先に朝食をとり始めていた。

ベーコンにソーセージ、フライドポテトにスクランブルエッグ。
様々な食事パン、に甘いパン。シリアルにヨーグルト。牛乳に何種類かのフレッシュジュース。
熱々のコーヒー。チーズにフルーツもある。

あ〜ん、どれから食べようか。

どれをとっても美味しい。
スペインでの第一食目!美味しい始まりに幸せを感じる。

チェックアアウト後、ホテルにスーツケースを預け、いざ、グッゲンハイム美術館だ!

軽く霧雨が降る中、タクシーを探すも乗り場を通り過ぎたのか見つからない。
さらに進むと線路にぶつかった。
近くに駅がありそうだ。そこまで行けばタクシーもあるだろうと線路沿いを歩く。

あった、あった。タクシー乗り場。
停まっていたタクシーに乗るとあっという間に到着し、正面にある緑色の巨大オブジェが迎えてくれた。
これはPUPPYという名前のわんこだそうだ。
4万本の花で飾られているのだが残念ながら、この時期の冬バージョンは少し地味なようだ。


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まず、この美術館の形状は度肝を抜かれる。曲線だらけでどこにも直角がない。
光るチタンで魚の鱗のように覆われているからか、太陽の光を反射して眩しい。


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「この建設現場の棟梁(?)、大変やったやろな〜」

ふと呟いた銘子に続いて沙織がかぶせる。

「ほんまに、ほんま。きっと『この図面引いた奴、頭おかしいんちゃうかー?』って文句言いながらここ作ってたわ」

「源(げん)さん、ほんまにこの板、こう切りますのん?」

「そや。しゃーないがな。ゲーリーはん(設計者)がそう言うてはるんや」

「かなわんわー」

「文句ばっかり言うてんと早よ手ぇ動かし!」

いつの間にかミニコントが始まり、棟梁の名前は勝手に『源さん』になってしまった。


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コートと荷物をクロークで預け、館内に入る。中も曲線だらけ。
源さんの苦労が偲ばれる。。。
受付のおねえさんに確認すると、建物自体を写真に撮るのは構わないが
展示している作品の撮影は不可なのだそうだ。
一階のホワイエを突っ切って川に面した通路から一旦出てみると、
そこにはまた名物のオブジェが。でっかい蜘蛛だ。チューリップもある。
建物全体を川沿いの少し離れたところから見ると、大きな船が停泊しているように見えるとも言う。


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建物の中も垂直と水平が極端に少ない。みごとな曲線、ガラスを通して降り注ぐ太陽光。
すべての作品を見て回ったのち、銘子は建物と外のオブジェ以外には感銘は受けることはなかった。
建物にお金がかかったから中にあるものはたいしたことはない、
という噂があったが銘子は心の中で「なるほど、やっぱりね」と思ってしまった。
ごめんなさい。個人の見解なのでご容赦願いたい。

展示室を見て回り、ミュージアムショップに移る。
すると一階ホワイエがザワザワしている。民族衣装に身を包んだ一団が歌い出した。


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ミュージアムショップのおねえさんによると、その日はバスク地方の衣装を着たグループが
色々な場所に現れては昔からの民謡を唄うゲリラライブ?があるのだとか。

3〜4曲歌って集団はぞろぞろ移動していった。
立ち見で聞いていたおじいさんも誇らしげに一緒に歌っていたのが印象的だった。

ふと我に返ってミュージアムショップに戻る。
ここのショップは趣味の良いグッズがたくさんあってお土産にちょうどいい。

お次は、この美術館に併設されているビストロで食事だ!


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実はここでクリアしなくてはいけないことがあった。
サンセバスチャンへは15時発のバスで移動することになっており、
これはすでに沙織が予約してくれている。
昼食後にタクシーを拾い、ホテルでスーツケースをピックアップして
バスターミナルへ発車30分前(14:30)には到着したい。
逆算すると、ビストロを14時には出ないといけないということになる。

沙織がビストロを手配してくれたのだが、ネット上では開店は13時からとあったそうだ。
一応13時からの予約を取り、12時から店に入れるか直談判してみようということになった。
その結果は…やはりダメだった。
13時からでないとお店は開かないのだそうだ。仕方ない。13時ぴったりに入店できるように待つ。

ゆったり食事をしたいところだが、コースでゆっくりサービスされたら2時間は軽くかかってしまうだろう。


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すでにこの時点で三人は焦っていた。
入店し、席に着いてメニューを渡されるなり、案内してくれたおにいさんに
「時間があまりない」と沙織が英語で説明するも通じたのか通じていないのか
よく分からない微妙な表情をしている。

業を煮やした沙織が急に叫んだ。

「急いでるねん!」

日本語で。それも大阪弁で。でもこれがすんなり通じた。

「スィ(はい)」と、おにいさんが言うではないか!
そして『エクスプレスメニュー』なるものを勧めてくれた。

メインとデザートとミネラルウォーターとグラスワインが込みで22ユーロだ。

ワインは赤か白か、と尋ねられたような気がした。すかさず加乃が手を上げて
「私は赤!」つられて沙織と銘子も手を上げて「私も赤」と言った。普通に、日本語で。

「スィ」…通じた。
このメニューにはグラスワインは込みだがコーヒーはついていないので追加する。
これで安心、と料理を待つことにする。

「これ…変わってますよねー」銘子がテーブルに敷かれた紙のランチョンマットを指差した。

「ほんとに」


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この美術館の外観をデザインに取り入れてか、ランチョンマットの上部が曲線に切り取られ、
ちょうどそこにグラスをセットしてくれるのだ。

「欲しいわ〜、これ」こういう紙製品に目のない加乃がつぶやく。

「紙だし、片付ける時には捨てるものだから頼めばもらえるのでは?」

「そうよね、言ってみるわ!」

料理は軽めで量もちょうどよく、美味しくいただけた。
食後のエスプレッソが運ばれてきた際におにいさんにお願いすると
気持ち良く新しいものを数枚持ってきてくれた。言ってみるもんだねー。

大満足でビストロを出て、美術館正面の道を渡るとタクシー乗り場がある。
ホテル経由でバスターミナルへと伝えて、三人は無事にバス発車30分前にターミナルへ到着したのであった。

さあ、1時間半後にはこの旅行最大の目的地、サンセバスチャンだ!

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2018年09月27日

スペイン食い倒れツアー '18 その2


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第2章 寒い…2G

ウェルカムシャンパンにはアミューズが添えられてきた。
すばらしい。

しばらくして始まった食事にも大満足。

ワインを選ぶにも、白だったらこっちとこっちのどっち?
と、ソムリエが席までボトルを持ってきて説明してくれる。

赤でも泡でもそれぞれ選択肢があるのだ。
ああ、たまんない。


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白ワインで前菜をいただき、赤ワインでメインの牛肉の煮込みをいただき、
その流れでチーズもいただきます。デザートのシャーベットもおいしい。


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今回乗った飛行機にはファーストクラスはないようで、
ビジネスが最前列という初めての状況。
その最前列のトイレに入って銘子は驚愕した。

ひ、広い…

最前列のトイレは通路と通路の間のスペースを丸々使っているから
見たことないほど広いのだ。エコノミーだとたぶん二つに仕切れる大きさだ。
銘子は、どのクラスであっても飛行機のトイレは同じ大きさであって、
ただ、クラスによって一つのトイレの割振り人数が違う
(例えばファーストだったら
10名で一つを使用し、ビジネスだったら
20名で一つ、という感じ)と認識していた。

この認識が間違っていた!

ファーストなんて乗ったこともないから
最前列がこんなになってるのは知らなんだー。
昔からこうだったのかしらん?
持ち込んだ本を読んだり、ウトウトしたりしているうちに飛行機はパリ
2Eに到着した。予定時刻よりも1時間半以上早かった。

乗り継ぎ便は2Gへ移動しなくてはいけない。
トランジットの通路に立っていた係りのお姉さんに確認すると、
道順を教えてくれ、『必ずバスに乗るように』と念押しされた。

↑ の表示を追いながらオリエンテーリング状態で進んでいく。
一人だったらきっと不安だったろうがなんせ三人だ。大船にのった気分。

矢印に誘導されてたどり着いた先にバスが横付けされていた。
ああ、これに乗れってことね。
先客は若いお兄ちゃんとおばさんの二人だけ。そこへよっこらしょ、と乗り込む。

すぐにドアが閉まって発車。曲がって坂を登って、下って曲がって、
ぐんぐん、ぐんぐん、ぐんぐん進む。
絶対に歩いては無理。お姉さん、アドバイスありがとう!!!

バスを降りてロビーに入ると閑散としている。この侘しさはなんだ?
そして暖房は入っていないと思われる。
どこに座っていても送風口から吐き出される空調の風で冷えてくる。
2月なのになぜ温風が出ないの?

「一本早いのに振り替えられへんのかなー?」

沙織が言いながら案内板を見る。
しかし一番早いのが三人の乗る予定の便だった。
5時間待つしかない。
機内でしっかり飲み食いしてあるのでもう何も入らない。
ひたすら風を避けられる場所を探しつつぼんやりしていると沙織がいない。

あれ?
沙織は待合室に面したショップで靴を選んでいる。
「セールで安いよー。このブランドでこの値段は買いやでー」

元気だ。

元気のない加乃と銘子は椅子に座ったまま靴選びをしている
沙織をぼんやり見ていた。
閑散としたロビーなので離れていても見えるのだ。

やっと搭乗が始まった。搭乗口へ向かい、いざ、ビルバオへ。

LCCのような小さな機内の荷物入れで頭をしたたか打つ。
ここでの座席は三人がバラバラになる。
銘子の隣には白人の女の子が座り、銘子に不躾な視線を送っていた。
なぜガン見?

離陸を待たずに銘子は眠りに落ちた。
ふと気がつくと、すでに着陸準備に入っていた。
隣の女の子はあんぐり口を開けて寝ていた。
歯医者の診療を受けているかのようにこちらに向いている。
その口に飴玉を放り込みたい気持ちを抑えながら
銘子は飛行機を降りる準備をした。

ビルバオ空港に降り立ち、荷物をピックアップすべく進んでいく。
通路もベンチもなんだかとてもスタイリッシュ。


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EU圏外からの入国なので、三人の荷物引き取りレーンは違うはずだ。
係りのおじいさんに荷物のタグを見せると
ドアを開けてその向こうのレーン7へ行け、と言われる。

無事に荷物を受け取りタクシーに乗り込む。
夜も遅く、行き先のやり取りをする気力が失せていた銘子は
ノートに宿泊先のホテルの名前と住所と電話番号を
1ページに大きく書いておいた。

乗り場へ行くとタクシーが数台停まっている。
「おらー(スペイン語でhello!)」
「おらー」

すかさず運転手にノートを見せる。
すぐに理解してもらったようだ。
よし。スペイン語が話せないのでタクシーに乗るときは
この方式でいくことにしよう。

ホテルに着き、プリントアウトしてあった宿泊確認書をそれぞれ見せて
スムーズにチェックインを済ませる。
ホテルは全て事前にネット予約してある。


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翌日の出発時間とざっくりした朝食時間を打ち合わせてそれぞれの部屋に入り、
シャワー浴びてベッドに潜り込む。
部屋はかなりスタイリッシュで快適。すぐに睡魔が襲ってきた。
ああ。終わった。明日は美術鑑賞&サンセバスチャンへのバス移動だ!

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2018年09月26日

スペイン食い倒れツアー '18

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第1章 出発までは、ばったばた!


2018(平成30)年2月3日午前1145分すぎ、

エールフランス291便は何事もなく飛び立った。

座席ナンバー1に銘子、通路を挟んでその右に加乃、その隣に沙織が座っている。

沙織の隣は空席なので三人で一列に並んだ状態だ。


最前列で他の乗客が目に入らないので貸切り気分!


ラウンジで飲んだビールと機内サービスのウェルカムシャンパンの酔いが軽く回ってきた。


銘子は軽く目を閉じてこの旅行までのバタバタを思い起こした。




まずは昨年の夏前、加乃の一言から始まった。


「サンセバスティアンに行きたいの!」


そこはスペイン・バスク地方の街で、フランス国境もすぐ近く。

美食の街として有名である。

国際映画祭も催され、夏は高級避暑地となる。


「バル巡りをしたいのよ!」


サンセバスティアンの旧市街にはバルという形態の店が軒を連ねている。

そこでカウンターにずらりと並んだピンチョスの中から自分の食べたいものを選んで飲み食いし、

また次の店に…と食べ歩きが楽しめるのである。


NHKのスペイン語講座でここが紹介され、それを見ていた加乃の目は釘付けとなった。


ここには食べることと飲むことを楽しむ仲間と行かねば!


この話に乗ったのは銘子と沙織で、数回の打ち合わせを重ねて旅行準備を進め、

あっという間に旅行前日となったのだ。


明日は出発!と思いながら銘子が目覚めるとエールフランスからメールが届いていた。


『チェックインを済ませてください』


寝ぼけ眼のままスマホで指示通りに進んでいくと…


「ん?」


今なら¥47,280の追加でプレミアムエコノミーからビジネスにアップグレード出来るとのこと。


これは素敵な話ではないか!

さっそく加乃と沙織にそれぞれメールで知らせ、その合間に仕事をする。

そうしている間にも席は徐々に埋まっていく…。

そこへ沙織からアップグレードに成功したとメールが入る。


銘子は昼休みに入るや否やサイトに飛び込んだ。

カードで精算をするところで画面がびくとも動かなくなった!

慌ててカスタマーデスクへ電話を入れ、

なんとか席を確保できて胸をなでおろしたところへ加乃からメールが入った。


「取れなかった…」


ええええーーーっ????

どうも一定の時間が経つとそのサイトはクローズするようで

、加乃がカード番号を入力している間にタイムアウトとなったようだ。

落胆する加乃。

だが、明日早めに空港カウンターへ行き、直接交渉してみるとのこと。

席があればアップグレード出来るそうなのだ。


沙織が予約サイトで確認して、ビジネスクラスの空席はまだあるから

きっと大丈夫!と励ますが実際に席が取れるまでは安心はできない。


そして旅行当日。早めに空港へ向かうバスに乗って銘子は二人にメールした。


『今、バスに乗ったよー。では後ほど空港で!』


すると沙織からメールが届いた。


『めざましの設定を勘違いしてて、いま起きました…』


搭乗時間には間に合うが、待ち合わせ時間には遅刻してしまうので、

直接搭乗口で会いましょうとのこと。


出発までに、なかなかのバタバタではないか。


空港に着くと、加乃は席の確保に成功していた。

三人横並びで取れたようだ。

沙織からは何とか間に合うと知らせてきた。

それなら安心、ということで銘子は加乃と搭乗までの時間を楽しむことにする。


まずは手荷物検査を…と進んでいくとそこには長蛇の列が。

これだったら1時間は十分かかりそうである。

ふと、先ほどのカウンターで搭乗券と一緒にもらった

『ファースト・レーン』と書いてあるチケットを見ると

『ここより搭乗口へお進みください』とある。


『ここ、ってどこよ…?』

向かってずっと右端にある指定入り口へ行くと、

だーれも並んでいないではないか!!


さっさとレーンを通過して、向かうはラウンジだ。


いいなぁー。ラウンジ。


キンキンに冷えたビールグラスをセットしてボタンを押したら、

ガクン!と傾いてビールが自動で注がれるのだ。

徐々にグラスは立っていき、グラスが直立すると同時に注ぎが終わる。

泡は綺麗に盛り上がって出来上がり。自動のマイスターだ。ああ、家に欲しい。



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サラダにスープ、軽くサンドイッチをつまみながらビールをごくごく。

加乃はワインとチーズとミニ蕎麦だ。


ちょうどよい時間になったので搭乗口へ向かう。

沙織はもう空港に着いたようで、当座の現金を両替してから行くので

搭乗始まったらお先に席へ!とのこと。


機内への案内が始まった。スイスイである。

加乃と銘子はそれぞれ座席に着いて荷物を整理し始めた。

そこへ沙織が到着した。ひしと抱き合う三人。

いよいよ旅の始まりである。




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2015年11月15日

母と泊まれば

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今日はひさびさの『愛の立ちくらみ劇場』〜!
(もちろん登場人物の名前は仮名でっす)

14日早朝5時40分。銘子のiPhoneが鳴った。

『今、出たから』

銘子の父、渉からの『帰るコール』ならぬ『出たよコール』だ。

到着を見計らって銘子は道に出て待つ。
早朝なので数分で渉の車は銘子の自宅へ到着する。

渉は昨日もゴルフ、今日もゴルフ、翌日もゴルフに行く
元気な老人である。

認知症の母、律子と暮らしている父の唯一の気分転換なので銘子は
元気で出かけてくれるならそれでいいと思っている。

ただ、土曜と日曜の二日に渡って早朝銘子の家に預けられる律子は
たまったもんではない。

こういったこと(週末連ちゃんゴルフ)は年に一二度のことなので
銘子は母の好きな海のそばのホテルを予約する。

母と娘の女子会である。

弟の家で銘子は車を降ろしてもらい、弟の車を借りて
律子がいるマンションへ向かった。

前の晩から多めに睡眠剤を飲んでいる律子は
微動だにせず爆睡であった。

まだ6時にもならない…。

銘子が洗濯機を覗くと結構な洗濯物が。
暇なので洗濯を始める。

ふと洗面所をみると洗面台がくったくた。
鏡も合わせて磨きをかける。

トイレを恐る恐る覗くと…。
きゃー。

ここもしっかり掃除する。

ここまで終えて覗くとまだ律子は爆睡している。

キッチンもしかり。
70歳にして主婦デビューした渉は、料理と洗濯はしても
掃除はしない。水周りの掃除なんてもってのほか。

排水溝のズルンズルンと戦って寝室を覗くと律子が
目を開けていた。

目が合うなり『ご無沙汰しておりますぅー』と。
なんでやねん。

掃除はほとんど終えていたので律子の身支度を整えて
冷蔵庫にあった買い置きのあんぱんを食べさせた。

掃除ですっかり疲れていたので冷蔵庫からそのまま
出したからか、ひとくち食べた律子は間髪入れずに
『冷た〜い』。ごめん、悪かった。

銘子は残り半分をオーブントースターで温めた。

食後、律子を車に乗せ、銘子は自宅へ戻った。
一ヶ月に一度の律子の顔剃りをし、自宅の掃除と
洗濯を済ませて泊りの準備をする。

自分にかまってもらえないからか律子の機嫌が
悪くなってくる。

昼、簡単なトーストを野菜ジュースで流し込もうと
思ったらご機嫌斜めの律子は食べながら歩き出す。

もー、この忙しい時に!律子のカットの予約時間が迫る。
月に一度は銘子の近所のサロンでカットしてもらってるのだ。
掃除機をかけた部屋を律子はトーストを食べながら歩く。

『もー、おかあさん、何で歩くの?!』

『知らん!』

知らん、って、もーっ!

カットは律子のまどろみの中で終了した。
サロンの椅子から降りる際には熟睡状態で
脇を支えて歩かないといけない状態に。

この日泊まるホテルでは朝食は付いているが
夕食は部屋に弁当を持ち込む予定だった。
これを買いに行く頃から律子はかなり手強い状態に
なっていた。

歩いてくれない。足が前に出ない。
車に乗り込んでくれない。
寝ているのか、反抗なのか。

雨が降ってくる。

何とか助手席に押し込み、発進。

口の中でぶつぶつ文句を言っている律子。

『え?なんて?おかーさん、なに言ってるの?』

『そやかて、&%%$$#”*』

言いながらシートベルトを持ち上げて頭をくぐらせて
脱いでいる。

なだめながら銘子は元の位置にベルトを戻す。

しばらくすると靴を脱ぎだす。
しっかり紐を結んであるのでこれは断念したようだ。

再度、シートベルトを脱ぐ律子。

戻す銘子。

この攻防が幾度となく続いた。

静かにしているのでふと銘子が助手席に目を向けると
律子はシートベルトを噛み締めていた。

慌てて外す銘子。

運転もなにもあったもんじゃない。

なんとか無事にホテル到着。

ラウンジでビールを飲み、律子を風呂に入れることにした。
服を脱ぐ頃は反抗が最高潮に達していた律子。

シャツを脱がそうにも袖をしっかり握る。
靴下を脱がそうにも両足を踏みしめて上げてくれない。
浴槽をまたいでくれない。

握りしめる手の指を一本一本外してとにかく風呂に入れた。

出た頃には少し気持ちがほぐれたのか
律子はご機嫌になっていた。

ここで夕食!

必死の思いで買ってきた弁当を広げる。


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食べさせた後は歯を磨いてベッドに横にさせるとあっという間に
寝てくれた。ここから朝まで起きずに寝てくれたので
銘子は助かった。

翌朝、朝食が運ばれてきた。


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これも結構食べてくれて、チェックアウトまでベッドに横になったり
しながらも大人しくしてくれたのだ。


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折しもこの日は神戸マラソン。
このホテルからすぐの国道2号線は朝から13時半まで通行止め。

これに銘子が気づいたのは宿泊の数日前のことだった。

きゃ〜っ!

ホテルに確認の電話を入れると、車の乗り入れは規制中は無理なので
公共交通機関で来てくれ、という。

そんなん、この母親を連れて、無理〜〜〜!!

このホテルのチェックアウトは12時。
ホテルの案内は、チェックアウト後はホテルラウンジで
規制解除されるまで時間を潰してほしいとのこと。

しか〜し。最近反抗期の母親が大人しくしてくれる保証はないし、
どれほどの宿泊客がホテルラウンジに集まるのか分からない。

銘子は部屋の午後2時までのレイトチェックアウトを願い出た。
ホテル側は予約状況で渋っていたが、なんとか交渉成立したのだった。

朝9時からの朝食を終えて、銘子は律子の顔マッサージやら
パックを施して時間を潰した。幸いにもマッサージで気持ちよくなったのか
律子は1〜2時間ほど寝てくれたのだ。

午後2時前。チェックアウト。

神戸マラソンの影響が残るであろう2号線を使うのは諦めて
銘子はずんずん北上し、阪神高速北神戸線経由で帰路に着いた。

帰りの車の中の律子は大人しく座っていてくれた。
あんまり静かなので『おかーさん。起きてる?』と聞くと
『生きてるー』と答える。

生きててくれたらそれでいいのよ。おかあさん。

こんな女子会、おかーさんがもっと元気な時にもっともっと
行っておけばよかった。そう思うと運転中の目が
涙で見えなくなってしまうので車の中に流れていた曲に合わせて
声に出して歌い出した。

『ありがとう、って伝えたくて
 あなたを見つめるけど
 繋がれた右手は
 誰よりもやさしく
 ほら この声を受け止めている』

余計に泣けてくるやん!


このお話はハックションである。

〜おわり〜



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2014年06月15日

第一回・大人の修学旅行

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昨年末のノエルで
『大人の遠足』の次は『大人の修学旅行』だねー!
なんて云ってたらほんとになってしまった。

もちろんわたくし、銘子が企画&添乗員!

6月某日、それは決行されたのでした。。。




阪急池田駅集合。

参加者は、牧子、佐織、加乃、桐子、盛敦、銘子(全て仮名)の
6名である。
駅北側に伸びる商店街をゆるゆると進み、抜けたところを左折。
すると目の前にのぼりが見えてくる。

ここが大衆演劇の殿堂、池田呉服座だ。
席はすでに予約済み。ダテに下見に行ってないもーん。

大衆演劇。

たぶん誰かに誘われたりしない限り、自分から
チケット買って行かないだろう。6名全員が初体験!
あまりにもついて行けなかったら退席も辞さない覚悟で
着席。

『銘子さん、どこ?席?』
『えっと、そこ!<え>と<お>列に3人ずつ』
『うわ、前から4列目?』
『だって初めてだったら、ここね、って受付の人が
 云うんだもん』
『舞台、近っ!』

そんなこと云いながら駅前で調達した
おにぎり弁当を配る銘子。

『はい、弁当にビールねー、柿の種もあるよー』
『お、さんきゅ』
『はい、ドーナツ!』
『え?桐子さん持ってきてくれたん?』
『私はこれー、』
『え?牧子さん、これ、何?』
『ブッセ。クリームがあっさりしてておいしーの!』
『加乃さんのマロングラッセもあるでー』

わいわい云いながら弁当をつつく。
大概のものは舞台中も飲食OKなのだそうだ。
写真撮影も芝居のときはダメだけど、歌謡ショーになったら
いいらしい。

まず、どんな流れなのかも分からないので
開演を待つしかない。しかし周りはかなり濃い〜メンツが
揃っていた。

金髪のウルフカットのばあちゃん。
パンチパーマの、これもばあちゃん。

『あれー、久しぶり!』
『そこの席なん?こっちおいでー』
なんて皆が声かけ合ってる。みんな、身内か。
前の方の夫婦は家から弁当詰めて持ってきてるしー。

お馴染みさん同士の中でぽつんと浮く6名。

気がつくと、周りの客にガン見されてる。
しかも指差してヒソヒソ話されてるしー。
すごいアウェー感を感じながらひたすら待っていると
舞台ではマイクテストしてるらしい。

『ワンツー、ツー、ツー、ツー』
幕の内側ではかなりバタバタしている様子。

そしていよいよ開演!

江南スタイルの音楽が響き、幕は開いた!


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まずは顔見せを兼ねて1人ずつ踊りを披露。
若手から始まり、座長の登場。

え?何で火のついた煙草持ってんの?

着流しにくわえ煙草。煙草持ってターン。
うそ。
あ、煙草投げた!

座長が舞台袖に火のついた煙草投げた途端、
にゅーっと腕が出てきてそれをすばやく拾う。
で、さささっと灰もその手でぬぐう。

涼しい顔で座長は踊りきる。

流れるように演目は進み、ちょっと歌舞伎調の
『お富与三郎』のさわりをちょびっとやって
一部は終了。

二部は人情芝居。

あらすじは次の通り。

********************

佐渡の一膳飯屋が舞台。
3年も行方しれずになった夫を待ちながら
舅(ジイ)と幼い息子とともに暮らすおみつ。

憎からず想っている柏崎の伍作の
求愛を受け入れられないでいる。

そこへ夫の仁太郎が戻ってくる。
記憶を失くしていて音信不通だったのだが
自分がいない間に頑張ってきたおみつの
気持ちをくんで、仁太郎は一芝居打ち、
伍作との新しい人生を進めるように
おみつの背中を押してやるのだった。

********************

ジイと孫の別れの場面では客席から
鼻をすする音がチラホラ。
ジイと仁太郎との掛け合いは
ボケ倒して客席を爆笑にもっていく。

たぶんほとんどがアドリブだろう。
泣き笑いのあとは第三部、歌謡ショー!

座長。お見それしました。
全ての演目で踊り方が違う。

そしてお約束のおひねり贈呈!
我々は初めて見た!
やっぱり実際にあるのねー。

座長の胸元には福沢諭吉がピン留めされているし
客が手渡した差し入れの紙袋を持ったまま
座長は華麗に踊るのだった。
これぞ贈った側へのファンサービス。


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舞台での踊りの振りを真似て座ったまま踊るばあちゃん。
大音響の中、うたた寝するばあちゃん。
いかつい格好なのに芝居の泣く場面で号泣してたじいちゃん。
自分の目の前に演者がやってくるたびに
最前列から身を乗り出して拍手するばあちゃん。

どれもこれもいい顔。
これにはまる理由が少し分かったような気がした。

思っていた以上に楽しめたようで
満足した6名はそのまま今夜の宿、不死王閣へと向かったのだった。


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夕食後、部屋での宴会は大盛り上がり。
お座敷遊びの『金毘羅船船』があんなに盛り上がろうとは
思いもしない銘子であった。
総当り戦で優勝は牧子さん!見事商品をget !
宿の前の川に飛び交う蛍を見られたのもラッキーだった。

当たり前じゃん、カリスマ添乗員の銘子様、
昨日までは1〜2匹だった蛍、5匹ほどに
増やす、この力量!(って偶然だけど)

翌日も池田を散策。
小林一三記念館(阪急電鉄生みの親)も覗いてみた。

このひと、阪急電車走らせて、宝塚歌劇やら阪急百貨店作って、
沿線の宅地開発もやったんだよねー。
えらいよねー。


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さらに向かう先は、チキンラーメン記念館!
池田には小林一三も安藤百福もいたのよねー。
恐るべし池田!

で、予約しておくと、チキンラーメンを麺打ちから
作れる体験工房があるので銘子はこれを押さえておいたのだ。


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粉を混ぜ、麺を延ばし、味を付けるところまで
各自がやり、最後の『揚げ』はお任せする。


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わー、出来てる。


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各工程の合間に袋に絵を描いて、これに入れてもらって
出来上がり。


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濃い、濃すぎる旅行が終わった。。。
梅田での打ち上げには志保さんも合流。

打ち上げも盛り上がり、二次会も開催。

またやろーね、気をつけてねー、
帰るまでが旅行です、などとと云い合いながら
解散して2月から構想練った
『大人の修学旅行』が終わったのでした!

お疲れ様!

長い長いお話、読んでくれたあなたも
お疲れ様!


posted by Avril at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2013年11月13日

迷走!リフォーム



先日、銘子は近くの大型ショッピングモールにある
水回り専門リフォームのショールームに行って来た。

ちょっと前に嫌な水道屋を呼んだあたりから給湯器の調子が悪い。

思い切って給湯器、トイレ、洗面所、ユニットバスの
総入れ替えをしようと決めた。
築10年を越えたマンションで、そろそろリフォームに
入っている部屋が増えていた。銘子もそろそろ、とは
思っていたのだが、給湯器のパワーダウンがきっかけで
具体的に考えるようになったのだ。

まずは『水回り専門店』数社に見積もりを出すことにした。

消費税値上げで来春までに駆け込み工事が増えることを
考えると早めに手配した方がいいんだろか、しかし
駆け込みで工事が立て込んで雑な工事をされる可能性もある。
消費税値上げ後も、そのぶん値下げするなりで企業努力も
あるだろうから慌てなくてもいいかも…

色々考えながらとりあえず、相場ってものを知りたくての
見積もりであった。

混雑するモール街。

その店先には誰もいなかった。暇そうなおねーさんたち。

とりいそぎ、相談に乗って欲しい旨を伝えるとおねーさん、
どんなのが希望か、と要望を聞いてくる。
まずはして欲しいことを全部云ってみた。

熱心に聞きながらメモしていたおねーさん、

『では、担当のものが実際にお伺いしてお見積もりに入ります』

あ。そうなの?
ここでは見積もりはまだ出来ないってことね。

『担当者が今日中にお伺いする日の打ち合わせの連絡を
入れますので何時まで連絡可能でしょうか?』

『携帯電話なのでいつでもいいですよ』



銘子は買い物に出かけた。
ちょうどレジで支払をしているときに電話が鳴った。

出られなかったので支払を終えて店を出てから
折り返し電話を入れると要領を得ないおにーさんが出た。

『担当者は A ですか?それとも B ですか?』

担当者の名前を云わないとつなげないような云いぶりである。

『え?私は担当者から連絡が入ることは聞いていましたが
どの方が担当されるか知らされておりません』

『あ‥そうなんですか。ではしばらくお待ち下さい』

軽い肩すかし。

再び、頼りないおにーさん。

『あの。担当者が他の電話に出てますので折り返し電話します』

これからも買い物を続けるつもりだった銘子は
また電話に出られないことがありそうだったので
翌日の昼頃に連絡もらえるように頼んで電話を切った。

『あ…はい。折り返しではなく、明日の、昼。あ、はい』

何だか銘子は嫌な予感がしていた。

翌日の15時過ぎ。
銘子は連絡が入っていないことに気づいた。
昼はとっくに過ぎてる。やっぱりいい加減な店なのかなー?

16時前。携帯が鳴った。

『あの。明日のお昼に(って今日だろ?)電話するように
伝えられていたんですが、あの、ちょっと。で、今お電話
させていただいてます』

『あー、そうなんですか』

『で、ご要望は?』

え?要望は昨日、おねーさんに全部云って来たぞ。
え?もしかして…

『あの。要望って、見積もりの希望日のことですか?』

『はい』

『あーそう』

また嫌な予感。

見積もり当日。銘子は体調不良で会社を休んだ。
夕方、なんとか起きられたので19時の約束までに
簡単な支度をした。

ずっとベッドに寝ていたのでシャワー浴びて、浴室をざっと
掃除して待った。

19時5分前。近所まで来て待っているのだろうか。
19時。音沙汰なし。

19時10分。音沙汰なし。
19時20分。音沙汰なし。

もし約束の時間に遅れることがあれば普通の営業マンなら
その連絡を入れるはず。

19時25分。銘子はその店に電話を入れた。
おねーさんが出た。

『あのー。7時にお見積もりに来られるということで
お待ちしているのですが連絡もないのですが、どうなってるのですか』

『え』

『あの。****さんと7時にお約束をしていて…』

『あ!少しお待ち頂けますかっ?』

銘子が待っていると電話に出たのは男性の声。

『あの。****です』

え?なんでうちに来ないでそこにいるの?

『実は予定は入れていたのですが、忘れてしまっていて…』

わ・す・れ・て・しまっていて ???

それを素直に云うか?

銘子は静かに電話を切った。

見積もり前に終わってしまった。
次のお店はちゃんと来てくれるだろうか?

リフォームは完成するのか?
出だしが悪いので迷走しないよう、銘子は祈るのであった…。

〜この話はハックションである〜




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2013年11月10日

美容室漂流記


銘子は美容室が苦手である。
昔は半年ほど放置して伸び放題、なんてことを繰り返していた。
ストレートロングなら何とかなったのだ。

しかし年齢とともに増え続ける白髪をどうにかせんといかん。

仕方なしに銘子は美容室に足を運ぶ。
でもどうしても馴染めずにその店に続けて行くことができなくなる。
嫌な気持ちになってしまうのだ。

例えば、シャンプーを終えて席に戻るさいに、居酒屋並みのデカイ声で
『お疲れ様でした〜!』『お疲れ様でした〜!』『お疲れ様でした〜!』
連呼される。

更に、シャンプーのときに首に巻かれるケープが異常に臭い。

『自分さぁ〜』息子くらいのスタイリストにタメグチで話される。

シャンプー後、アシスタントの女の子がマッサージしてくれるが
ことごとくツボを外される。余計に疲れるってば。

店内のトラブルか何かでイライラしてその気分のまま接される。

確かこのときの担当スタイリストのおねえさんは、銘子の前髪の
束を間違ってかなり短く切ってしまった。

切った瞬間、そのおねえさんが『ひっ!』と小さな悲鳴を上げたのを
聞いたので手元が狂ったのは間違いない。

その挙げ句に開き直ったお姉さんは
『この長さに合わせていきますね〜』と云いきり、銘子の前髪は
建物の庇(ひさし)のように申し訳程度の長さに仕上がったのだ。

またあるときは、スタッフが隠すのを忘れた自分のカルテの『話題』の欄に
『料理、酒の話』と書いてあったのを見た。
そういえば、ドライヤーかける間だけついてくれたアシスタントさんが
いきなり料理の話を振って来て不思議に思ったことがあった。
そのカルテを見て銘子は何だか白けたのであった。

ことごとく銘子は居心地のいい店がなくて漂流し続けている。

つい最近、銘子は新しいサロンをネットで探して予約した。
ここはスタイリスト2人だけの小さな店。
シャンプー後に大きな声で『お疲れ様』コールされることもないだろう。
アシスタントがいないから自身でシャンプーブローしてくれるだろう。
下手なシャンプーに頭皮が火傷するかと思うほどドライヤーを
近づけることもないだろう。

しかし店を入った瞬間、何となくそのまま店を後にしたくなった予感は
…当たってしまった。

担当してくれたおにいさん。服装から受ける感じが何となく不潔。

ともかく髪をどうするか聞かれたので、クセがでてまとまらなく
なって来た前髪をどうにかしたいのと白髪を染めたいというと
『じゃあ、前髪だけ縮毛矯正かけて、全体を染めていきましょう』

施術が始まった。

ふと見ると、おにいさんの腰につけたバッグに入ったハサミや櫛が汚い。
そして顔についた細かな髪の毛をはたく為のブラシを見て
銘子はどん引きした。

『これで私の顔を…?』

以前は白色だったはずのブラシには細かな毛の破片がたっぷりと
ついていた。

シャンプーが始まった。

う…。やはりケープはカビ臭がする。

ぷっ、と音がした。ふと見やるとおにいさんはゴム手袋を装着しようと
していた。おにいさんの手は可哀想な位あかぎれていたので仕方ないと
思うのだが、銘子はゴム手袋でシャンプーされると頭皮に軽い炎症を起こすのだ。

何の断りもなくゴムでゴシゴシされ、カラーが始まった。

白髪染めのクリーム状の薬を髪に塗るのだが、
このおにいさんの塗り方がものすごく雑で、勢い良くバシバシ刷毛を
はたくので、銘子の頬にそのクリームのかたまりがべったり飛んでくるほどだった。

『後で拭きますんで』

(すぐに拭いてよ〜!という銘子の心の叫びは届かなかった)

おにいさんが雑に髪を触るので耳につけたビニールのカバーがずれる。
もう何度使い回しているのか、透明部分がほとんどなく茶色に染まった
ビニールの耳カバー。ゴムの部分が伸びているのか耳からすぐに
外れそうになる。構わずおにいさん、バシバシクリームを塗る。

最後のシャンプーで頼んでいたトリートメントを始めた
おにいさん。頭の上で何だかゴム手袋で銘子の髪をしごく音がする。
『むぎゅ、むぎゅ、ぎゅちゅ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぐぎゅっ』
濡れた髪をゴムでしごいて大丈夫なのか???

髪を乾かしているとき、銘子は異変を感じた。

『あの…前髪だけ色が違うように思うのですが…』

『あ。違いますね。縮毛の薬を付けた部分だけ色が変わるんですよ』

…だったら最初にそれを云ってくれ。前髪だけやけに黒い。
それから2〜3分ほどおにいさんは黙ってドライヤーをかけ、
ぽつりと一言云った。

『じきに馴染みますんで』

その2〜3分の『タメ』はなんなんだ?
言い訳を考えていたのか〜?

髪を乾かした後で前髪の長さの調整が始まった。
多めの束を一気に切るからか、銘子の顔に切った髪が勢い良く
降り注ぎ、細かい髪が目の中に入る。
ハードコンタクトを入れている銘子には拷問の痛みだった。

『こんな感じで…いかがでしょうか?』

おにいさんが云うので正面の鏡を見た銘子は思わず聞いた。

『こ…これで出来上がりですか?』

『はい。あとは薄さを調整するくらいです』

『こんなに左右が歪んでいるのに?』

『あ』

おにいさん、斜めになっている左右を合わせようと
再度切り出した。何なんだ、一体。

そして仕上げに例の汚いブラシで顔をなでられた。
銘子は息を止めて我慢した。

家に戻った銘子はすぐに店のカードとおにいさんの名刺を
ゴミ箱に捨てた。二度と行くつもりはない。

銘子の住む界隈には美容室が乱立しているのだが、
居心地がよく、清潔で、きちんと対応してくれる店が見つかるまで
美容室漂流はまだまだ続くのだった。

銘子の頭皮は、ゴムの摩擦で掻きむしるほど痒くなってきていた…。

〜このお話はハックションである〜


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2013年02月09日

ぱふぱふ〜

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その日の朝はいつもと窓の風景が違った。
白い…。

雪が積もりかけていた。
うわ、自転車で会社行けるかな?
心配したが、徐々に雪の降りはおだやかとなり、やがて止んだ。

白かった地面は元の色に戻りかけている。
よかった。

安堵した銘子の目に、ベランダの柵の上にほんのり積もった新雪が
やけにきれいに映った。

『雪だるま、つくろう!』

かじかむ手を時折お湯で温めながら完成した雪だるま。

よし!目入れだ!

丸い黒いもの…周りを見回すと、さっき入れた黒豆茶の黒豆を
急須から取り出して埋め込んだ。ずぶっ。

眉毛は…細い黒いもの…っと、ふと作り立ての父親用の弁当を見た銘子は
ご飯に乗っけた細切り昆布の佃煮を指でつまんだ。

雪だるまに乗せるとあっという間に雪が茶色ににじんでいった。

いかん!汚いっ!

慌てて銘子は新しい雪で茶色を隠す。

プランターにあったローズマリーをちぎってそれらしくした。
会社で皆に見せようとiPhoneで撮影し、支度して上機嫌で
銘子は部屋を出た。

自分自身になにが起こっているか、そのとき
銘子は知りもしなかったのだ…。

(さらに立ちくらみたい方は、続きをどうぞ!
 …長いよ。 )


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posted by Avril at 13:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2012年09月30日

ピンクのクリアファイル

 

銘子は待っていた。

約束の午後1時を過ぎている…

仕事のやりくりをして待っているのにどうなってるんだ?


話は少し前にさかのぼる。


ある日、銘子が加入している保険会社の担当者から電話があった。

なんでも、『利率が下がるので、一度伺って説明したい』とのこと。

どれの利率ですか?と問うと『個人年金』のです、とお姉さんはおっしゃる。


2つ契約中なのでどれなのかな?と思いながら

『仕事が忙しいので、わざわざ来てもらわなくても、書面で説明してくれたらいいから』

と返答すると、電話口でお姉さんは『直接伺ってサインをもらわないといけないことに

なっている』としつこく云うので日時を決めたのだった。


『そんな説明にわざわざ…』つぶやきながら、銘子は目の前の

卓上カレンダーに印を入れた。


 そしてお姉さんとのランデブーの当日。

ま、忙しいから来ないなら来ないでいいっか、と銘子が思い出した

1時半にチャイムが鳴った。


『1時っておっしゃってませんでしたか?』

『え?1時半と私はメモしています』と、お姉さんがのたまう。

かばんをゴソゴソしてその手帳を見せようとするので

銘子はそれを制してスリッパを出した。


自分の勘違いかもしれないし、水掛け論なのでここはスルーということで。

華奢なお姉さんの後ろからはみ出るように一緒にいらっしゃったのは、

海千山千、って感じのマダム。


 『本日同行致しました、安心して託してください、の安託(あんたく)と

申します!』名刺を差し出された。保険会社にぴったりの珍しい名前だ…。

そして奇遇にも銘子の職場に同名の『安託さん』がいる…。

 

『うちにも同じ名前の安託さん、いるんですよ〜』と何となく

云いそびれて席に着く。隣の部屋で作業している安託さんが

聞こえたのか、少し反応しているのを感じる。


何となく、似たタイプだな…保険会社の安託さんの向こう側にうちの

安託さんが重なって見えた。


急に改まった口調で、保険会社の安託さんが云った。

『ワタクシどもがお伺いしたのには、3つの理由がございます!』

ひとつは、契約の数 × 一口で何かのキャンペーンに応募出来ること、

もうひとつも同じような加入手続きだった。


担当のお姉さんは大きな安託さんの少し後ろに控えて

(横に並んでいるのにそう見える)ニコニコ笑って頷いている。


『そして…』

 安託さんの声が固くなる。

『こちらの商品なんですが…』


そのとき、『安託さん!これなんですが!』と銘子の会社スタッフが

大きな声でこちらに向かってきた。

びっくりする保険会社の安託さん。その横をスタッフは素通りする。

隣の部屋で『何ぃ〜?』とのんびり問い返す、うちの安託さん。

 

『うちにも同じ名前の人、いるんですよ』苦笑いしながら

銘子が云うと、白々しい空気が流れた。


 気を取り直すように書類を出して、安託さんは説明を続けた。

『実は、こちらの商品の利率が10月1日をもちまして

下がることになり、もしご検討頂けるなら今のうちにご契約頂きますと、

かなり利回りのいい将来への貯金、と考えられるかと…』


 一旦、間を置いて彼女は続ける。

『こちらをご覧下さい。この一時金をお納め頂きますと、

60歳から10年間、毎年これだけの金額をお受け取りになれます…』


 雰囲気は完全なおばちゃんキャラなのに妙にネイルが可愛いなぁ…、

化粧ポーチがピンクのキティーちゃんの、とか持ってたりして!

書類をなぞるピンクの小花の爪をぼんやり眺めながら銘子は説明を聞いていた。

 

な〜んだ、新しい商品の勧誘で、契約済の利率が下がるんじゃないんだ。

これが今回の来訪のメインなのね。

電話口のお姉さんの説明では誤解してしまったけどな、と思いながら

銘子は頭の中で計算した。

 

ちょうど定期預金が満期になっていたのもあって、考えてもよさそうな

話だった。ちょっと大口だが、老後にはいいだろうと。

 

『お薦めした商品はとりあえずこの金額で設定しましたが

もっと色々な設定が出来ます』


『じゃあ見せてください』


安託さんが後ろのお姉さんに促すと、お姉さんは申し訳なさそうに云った。

『すみません…作ってきてません…』


 『ふっ』

銘子の鼻から息が漏れる。

通り一遍の説明だけして帰るつもりで、客がその気になるなんて

思ってなかったのがありありだった。


今から会社に戻り次第、それらの設定のご連絡致します!とお姉さんは強く云う。

『だいたい、どの位の時間にお返事くださいます?』と確認すると、

お姉さんは『すぐに』と更に強く云う。

だから、そのすぐに、ってのはどのくらいなのか具体的に知りたいんだけど!

そう思ったが、銘子は了承した。


これと別件に、少しだけ変更があるものの手続きをして欲しいとお願いした。


保険会社の提案をもらってから少し考えて、こちらから連絡をすると云うと、

利率は10月1日に変わるので、契約するなら早めに返事が欲しいと。

じゃあ、次の週明けの月曜に返事すると約束すると、

そのときに別手続きの書類も持ってきてくれることになった。


『では、書類の作成のこともありますので、当日の午前中に

電話で契約の有無のご確認させていただいてよろしいでしょうか?

そのほうが、スムースに進みますので』

安託さんが念を押す。お姉さん、にこやかに頷く。


帰り際に、お姉さんが『では次回お伺いするのは今日と同じ時間で

よろしいでしょうか?』と云う。

『いいですよ』

お姉さん、メモしながら『では…1時半に?』


何となく、すこ〜し気分が悪い。

『ええ。1時じゃなく、1時半ってことで』


そして一週間後の午前11時半。

お姉さんからの電話はない。

『午前中』は極端に云えば11時59分59秒までだろう。

小さな事だが、向こうから電話すると云ったのだ。


銘子の中でお姉さんへの『そんなになかった信頼』が、跡形もなく消えた。

あの日、後で連絡をくれた色々な提案の中でも

お姉さんが最初に『入る訳ないだろう』と高をくくった額を用意していたというのに。


午後1時20分過ぎ、お姉さんから『今から伺います』の電話。

1時半きっかりに彼女はやって来た。

銘子はスリッパを用意せず、玄関のカウンター越しに応対した。


怪訝な表情で彼女は『あのぅ…ご契約の件はいかがなさいますでしょうか?』

 

『今日、午前中にお電話頂ける事になってましたよね?それで契約書類作って

いらっしゃると、そちらが仰ったのではなかったですか?』


息をのむお姉さん。

『あの…電話はこちらへ伺う前にすることだと…メモしておりました…』

消え入る声で云う。

で、気を取り直してまた問うてきた。

『で、ご契約は…?』

 

『あのね。保険って、自分がどうしようもなく弱ったとき(病気)とか

困ったとき(事故)に給付なんかの相談に乗ってもらう訳でしょう?

今回の電話なんかちょっとしたことだけど、お約束の時間にないし、

こういう小さなことで信頼できなくなるんですよ。信頼出来ない方と

契約、できないですね』


顔色を変えるお姉さん。でももう遅い。


『ではお願いしていた別の手続きしましょう』銘子が云うと、

お姉さん、鞄をかき回した挙げ句に

『あの…誠に申し訳ないのですが…その書類、忘れてきました…』


泣きっ面に蜂。ドジすぎて笑いそうになる。

でもお姉さん。ちょっと抜けすぎ。

やっぱり契約しないで正解かもしれない。


『じゃあ、その書類、郵送してください。記入して送り返しますから』

『いいえ!すぐに取って返してお持ちします!』

『いいですよ。ほんとに。送ってください』

『いいえ!伺います!!』


慌てて帰っていったお姉さん。

私だったらどうするかな。

郵送するだろうか。


上司と一緒でも1人ででもいいから、契約書類作って

すぐにやって来てもう一度勧誘する根性あるだろうか、どうだろうな…と

思っていたら、お姉さんやって来た。

『先ほどは大変失礼致しました…これ、よかったらお使い下さい…』

 

その保険会社のキャラクター入り・ピンクのクリアファイル6枚だった。

これだったら何も持ってこない方がいいのにな、いや、実はこの

ファイルはすごく値打ちがあるんだろうか?銘子には分からない。


『では…手続きさせていただきます…』

カウンターの上で、書類の指示される箇所に記入していく。

『で、お客様、本日、保険証書はこちらにお持ちになってらっしゃいますか?』

そんなの事前に云われてないのに持ってきていない銘子は『いいえ』と答える。

『では、こちらにチェック入れてください』


そこは『証書を紛失した』欄だった。

紛失してないし。

お姉さん、連絡くれたら持ってきてたよ。

こういう手続きに証書が必要なのは当たり前なのだろうけど、

そんなのに慣れてないものに対しては事前連絡するもんでしょう?

失くしてもないのにこちらの不備です、とチェック入れろってのか?


お姉さんに問う気も失せて銘子はチェック入れた。

もう、どんな有利な商品も入る気がしなくなっていた。

 

『あの…私、どうも口で云っていることと違うことをメモしてしまうようで

本当に申し訳ありませんでした…』

そう云ってお姉さんは帰って行った。


その日の夕方、帰宅した銘子の携帯が鳴った。

『あの…失礼を承知でもう一度お願いのお電話させていただきました…』


銘子が黙っていると、

『あの…今日が契約の締め切りでして…』

今日が?締め切り?そんなこと聞いてなかったし。知らないし。

あくまでもお姉さんのノルマの都合でしかない話だった。


銘子は昼間と同じ『信頼をなくしたということ』を繰り返して話し、

そして同じ失敗を次の人にしないように気をつけてください、と

電話を切った。


銘子の自宅の住所を彼女は知っているし、そう遠くもない。

電話ではなく出向いてきたら、また話は変わったかもしれない。

上司に云われてしぶしぶ電話だけでも、という感じしか受けないのに

誰が考え直すというのだろう。


銘子は後日、違う保険会社の契約を済ませたのだった。


銘子の老後。

そんなに長生きするつもりない、と思いながら何やってんだろう。

クリアファイルは会社の女子スタッフに配った。

うちの安託さんは『ピンクだ!』ととても喜んでくれた。


ラジオから、大型の台風が近づいてくるので注意をするようにと

天気予報が繰り返し流れていた。


 

〜このお話は、ハックション、である〜

 

 

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2009年10月14日

山陰旅行編 その3

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愛の立ちくらみ劇場 ’09 山陰旅行編 その3

 

 

「ケーキセットでも食べるわ(それを昼食代わりにするつもり)」

 

渉がそう云うので

銘子がテーブルにあったメニューを見ると、そこには手書きで

 

『コーヒー¥262』とある。

 

すごい値段。

 

ショーケースの中のケーキも手作りというよりは、

(ケーキではなく)パン工場から仕入れて来たような感じがする。

 

「私は外の屋台でたこ焼きでも買うから、コーヒーだけでいいわ」

 

銘子がそう云うと、渉はケーキセット二つ(ホットコーヒーと

アイスコーヒーで)と別に銘子の分のコーヒーを頼んだ。

 

かなり長い時間が経った。

 

二組目の新婚さんの話も終わり、ゲームが始まったがコーヒーの

香りがしない。

 

「チンっ!」

 

電子レンジで何かが温まったようだ。

 

おばあさんはやっと注文の品を持って来てくれた。

 

『チン・コーヒー』にはなぜか湿気ったハッピーターンが一つずつ

添えられていた。

 

三人は無言でコーヒーを飲んだ。

 

律子はチーズケーキを一口食べてフォークを置いた。

渉は無言で自分の分のケーキを食べた。

 

こうして三人分の清算は、昨日の足立美術館でのコーヒー一杯分で

おつりがくる値段で済んだのだった…。

 

車に乗る前に銘子が屋台を覗いたが、焼いているお兄さんの手元の

たこ焼きの厚みが1cmもあったので買うのを止めた。

 

折角食べるんなら美味しいもの食べたいもんね。

 

「さ、どこ行こうか」

 

「このまま進むと萩を通るけど」

 

「ほな、萩に行こっか」

 

気を取り直して萩へ出発!

 

海岸線に沿って車は走る。

時折、海岸線にギリギリのところがあって、台風で波の高い時には

きっと道路が波で洗われるだろうと想像された。

しかし、それだけに海を眺めながらのドライブは最高だった。

 

三時のお茶の時間までに萩に到着した。

 

萩博物館の駐車場に車を停めて、いざ、散策!

 

至る所で『萩焼』の陶器が売られている。

観光客も多い。

 

日差しがキツい。

暑い。

 

白壁の路地を歩いていたが、なんせ暑い。

 

「休憩しよか」

渉が提案したので、営業中とあった喫茶店のドアを開けた。

その瞬間、中からおじさんの声が。

 

「入らないでもらえます?」

 

中には先客らしい四人連れが一組だけ。何でやねん。

先客も驚いてこちらを見ていた。

気を悪くして、黙ってドアを閉めた。

 

じゃあ、営業中の札、出すなよ。

 

ずんずん歩く渉の手にはもう車のキーが握られていた。

 

「もう、萩はいいの?」

 

「うん。もういい。もう絶対に来ない」

 

さよなら、萩。

 

車に戻り、ナビで宿の電話番号を入力する。

今夜の宿は、湯本温泉『大谷山荘』だ。

 

土曜の朝、朝日放送で放映中の旅番組で紹介されていた宿が

ここだった。放送されたのはここの別邸だが、そこの値段はぶっ飛び

だったので今回は本館を予約したのだ。

 

本館もとっても素敵だった。

今回の旅行は全て銘子が予約等を請け負ったが、渉のリクエストは

少し高くても『いい旅館』にしてくれ、とのことで、さらに

旅行期間が『シルバーウィーク』だったこともあって選ぶのに

骨が折れた。

しかし部屋に案内されるまでウェルカムドリンクを飲んでいた

ラウンジで満足そうに見回していた渉を見て、銘子は内心ホッとした。

 

部屋も風呂も食事も大満足であった。

しかし、なんせドライブ旅行となると運動不足でお腹が空かない。

そこへ豪華な食事なので胃が悲鳴を上げた。

貧乏性なので出された食事は出来るだけ食べようとしてしまう。

 

先付け、前菜、土瓶蒸し、お造り五種盛り、陶板焼き、唐揚げ、

小鍋、蒸し物、てっさ(お造り)、つみれ汁、炊きたてご飯、

漬け物、デザート。。。

 

荷物を持って移動しなくていい分、こういうこともあるのだなあ。

 

翌日の朝食はバイキングだった。

 

久しぶりにパンを食べる。

機械式だが一回ずつ豆を挽いて抽出するコーヒーが美味しい。

近くの牧場からの牛乳があったので、それでカフェオレにする。

 

一瞬和食にしようかと迷うくらいの料理の種類だった。

しかし銘子は胃と相談して、軽くサラダとパンにした。

昨夜、動けない程に食べた後、生ビール1杯ですっかり酔った

渉が早々に寝てしまい(この日は別に部屋を取った)、

前日ほとんど寝てなかったこともあって、静かな部屋で

つい寝てしまったのだ。それも午後9時に。

 

連休の渋滞のことを考えて、早めに帰路につくことにして

(なんせ、山口県から帰るんだし)

ちょこっとだけ近くを観光することにした。

 

ここ長門には青海島(おおみじま)というところがあって

(橋で結ばれているが)この島が『海上アルプス』と云われる程

様々な形の岩が点在する景勝地なのだ。

ここを観光船で一周してみることにした。




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午前8時40分の始発、乗船する。

 

すんごいレトロな船。

窓は木枠だ。

それも引き戸。



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もしもの時、本当に使える救命胴衣は人数分あるのだろうか。

一抹の不安を胸に、通路を挟んで進行方向『左側』に三人が座った。




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ゆったり船出するが、波が少しあるのか岩のトンネルはそのせいで

くぐれないと連続パス。テープに録音された案内が船内に流れる。

 

「皆様、右側に見えますのが…」

 

「次に右に見えて参りますのが…」

 

「右、前方に見えて参ります…」

 

ポイントは全て右側に固まっている。

よく考えれば、船は島を時計回りに進むのだ。

つまり、島をぐるりと右回り。

通路を挟んで右に座る人の頭越しの窓に見える岩を見るしかない。

 

銘子は写真を撮るのは諦めてぼんやり海を眺めることにした。

渉は諦めきれずに、右座席の乗客の頭越しにデジカメを差し出して

撮っていたが…。

 

帰りはゆっくり中国自動車道を走って何度もサービスエリアで休憩しながら

家へ向かった。旅行中、全く渋滞に遭わなかったのだが、最後の最後に

『赤松』出口前からぴったり停まってしまった。

それが午後4時半過ぎのこと。よくぞ手前のサービスエリアで

トイレ休憩しておいたこと!

そこから『宝塚』出口まで2時間近くかかった。

 

さすがにシルバーウィーク。隣を走る車のナンバーがすごい。

『湘南』『釧路』…今からどこまで帰るんだろ〜。

多分、『吹田』辺りでもう一回すんごい渋滞があるみたいだし…。

うちは『宝塚』で降りるからいいんだけど、お疲れ様〜!

 

午後7時。マンション前で降ろしてもらって旅行は終わった。

たまには親子水入らずもいいもんだ。

 

多少の不満はあったが、でもそれも全て旅のネタとして

思い出に残る。70代コンビの両親といつまでこうしてられるか

分からないけど、また行けるといいな、銘子はそう思った。


おわり


〜〜このお話はフィクションというよりもハックションである〜〜


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2009年10月13日

山陰旅行編 その2

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愛の立ちくらみ劇場 ’09 山陰旅行編 その2

 

 

 

それはチェックインして部屋に入った際の仲居さんとの話に戻る。

 

砂時計ミュージアム、ってここからどのくらいかかります?」

 

渉が何気なくお姉さんに尋ねると、「はぁ、2時間ですね」と

こともなげに答えた。

 

2時間???」

 

この旅行に行く前に、渉は孫の風香に頼まれたのだ。

 

「おじ〜ちゃん、旅行で島根に行くって?

 だったら砂時計買って来てっ!」

 

島根を舞台にした漫画『砂時計』が人気となり、その後テレビドラマに、

そして映画化され、すっかり観光名所になっているのだ。

そして映画の中で重要な小道具として登場したのが、

砂時計ミュージアムの『一分間砂時計』。

ここでしか手に入らない。これを風香はおじいちゃんの渉にねだったのだ。

銘子は知らなかったが風香はこの漫画を全編持っているらしい。

はまってたのね〜。

 

「その『一分間砂時計』は人気なんだって。

 手作りで生産が限られていて、売り切れることもあるらしいよ。

 ガイドブックにそう書いてあるわ」

 

旅行前に銘子は、ここのミュージアムへのアクセスを調べるように云われて、

そう渉に教えたっけ。

 

どうもそこへは国道で一本道だそうで、混めば動かないし、

他の逃げ道はないそうだ。

 

「ミュージアムの開館時間はいつや?」渉が銘子に聞く。

 

「えっと…9時やって!」

 

「明日の食事時間は何時からいけますか?」

 

今度は仲居さんに渉は尋ねる。

 

「はい。7時からとなっております」

 

「じゃあ、7時にお願いします」

 

「かしこまりました」

 

仲居さんがふすまを閉めて部屋を出て行った。

 

「お父さん、明日、何時にここ出るの?」

 

「…7時半出発やな」

 

「え?」

 

2時間かかるんやろ。砂時計が売り切れたらあかん」

 

可愛い孫の為、おじいちゃんは頼まれた砂時計を

何としても獲得しなければならなかったのだ!

 

7時に食事で7時半出発だったら、朝風呂にも入りたいし、

支度を入れたら…ということで5時起きとなったという訳。

 

話は元に戻り、無事に9時過ぎにミュージアムへ到着した。

 

車を置くなり渉は大股で歩き出した。

 

「おと〜さん、そんなに急がなくても!」

 

聞きゃ〜しない。ずんずん父親の背中が小さくなる。

 

「可愛いねんなぁ、風香と真央が」

 

律子が感心してつぶやいた。

 

やっと渉に追いついたのは入場券売り場だった。

すでに3枚購入して焦れている。

 

追いつくと同時に、渉は入り口のお姉さんに入場券3枚をかざして、

銘子らを指差した。

「あの2人とで3人です!」渉は館内へ入って行った。

 

一刻も早く砂時計を買いたいらしい。

 

急ぎ足で館内を探す。

ミュージアムショップは見つからない。

館内案内図にもない。

 

焦れた渉は入り口のお姉さんに尋ねた。

 

「ああ、ショップは外の『ふれあい交流館』にありますぅ〜」

 

「一旦外に出て再入場できますかっ?」

 

渉が入場券をかざして尋ねた。

 

「はい」

 

その声を背中に、もう渉はミュージアムを出ていた。

 

ショップには目当ての砂時計が展示してない。

レジのお姉さんに尋ねると

 

「はい、それはこちらで承ります」

 

それはレジの奥に積み上げられていた。

 

「で、一分計と三分計とがありますが、どちらにされますか?」

 

「えっ?」

 

絶句する渉。

 

横から銘子が「一分計って云ってたからそれでいいんじゃない?」

 

やっと風香と真央の分のふたつをご購入。

 

めでたし、めでたし、と思ってふと見ると渉が携帯で電話している。

風香に電話して、ほんとに一分計でいいのか確認しているようだ。

 

ほんとに…もう…じいちゃんたら。

 

もちろん、一分計でないと『意味ない』らしく、それでOK

 

ミュージアムに戻って砂時計をじっくり鑑賞する。




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世界最大級の、『一年計』というのがあるのだ。

大晦日にひっくり返すそうだが、どのタイミングで返すのだろう。

クルッと軽く返すような大きさでもないし(だって砂が1t入ってる)

…気になるところだ。

 

余談ではあるが、この『一年計』(砂暦)は

竹下元首相の『ふるさと創生事業』の一億円で作ったとか。

 

ここ琴ヶ浜の鳴き砂(ショップの見本品)を

キュッキュキュ〜っと鳴らして出発!

今夜の宿は山口県、湯本温泉なのだ。

日本列島の背中というか、山陰本線に沿って国道9号線をひたすら走る。

 

「ねえ、お昼はどうすんの?」

 

旅館での朝食は想像に違わず、ものすごい量だった。

渉は前の晩にフロントに連絡して、一人だけ『鯛めし』というのに

変更してもらっていた。

 

松江藩主松平公、考案の家伝料理で、あったかご飯に鯛のそぼろや

薬味、諸々をのっけて秘伝のだし汁をかけて食べるという『鯛めし』。

 

「旨いっ。折角ここまで来たんやからこういうの食べとかんとな」

 

銘子は律子と目を合わせて肩をすくめる。

 

普段、渉は家でほとんど、いや決して『魚料理』を食べない。

にぎり寿司は食べる。刺身も新鮮なものだと食べるが、干物や焼魚等は

絶対に箸を付けない。しかしこうして旅で訪れた宿では喜々として食す。

 

「お父さん、お茶漬けもあんまり好きじゃないのに…美味しいの?」

 

「うん!」

 

「お父さん、そしたら家でこんなん作ったら食べる?」

 

「食べへん」

 

「…なんでやねんっ!」

 

結局、丼に軽く3杯ご飯を食べていた渉には敵わないが、それでも

律子も銘子も昼近くになってもまだ満腹だった。

 

助手席でぼんやりガイドブックを見ながら銘子が云った。

 

「ちゃんとしたお店に入らずに、適当に何か買って、

 んで海岸沿いに車停めて、ってのはどう?

 これから先に行くと、自然派のパン屋さんてのがあるって」

 

「それにしよう!」

 

全員賛成。

 

しかしその店が見つからない。

 

ずっと国道を走っていたからサービスエリアでのトイレ休憩もなかったので

徐々に全員『野の花を摘みに、』に行きたくなってきていた。

 

「そこのコンビニで聞くわっ!」

 

ポプラの駐車場に停車。渉はトイレに直行。

 

銘子が店員のお姉さんにパン屋の名前を云って尋ねると

 

「ああ、新しくできた、あそこね!」

 

そう云いながらレジの方へ来るように手招きした。

そこにあったメモ用紙にお姉さんは地図を書いてくれた。

 

「ここ、ポプラ。んで方角は関係なしで書くけどいい?」

 

結局、近所でも有名なパン屋さんを3件教えてくれた。

とっても親切。

 

全員トイレを借りたので、缶コーヒーとお菓子を買って車に戻った。

「3つ教えてもらったよ。まずね…」

 

「もういい」

 

「え?」

 

「国道に戻る」

 

折角お姉さんが教えてくれたのに!渉の気が変わったようだ。

ま、よくあることだが。

 

ふと銘子がお姉さんが書いてくれたメモを見ると、それはコピーの裏だった。

『ポプラ**駅前店、前年売上/当年売上/前年対比/構成比』の一覧表。

いいのかな〜?ま、数字だけで項目名はなかったけどね。

 

そのまま走り続けて適当な『道の駅』に停まる。

 

渉がさっさと入って行ったのは『手作りの店**』と看板にあった店。

扉を開けて入ると、すぐにショーケースにケーキとなぜか和菓子が

並べて陳列してある。ショーケースの脇に一つだけテーブルと椅子があって

そこでイートインできるようだ。

 

折り紙で作った手毬が吊るされていて、おばあちゃんは店内のテレビで

『新婚さんいらっしゃい』を見ていたようだ。

 

嫌な予感。渉も「しまった…」という表情。

だったら…座っちゃったけど、出ればいいのに。

 

「お父さん、ここでどうするの?」


<つづく>



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2009年10月12日

山陰旅行編 その1

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愛の立ちくらみ劇場 ’09 山陰旅行編 その1

 

 

シルバーウィークの初日、午前6時。

銘子のマンション前に父親の渉が運転する白のセダンが

横付けされた。さあ、今日から二泊三日のドライブ旅行である!

母の律子は後部座席にスタンバイしていた。

ナビのナビに加えてナビがカバー出来ない部分の地図検索は、

機械音痴で地図の読めない律子には無理なので

銘子が助手席で担当する。

 

まず目指すは安来にある足立美術館だ。まずナビに登録する。

 

シルバーウィークの初日ともなればものすごい渋滞を想像していたが

早朝ということもあって車の流れはスムーズである。

中国自動車道から米子自動車道に入る。山の緑がまぶしい。

 

高速道路を利用する利点の一つにサービスエリアがある。

『頻尿一家』と自称する銘子家族はとにかくトイレが近い。

さすがにサービスエリアは早朝にかかわらず混み合っていた。

 

駐車スペースには、車の中で泊まったのか、

毛布にくるまって眠っている家族連れも多く見られた。

 

こうしてこまめに休憩しながら、無事に開館時間を少し回った頃に

美術館に到着した。

 

入館料は¥2,200。もちろんリサーチ好きな銘子は

HPで『割引入場券』をプリントアウトしてきている。

これで一人¥200の割引となる。3人で¥600浮くなら

コーヒーの一杯でも飲めるではないか!

銘子ちゃん、エラい。

この美術館の庭園が何よりも楽しみだった渉が歓声を上げる。

天気のよいのもあって、緑が映えて美しく手入れされた庭園が

目の前に広がった。

 

まず休憩を兼ねて館内の喫茶室でコーヒーを飲むことにした。

 

『喫茶室翠』

 

重厚な室内。庭に面した大きな窓からは美しい庭園を臨むことが出来る。

 

 
 

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コーヒーにはここの庭師さんが焼いた『竹炭のスプーン』がついてくる。

 
一杯¥1,000



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入場料を浮かせた金額では飲めない。

ま、ソファーにゆったり座って庭を眺めながら飲む料金も入ってのことと

云い聞かせていると、渉が竹炭のスプーンでぐりぐりコーヒーを混ぜている。




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「あれ?お父さんもう一口飲んだの?」

「いや。今から」

 

竹炭のスプーンで混ぜることによってコーヒーがまろやかになる、

そのふれこみを確かめるなら、先にそのまま何もしないで飲んで

その後でかき混ぜてみて違いを楽しむもんでしょ〜!

 

ぐび。渉が一口コーヒーを飲む。

 

「全然分からん」

 

そりゃ〜そうさ。始めから混ぜてりゃぁ違いは分かるもんも分からん。

まったく…元々説明書を読まない性格だから仕方ないけど。

 

とぶつぶつ云いながら銘子はまず何も入れないコーヒーを口に含む。

少し酸味のある豆のようだ。

次に例のスプーンで混ぜてみて口に含む。

…まろやかになった…気がする。

 

銘子の舌も所詮その程度のもんである。

 

横山大観のコレクションが世界一とかで作品の展示が多かったが

銘子には大観の『落款』の変遷が興味深かった。

 

展示物を見ながら庭を見ながら館内を巡り、昼時となった。

夕食は旅館でだから、きっとヘビーなことになるだろうし、

それでなくても車での移動で運動しないから昼は軽くいこう!ということで

名物の『出雲そば』に満場一致した。

 

美術館の駐車場の一角にある蕎麦屋が有名だとかでそこへ勇んで行く。

 

スタミナそば、というのがここの名物らしいのでそれを注文する。

 

すぐに運ばれて来た、それは温かい汁蕎麦にエビの天婦羅ととろろと

生卵がのっかっていた。




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「もしお出汁が薄かったらこれ入れて下さいね〜」

 

おばちゃんがどんっとテーブルに置いたプラスティックのポットは

しっかり汗をかいていた。

つまり、冷蔵庫に入れていたものを出したのだ。

 

熱いお出汁に冷たい汁を???

 

熱いものは熱く、冷たいものは冷たく頂く信条の銘子には許せないことだが

猫舌の人には嬉しいかもしれない。

 

「冷たい…それに…美味しくない…」

 

それでなくても食の細い律子がすぐに箸を置いた。

 

天婦羅は揚げたてではなく、いつ揚げたか分からない冷たいもの。

そんなに熱くない出汁に冷たい天婦羅ととろろに生卵。

蕎麦にはコシがあったが本来熱々をすすりたかった銘子はがっかりした。

割子蕎麦を頼めばよかった。

 

普段、麺食いの銘子一家であるのだが今回は残念。

三人ともがっかりして店を後にした。

 

さあ、気を取り直して次の目的地、『出雲大社』に向かうぞ!

この日の宿泊先は『玉造温泉』なので安来から松江市内に入り、

宍道湖の北側を走り出雲大社へお参りし、

宍道湖の南側を通ってホテルに向かう行程とした。

 

天気は少し曇りがちになったが、たまに雲の切れ間からのぞく光が

湖面に反射して美しい。車は快調に走る。

 

昼下がりの出雲大社到着。

 

ここでは『二礼四拍手一礼』で、さい銭を入れ、90度の礼を二回、

四回手を打って願いことをしてまた90度の礼をするとか。

 

現在、『平成の大遷宮』で屋根の葺き替え工事が進められている。

折角だから両親が大遷宮の寄付を(一口千円)した。

この社殿のすべてを『檜皮葺き』にするって気の遠くなる話だ。

60年に一度行われているそうだ。



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仮拝殿でお参りし、でかいしめ縄(1.5t)を撮っていると渉が

さっさと帰ろうとする。

 

「お父さんっ!まだっ!神楽殿(かぐらでん)にも行くのっ!」

 

大声で呼び戻す。

 

270畳の神楽殿に合わせたしめ縄は長さ13m、胴回り9m、重さ4.5t

立派なもの。このしめ縄の底面(直径2.5m)の断面に硬貨を差し込もうと

子供達が何度も失敗しながら投げていた。何かのご利益があるのかな。





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一度でささると、もう一度出雲に来られる。

二度目でささると幸せな結婚が出来る。

…ってトレビの泉と違うって。

 

疲れのでないうちに宿に向かう。

佳翠園 皆美

気持ちのいい応対で好印象。

でも何であんなに細かい砂利をあんなにたっぷりエントランスに

敷き詰めるのだろう。車から玄関まで、ヒールが沈むは、

荷物のカートが沈んで転がらないは、これだけは不満に思った銘子だった。

こんなだったら固い通路をどこかに通しておくべきだよ〜。

 

早いチェックインだったので食事前にゆったり入浴し、

律子と銘子は別室でマッサージを受けてみた。

銘子を担当したおねえさんは銘子の肩こりに四苦八苦していたが、

少しでも凝りがマシになって銘子は大満足。

律子が試したのは生まれて初めてのフットマッサージ。

足裏だけのマッサージでどうして体中がぽかぽかするのか不思議そうだったが、

これも大満足。

 

係のお姉さんの誘導で食事会場に案内された。

 

用意された食卓に一枚の和紙があった。

 

『初秋の空 美しく晴れわたり 君の誕生 祝いぬるかな 女将』

 

予約時にちょこっと知らせておいたのをちゃんと覚えてくれてたのね。

今日は父、渉の70回目の誕生日だった。お祝いのグラスワインは

飲めない両親の分まで銘子が頂きました。うふ。

 

しか〜し。

自分の誕生日だから、とチェックイン後、部屋で宿の案内を読んだ渉が

宿が準備した料理の他に2〜3品追加注文していた!


それを思い出し、目の前に並んでいる料理だけで銘子は少し目眩がした。

 

「食べられるんかいな…」

 

しかし、旅館の料理ってなんでこんなに多いのだろう。

食前酒、先付け、前菜、温泉水を使った和牛・海鮮・野菜の蒸し料理、お造り、

更に四品からいずれか一品選ぶ料理、松平不味公献上品の『岩のり』を使った蓋物、

炊き込みご飯、留椀、香の物、デザート。

 

これにまだ島根和牛のステーキとアワビのステーキに車エビの焼き物を

頼むんだから目眩もするだろう。

 

銘子の家族は頻尿一家でもあるが、早食い一家でもある。

 

家族の中で酒を嗜む銘子を除いて、両親は殊の外食べるのが早い。

その早さに合わせて飲み食いすると、てきめんに悪酔いする。

なので銘子は意識してゆっくり食すことにした。

 

仲居さんがサービスしてくれるペースもあって、

割とゆっくり食事することができた。

かなりの食べ過ぎの状態で館内の土産物を物色し、部屋に戻る。

それでも食事開始から2時間もかかっていない。

 

「安来節、見に行こっか」

 

律子と銘子がマッサージを受けてる間に、部屋で館内と周辺案内の冊子を

熟読した渉が提案した。

 

近くの温泉施設で『安来節ショー』なるものが行われているそうだ。

 

浴衣に羽織でふらりと出かける。入場料は¥500

折角だからと最前列に陣取る。入場者は銘子の家族を含んで7名。

舞台に設置された大画面テレビで、この地方の観光地や名産品を紹介する

ビデオが流れている。開始時刻の20時を回ってもまだ始まる気配はない。

 

まあ、7人相手にやる気も出ないわなぁ…とは思うものの、紹介ビデオの

『宍道湖では…』の台詞を聞くのが5回目となると、さすがに焦れて来た。

ふと見回すと席はほとんど埋まり、満席状態になっていた。すごっ。

80名は入っているかな。

 

やっと始まった。

 

民謡を歌う人、三味線の人、鼓を打つ人、ダンサー…いえ、舞う人2名。

 

鬼瓦のようなおばちゃんとゴリラのようなおばちゃんのコンビの

「あ〜あ、しんど」「はいはい、いきまっせ」ってな怠そうな雰囲気に

一瞬引いてしまったが、何と踊りが上手い。



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最後の安来節ショーをもって公演は終了した。

踊るおっちゃんは(さっきまで鼓を打っていた)安来節の『師範』だそうで

さすが!おっちゃんの親指がほんとの『どじょう』に見えた!

 

お土産に日本手ぬぐいもらっちった。

(安来節のイラスト入り)

 

下駄をからんころん鳴らしながら宿に戻る。

 

もう一度風呂に入りたいところだが、

さっさと寝る準備をしている両親に合わせて

横になっていたら銘子も寝てしまった。

未明に、ものすごい地鳴りのような渉のイビキで起こされるまで。

 

夜明けまで渉の大音響のイビキと、隣でかすかに伴奏する律子のイビキとで

完全に眠れなかった銘子だったが、5時過ぎの朝風呂でしゃっきり目が覚めた。

 

何で5時起きだったって?


<その2へ続く>




posted by Avril at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年08月29日

自分へのご褒美

愛の立ちくらみ劇場『自分へのご褒美』編

(今回の写真は携帯のなのでちょっと画像が荒いかも!)


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午後8時、舞子駅で銘子は志保と落ち合った。
今夜からゆったり一泊の
『自分へのご褒美ツアー』なのだ!

駅から徒歩でホテルへ向かう。

仕事帰りのままの志保だが顔はもう
すでに休日モードにゆるんでいる。

銘子は一旦自宅へ帰り、もう完全遊びモードの
様相である。

まずはチェックインしてちょっと遅い夕食である!


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明石大橋の夜景を臨む席に案内された二人。
なぜか横並びのロマンスシート状態。
ちょびっと照れる。
何でやねん。

まずはビールで乾杯。

すぐに前菜の蛸の甘辛煮が運ばれて来た。


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柔らかく美味しく炊き上げられている。
う〜ん。満足。

続いて刺身だ。まぐろと鯛と烏賊の盛り合わせ。


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あっという間にビールを二杯飲んだ銘子は
泡盛へスライドする。

だってレストランと部屋は同じ階。
ほふく前進ででも帰れるんだも〜ん。


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淡路名物の『鱧鍋』が運ばれて来た。

豆腐とタマネギと三つ葉が入っている。
薄い出汁にしっかり旨味が出ている。

出汁ごと取り分けて、そこへ
すだちを絞り、小口ねぎと土生姜の
すりおろしを入れて頂くのだ。


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ああ。旨い。今度家でやってみよ〜っ!
銘子は心に誓った。

次は寿司の盛り合わせ!


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どれを食べても美味しい。

志保は芋焼酎のソーダ割り、次に水割りを
銘子は泡盛の次に芋焼酎のストレート、そして
最後に梅酒の水割りを頼んですっかり酩酊状態。

「銘子さん、お眠?」

「あ。うう…」

志保に云われて我に帰る銘子。

「そろそろ部屋に戻ろう!」

酩酊状態の銘子は顔と目を取ってさっさと
ベッドに入った。

志保が風呂から出て来たのもカーテンを閉めてくれたのも
全く知らなかった。まあ、いつものことである。



このホテルの名物は朝食のルームサービス。


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部屋に備え付けのパジャマのまま食べられる。
外は急に暗くなって土砂降りの雨となった。

その雨を見ながらとる朝食もまたこれ、
オツなもんである。

パニーニにハムとチーズと生野菜。
ヨーグルトにオレンジジュースに
熱いコーヒー。
自家製マヨネーズもついていた。

さあ、部屋をチェックアウトして
メインイベントである!

まずはホテル内の岩盤浴へ。
受付でタオルが3枚と作務衣の入った
袋を渡される。

ロッカールームで作務衣に着替える。

「3枚あるけど、どのタオル持って行けば
いいんだろ?」

「さあ、これでいいんじゃない?」

二人は適当なのを1枚とペットボトル
(ミネラルウォーター)を持って
浴室へ向かった。

係員のおねえさんが待っていた。
説明が始まる。

「えっと、まず特大のタオルを岩盤に…
 あれ?タオルは?」

「あ。ロッカーです。取ってきます」

ちょっとおねえさんが、イラっとする。

ロッカーに戻りながら志保が云う。

「確かさあ、受付で作務衣に着替えたら
 袋ごと持って岩盤のことに行けって
 云ってたよね」

「あら、そうだっけ?」

耳まで休日になっている銘子は
そんなこと知ったこっちゃない。

先客はおばさんが二人いた。

岩盤にタオルを敷く。

ちょっと湿った嫌なニオイがする。
でも我慢するしかない。
だってこれしかタオルはないんだもん。

腹這いになって5分。
その後、裏返って休憩して、を
繰り返すのだ。

15分寝そべって、一回目の休憩に
向かおうと銘子が志保のブースを覗くが、
…いない。

あれ?

休憩所に向かおうとすると、
志保が浴室に戻って来た。

静かな浴室は私語は禁止されているので
志保と銘子はそのまますれ違った。

休憩所で銘子が壁に貼られた
『岩盤浴のしかた』を見ると
『腹這い5分、上向け10分』とあった。

「あれ?15分じゃないの?」

銘子の勘違いだった。
このままいくと5分ずつずれてしまう。
なので、銘子は二回目の休憩は志保に合わせた。
休憩所には先客のおばさんがいた。
おばさん達は常連らしく、5分&10分の
リズムは完全に無視して好きな時間だけ
寝そべっているようだ。

さっきなんか、横向きになって
足上げ体操してたもんな。

「あんたら汗かいてる?」

「はい、しっかり出てます」

「出てるように見えへんけどな〜」

そう云いながらおばさん達は志保と銘子の
身体をばんばん触ってくる。

かなりフレンドリーなおばさん達である。

腹這いと上向けと休憩の最後の4セット目の
残り5分となったとき、休憩からさっきのおばさんが
帰って来た。

「あと5分!5分だけ我慢しよう!」

「ひゃ〜、暑っ!」

先程までの静けさはどこへいったのだろう。
おばさん達は話し続ける。

「だからぁ。**さんが云ってたけど、
ここのアンケート、いちいち書かへんでも
いいらしいよ」

「へ〜っ!そうなん?」

「でも私、この間書いたってん!『赤のボールペン』で」

「へ〜っ!」

「支配人に渡して頂戴、ってね!」

大爆音の声が浴室に響き渡る。
まだまだ話は続くようだ。

銘子が、

おばさんの足の裏に『赤のボールペン』で
『うるさい』と書いたろか!

と思い出したとき、志保がすっくと
起き上がり、爽やかな、かつ毅然とした声で云った。

「すみませ〜〜〜ん。もう少し
静かにして頂けませんか〜?」

少しの沈黙があって、おばさん達の
小さな声がした。

「すみません…」
「すみません…」

分かればいいのだ。
って、何でそもそも急に大声で
話しだしたのかは未だに分からない。

おばさんの一人は、年下の者に注意されたのが
気に入らなかったのか、

「ああ、暑っ…」

と小さな独り言をいい続けていた。

5分経った。

本当は岩盤浴後の肌は汗を拭き取るだけでいいのだが
二人はさっとシャワーを浴びた。

パウダールームで顔を作る。

だってこれから館内のイタリアンレストランで
ランチなんだもん!

「銘子さん、いつもはよく水飲むのに
ペットボトルの水減ってないやん!」

「ふふふ。当たり前やん。
 ビールのためよっ!」

岩盤浴。その後のビール。

身体にいいんだか悪いんだか分からない。

でもまずはこれがないと始まらないのだ! 


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まずはトマトの冷製スープ。
酸味が程よい。


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前菜は白身魚のエスカベッシュと
冷たいローストビーフのサラダだ。


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次はまほろばトマトというのを使った
爽やかなサラダ。


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この頃にはすでにビールから
スパークリングワインにうつる。


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穀物パンとフォカッチャはオリーブオイルで。


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志保がチョイスしたのは
『野菜たっぷりのリゾット』


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銘子は『ミートソースのパスタ』である。
なぜか白のグラスワインを追加注文する銘子だった。


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デザートは三種類。
ティラミスにチョコレートケーキ、
そしてアイスクリームだ。


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仕上げはエスプレッソ。
志保はホットコーヒー。

「コーヒー飲むと利尿作用あるから
トイレに行っとかないと!」

「じゃあ、トイレに行ってから
行きますか!」

どこに行くかって?

館内にあるサロンでエステを
予約してあるのだ。

ふっふっふ。

なんて豪華な一泊二日。

おいしいお寿司食べてしこたま飲んで
ルームサービスの朝食に岩盤浴。
イタリアンのランチにエステ。

こんなことしていいんだろうか。

いいんです。
だって色々頑張ってるんだもん。
んでもってまた、頑張るんだもん。

色々なことに感謝しながら
二人は至福の時間を過ごしたのだった。

ホテルを後にする頃には
日は西に傾きつつあった。


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「楽しかったね〜」

「また来たいね」

「頑張って、また来よう!」

こうして『超豪華・自分へのご褒美』の
一泊二日が終わったのだった。。。

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2009年07月04日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 10

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第十章 どたばたチェックイン

昨夜のシャンパンが少し残っていた。
ううう…
もともと酒に強くないけれど、
昨夜は一晩で一本飲んじゃった。

パッキングしなきゃ…

頭を働かせるにはまだ頭の芯が酔っているので
さっとシャワーを浴びて化粧し、身支度して
すぐにでも出かけられる状態にした。

おのずと荷造りは簡単になる。

だって、あとは全部詰め込んだらいいんだも〜〜ん。

パッキングのことをあまり考えずに手当り次第に
土産物を買っていたのでスーツケースが一杯になっても
まだ入れるものがある!

仕方ないのでBHVで買ったショッピングバッグに
適当にポイポイ放り込んで…いるうちにチャイムが鳴った。

部屋の引き渡しに先日のAikoさんが現れた。

スーツケースを閉めようとその上で飛び跳ねていた銘子は
上気した顔で彼女を迎えた。

「少し…早かった…でしょうか?」

遠慮がちにAikoさんが云った。

「いえっ!」

額に汗をにじませて銘子は答えた。

Aikoさんの手を借りてとりあえずスーツケースは閉まった。
閉まってしまえばこっちのもんである。

「ベルトは…?」

忘れて来ていた。彼女はこのままベルト無しでいくと
運搬中に投げ飛ばされてぱっくり開いてしまうことが
たまにあるという。

不安の気持ちを抑えながら鍵の受け渡しを行う。
部屋の点検を終えて鍵を返す。

ありがとう。一週間、お世話になりました!

マンション前には空港まで送ってくれる日本人が
待っているそうだ。

スーツケースを転がしてマンションを出るとそこに
いたのは女性だった。勝手に男性を想像していたので
銘子は驚いた。

車の中で名刺の交換をし、なぜか会話が弾んだ。
空港までノンストップの会話の応酬。

彼女はIkukoさんといい、在仏17年となるそうだ。
ここで生活し、子育てもしているとのこと。
銘子には想像を絶する状況だ。
すごい!

鍵の受け渡しを代行してくれたAikoさんも写真家として
Parisで頑張っていた。

異国で頑張っている彼女達、もっと沢山の日本人、
頑張れ!

と思っていると車はシャルルドゴールの2Fに到着した。

「重いですね…」

スーツケースを下ろしてくれたIkukoさんが云う。

「大丈夫です!だってビジネスですもん!」

「あ。ビジネスだったら大丈夫ですね」

今回は行きはエコノミーだが、帰りはビジネスに
マイルを使ってグレードアップしておいたのだ。
それもあって、あまり考えずに荷物を増やしたところがある。

「で、その袋にはまさか食料品は入っていませんよね?」

「え?」

元添乗員だったIkukoさんが云うには機内持ち込みの荷物に
食料品が入っていたら、没収される可能性があるとのこと。

うわっ!入ってるわ。

「軽い服とかと入れ替えた方がいいですよ」

「分かりました。ありがとう!」

空港内に入って、端っこに行ってスーツケースを開けてみる。
先程、Akikoさんに手伝ってもらって無理矢理閉めたからか
鍵がおかしくなっている。なかなか開かない!!

どうにか開けて荷物を入れ替える。

スーツケースの上で飛び跳ねて蓋を閉めようとしていると
どこからかおじさんが走りよって来てくれた。

「大丈夫か?閉まるか?」

「はい、ありがとうございます…」

「フランス語話せるのか?」

「あ。少しだけ」

「そうか!それはいい!
 よし!これで大丈夫だ!」

「ありがとうぅうううっ!」

何がいいのか分からないまま、
おじさんが去った後よく見てみると
やっぱりちゃんと閉まっていない。
やはり鍵が壊れてしまっているようだ。

また開け直してもう一度無理矢理閉めた。
銘子は飛び跳ねただけでなく、恥ずかしい思いもあって
かなり上気していた。

ふと視線をあげるとそこに不思議な機械があった。

「あ」

スーツケースをビニールでコーティングするというか
ラップでぐるぐる巻きにして熱を加えてぴっちり
保護するのだ。

6ユーロ。

何となくAikoさんの言葉が脳裏でよみがえる。
あ。スーツケースがはぜる様子が浮かぶ。

「すみません…」

そこにいたお兄さんにお願いする。

お兄さんが納得するまでなぜか4回ほど
ビニールをかぶせてはコーティングしてくれた。

これなら飛行機の格納庫から落ちても
大丈夫なのではないか???

チェックインカウンターに向かった。

銘子の番が来てスーツケースを載せた。

「あかん。無理」

「えええっ?」

見ると計りは34kgをさしていた。

あ。ビジネスクラスの預かり荷物のマックスは30kg。
でも前回、アワードマイル
(貯まったマイルを全部つぎ込んでチケットにあてた)で
ビジネスだった時、32kgでも大丈夫だったではないか!!

「あなたの場合は20kgまでです」

銘子のEチケットをプリントアウトしたものを指差して
係のおじさんは云う。

確かに20kgと記載されている。
しかしそれはまずエコノミーのチケットを取った時の
ものであり、それを元にグレードアップしたのだから
ビジネスの許容量30kgは記載されているはずはない。

「私はビジネスでしょ?なんでダメなの?」

そこからねばる銘子だった。ぴっちぴちに
コーティングされたスーツケース、開けるつもりはない。

おじさんは首をすくめるばかり。

「日本人、呼んでっ!」

銘子は最終手段に出た。
交渉するには言葉が続かない。

おじさんは電話をかけ、相手としばらく話すと
そのまま受話器を銘子に差し出した。

そのおねえさんに、銘子は無理矢理ビジネスの30kgは
納得してもらった。しかし、おねえさんはあと2kgを
譲らない。

「32kgまではなんとか許容範囲内なんです。
 34kgはどうしてもだめなんです。2kgどうにか
 減らして下さい」

労働組合の決め事とか何とか云っていたが
14kgの荷物をスーツケースから出すのと2kg出すのとでは
大違いだ。

銘子はまたさきほどのおにいさんの機械のところに戻った。

「2kg減らさないといけないの」

おにいさんは肩をすくめながら
黙ってカッターナイフを差し出してくれた。

皮を剥くようにスーツケースからコーティングを剥がし、
カッターナイフを返すとおにいさんは黙って
そのコーティングも受け取ってくれた。

もうすでにチェックインは済んでいるので、列に並ばずに
横から入れと云われていたのでそのまま空いたところに
銘子はスーツケースを持っていった。

31.8kgだった。ぴったし。
30kgを越えていたので係のおねえさんはまた銘子に
何か云おうとした。
すかさず銘子は隣のブースのさきほど押し問答した
おじさんを指差す。

おじさんが二言三言話して、おねえさんはすぐに
納得。そして見事にスーツケースは格納されていった。

ホッとした銘子はそのままパスポートコントロールを
通過した。
Ikukoさんのアドバイス通り、食料品は全てスーツケースに
入れたので何も没収されずにセーフ。

とにかく乾いた喉を潤すべくラウンジに向かった。
ビジネスクラスからはこのラウンジを利用出来る。

まずは席を確保して腰に手を当てて
シャンパンをぐい〜っ。

ふい〜。よみがえりながら銘子はポテトチップスと
ビールを持って席に戻った。

軽く1時間程をここでゆったり過ごして
どたばたしたチェックインの疲れを癒そう、
そう思いながら時間つぶしの『数独』をしながら
銘子はビールを飲んでいた。

隣のテーブルでは日本人らしき若い女の子が
英字新聞を読んでいた。
そこへ現れたもっと若い二人連れ。

「あの〜、ここ空いてますかぁ?」

その女の子の隣のテーブルには飲み残した形跡があったのだか
それがまた戻ってくるのか分からない感じであった。

「よかったら、ここにどうぞ!」

英字新聞の女の子が同席を薦めると

「じゃ、すみませ〜〜〜ん」

口を一回も閉めたことがないようにぱっくり開いたままの
20代前半の女の子が座った。
たぶん、口呼吸だな。

と、その連れは同じ感じの若い男性。
二人の左手に光る指輪が
あったので『新婚さん』と見て取れた。

柱の陰にいる銘子は二人から見えない。

二人は話し続ける。

「パリに一週間いたんですけどぉ」

肩からエルメスのバッグを斜め掛けにしたまま
新婦は話し続ける。

「昨日は最後だってことで三ツ星レストランに
 行ったんですよぅ」

み、三ツ星ぃ???すごっ!
二十歳そこそこで行ってしまうのか!
銘子は耳がダンボになった。

「でもさぁ。ぜぇんぜん美味しくなくってぇ!」
「塩っからいっていうかぁ、フランス人、味、
 おかしいですよね!」

ええええええええっ?美味しいものは美味しいよ!
銘子の腰は浮きかけた。

「だってぇ。値段と味が合ってれば文句云わないですよ。
 昨日だって、前菜で、こんなグラスにちょびっと
 何か盛って出て来て、
 それが85ユーロですよ〜!」

え。私は昨日、メインからコーヒーまでで13.5ユーロで
満足したぞ。前菜だけで85ユーロぉおおおおおっ???

女の子はどちらかというと、ドイツびいきのようで
適当に新婚さんの話に相づちを打っていたが、
しばらくして飲み物のお代わりに席を立った。

「何か飲みます?」

女の子の問いかけに新婚さんは云った。

「あ。二人ともお酒、だめなんでぇ!」

ふと視線をずらすとテーブルに
オレンジジュースが並んでいた。

お子ちゃま口(ぐち)なだけじゃないかぁぁぁっ!
そんなんで三ツ星レストランに行ったの?
それで帰国してからそこかしこで
「フランス料理、大したことないよ!」
なんて云うの?

しかし。そこで銘子が何を云おうとただの
お節介おばさんである。

ぐっとこらえて数独を続ける銘子だった。

もっと大人になって、自分で稼いだお金で
もう一回来てみたら、きっと見方は変わっているんじゃ
ないのかなぁ?

ってそれこそお節介か。

時間になったので銘子は搭乗口に。



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さよなら、FRANCE。
また来よう。

ああ。
その前にお金貯めなきゃ!!!

銘子は心を新たにするのだった…。


おわり。


〜〜このお話は全てハックションである。。。〜〜




posted by Avril at 20:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年07月02日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 9

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第九章 Paris滞在最終日

今日も一日、傘のいらない天気になるようだ。
いつものたっぷりとした朝食を摂りながら、ぼんやり
今日の行程を考える銘子だったが、全く思考が
定まらない。

洗濯機が止まり、干し終えてもまだ決まらない。

ぐずぐずしていると、お昼前になってしまった。

あ〜〜〜!ランチに行こう!

銘子は Le Pré Verre へ行くことにした。
予約はもちろんしていないので、直接店に行った。
ここも開店と同時に席が埋まる人気の店なのだ。

12時少し過ぎた頃に店に入った銘子は店のおにいさんに声をかけた。

「あの…予約してないんですが…」

「あ〜、それじゃあ無理だね。一杯だよ」

「あらら、それは残念!」

「でも13時半以降だったら大丈夫だよ!」

「あ、そうなの?じゃあ予約しますわ!」

13時半までの一時間と少しをどこかで潰さなくてはいけない。
そうだ!近くのここに行こう!

銘子が向かったのは、ご存知、
『ノートルダム大聖堂』だった。


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まずは正面から左側に回って建物を一周することにした。
真後ろの印象は全く正面と異なる。
じっと見つめていると、何だかジブリのアニメに出てくる
不思議な生き物に見えてくる。

セーヌ川に出てそのまま側面を見上げていると、銘子は
不思議なオブジェを見た。

塔の付け根にある緑色のもの。。。


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ズームしてみると、こんなのだ。


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たぶん、『聖・***』で、きっと何か云われがあるのだろう。
銘子はその辺が疎いので分からない。

もう少し進むと、また同じようなオブジェがあった。

今まで何回も訪れているはずなのに、初めて
こんなのがあることを知った銘子だった。

「何かの機会があったら調べてみようっと」

それから銘子は正面から中に入って行った。

沢山の観光客。
思い思いに写真を撮る人、椅子に座って祈りを捧げる人、
物思いに耽る人。

時折、オルガンの音色が流れてくる。


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ゆっくりと一周していたら、おっと!時間がないではないか!!


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慌ててレストランに戻ると、ちゃんと席が用意されていた。
すんごい奥まった所だ。

何にする?と向こうの離れた所から尋ねられたので銘子は
店内の黒板を指差す。お兄さんは頷いた。

前菜+メイン+コーヒー+グラスワインで13.50ユーロ。

メインのチョイスは…と思うのだが、あまりに忙しそうに
しているので声をかけづらい。そんなとき、妙に気弱になる
銘子だった。ま、好き嫌いがないので『お任せ』でいいや!と
待っていると、ひよこ豆のサラダが前菜で出て来た。

スパイスの効いたマヨネーズっぽいソースに絡めて、
たっぷりの生野菜の上に盛られている。

写真は慌てて撮ったので失敗。

隣のカップルに見つめられたので2枚目を撮るのを断念。

前菜が下げられるとすぐにメイン登場!
(これは何とか撮れた。携帯だけど…)

あ。また魚だ。


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白身魚のグリルと焼き野菜添え。
サフランソースかな???胡麻が香ばしい。
お皿全体に振りかけられたスパイスは何なのだろう???

パンもワインもおいしく、大満足。

お肉、食べたかったけど…。ま、次回の宿題だな、と銘子はすぐに
気持ちを切り替える。

なぜか、店の主人は精算時に『東京店』の名刺をくれる。
いよっ!商売人!
でもたぶん、東京では銘子は行かないだろうけど。

食後はまたセーヌ川を散歩する。


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この写真を撮った頃から急に日が射して来て肌がじりじり焼けてくるのが
分かった。銘子がそのまま目指したのは!

マカロンの大御所!
LADUREE !

銘子が店に到着すると、すでに8人程並んでいた。
そのうち日本人が4人。半分である。

まず、手前に並んでいる箱(大きさと色)を選び、
(何個入るか明記してあるので安心!)ずらりと並んでいる
マカロンから好きなものを選んで箱に入れてもらうシステムだ。

店を出ると、あまりの日差しの強さにこのままマカロンを
持ったまま歩き回るのは無理があると思い、銘子は
一旦部屋の冷蔵庫に入れるべく戻ることにした。

日はまだまだ高かったが、すでに18時過ぎ。
まだ日本時間での生活リズムが抜けきらない銘子は
夕食モードになってしまった。

最後の晩餐は部屋ですることにした銘子は
スーパーに買い出しに行くことにした。

外に出るともちろんまだまだ日が高い。
そうだ。ビール、飲もう。

まだParisに来てから Blanche (白ビール)を飲んでないことに
気づいた銘子はカフェに入って注文した。

「白ビールありますか?」

「あるよ! 25cl と 50cl のどっちにする?」

「じゃあ…50!」

「了解!」

50cl (センチリットル)= 500ml 

飲みがいがある。銘子は道行き人を眺めながら
ビールを飲んだ。

ふと隣の席のテーブルを見ると、なんと!
Désperados があるではないか!

これはテキーラ風味のおいしいビールを聞いていたのだが
まだ銘子は飲んだことがなかった。

すぐに Blanche を飲み干してお兄さんを呼ぶ。

「Une Déspé ,SVP!」

きたきたきた!


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先程と同じく 50cl にしたので Déspé のグラスではないが
ま、仕方ない。

すっかりほろ酔いで銘子はスーパーに向かった。
(50cl + 50cl = 100cl =1000ml =1リットル)

惣菜売り場でハムを2切れ、タブレとオリーブの
カクテルと100gずつ買い、部屋に戻る。

もちろん、冷蔵庫にはシャンパンがスタンバイ!

先日買った美味しいバゲットを添えた。

一人だけの、チープだが豪華な晩餐の始まりなのだった。。。

つづく。


第十章をお楽しみに!



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