2015年11月15日

母と泊まれば

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今日はひさびさの『愛の立ちくらみ劇場』〜!
(もちろん登場人物の名前は仮名でっす)

14日早朝5時40分。銘子のiPhoneが鳴った。

『今、出たから』

銘子の父、渉からの『帰るコール』ならぬ『出たよコール』だ。

到着を見計らって銘子は道に出て待つ。
早朝なので数分で渉の車は銘子の自宅へ到着する。

渉は昨日もゴルフ、今日もゴルフ、翌日もゴルフに行く
元気な老人である。

認知症の母、律子と暮らしている父の唯一の気分転換なので銘子は
元気で出かけてくれるならそれでいいと思っている。

ただ、土曜と日曜の二日に渡って早朝銘子の家に預けられる律子は
たまったもんではない。

こういったこと(週末連ちゃんゴルフ)は年に一二度のことなので
銘子は母の好きな海のそばのホテルを予約する。

母と娘の女子会である。

弟の家で銘子は車を降ろしてもらい、弟の車を借りて
律子がいるマンションへ向かった。

前の晩から多めに睡眠剤を飲んでいる律子は
微動だにせず爆睡であった。

まだ6時にもならない…。

銘子が洗濯機を覗くと結構な洗濯物が。
暇なので洗濯を始める。

ふと洗面所をみると洗面台がくったくた。
鏡も合わせて磨きをかける。

トイレを恐る恐る覗くと…。
きゃー。

ここもしっかり掃除する。

ここまで終えて覗くとまだ律子は爆睡している。

キッチンもしかり。
70歳にして主婦デビューした渉は、料理と洗濯はしても
掃除はしない。水周りの掃除なんてもってのほか。

排水溝のズルンズルンと戦って寝室を覗くと律子が
目を開けていた。

目が合うなり『ご無沙汰しておりますぅー』と。
なんでやねん。

掃除はほとんど終えていたので律子の身支度を整えて
冷蔵庫にあった買い置きのあんぱんを食べさせた。

掃除ですっかり疲れていたので冷蔵庫からそのまま
出したからか、ひとくち食べた律子は間髪入れずに
『冷た〜い』。ごめん、悪かった。

銘子は残り半分をオーブントースターで温めた。

食後、律子を車に乗せ、銘子は自宅へ戻った。
一ヶ月に一度の律子の顔剃りをし、自宅の掃除と
洗濯を済ませて泊りの準備をする。

自分にかまってもらえないからか律子の機嫌が
悪くなってくる。

昼、簡単なトーストを野菜ジュースで流し込もうと
思ったらご機嫌斜めの律子は食べながら歩き出す。

もー、この忙しい時に!律子のカットの予約時間が迫る。
月に一度は銘子の近所のサロンでカットしてもらってるのだ。
掃除機をかけた部屋を律子はトーストを食べながら歩く。

『もー、おかあさん、何で歩くの?!』

『知らん!』

知らん、って、もーっ!

カットは律子のまどろみの中で終了した。
サロンの椅子から降りる際には熟睡状態で
脇を支えて歩かないといけない状態に。

この日泊まるホテルでは朝食は付いているが
夕食は部屋に弁当を持ち込む予定だった。
これを買いに行く頃から律子はかなり手強い状態に
なっていた。

歩いてくれない。足が前に出ない。
車に乗り込んでくれない。
寝ているのか、反抗なのか。

雨が降ってくる。

何とか助手席に押し込み、発進。

口の中でぶつぶつ文句を言っている律子。

『え?なんて?おかーさん、なに言ってるの?』

『そやかて、&%%$$#”*』

言いながらシートベルトを持ち上げて頭をくぐらせて
脱いでいる。

なだめながら銘子は元の位置にベルトを戻す。

しばらくすると靴を脱ぎだす。
しっかり紐を結んであるのでこれは断念したようだ。

再度、シートベルトを脱ぐ律子。

戻す銘子。

この攻防が幾度となく続いた。

静かにしているのでふと銘子が助手席に目を向けると
律子はシートベルトを噛み締めていた。

慌てて外す銘子。

運転もなにもあったもんじゃない。

なんとか無事にホテル到着。

ラウンジでビールを飲み、律子を風呂に入れることにした。
服を脱ぐ頃は反抗が最高潮に達していた律子。

シャツを脱がそうにも袖をしっかり握る。
靴下を脱がそうにも両足を踏みしめて上げてくれない。
浴槽をまたいでくれない。

握りしめる手の指を一本一本外してとにかく風呂に入れた。

出た頃には少し気持ちがほぐれたのか
律子はご機嫌になっていた。

ここで夕食!

必死の思いで買ってきた弁当を広げる。


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食べさせた後は歯を磨いてベッドに横にさせるとあっという間に
寝てくれた。ここから朝まで起きずに寝てくれたので
銘子は助かった。

翌朝、朝食が運ばれてきた。


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これも結構食べてくれて、チェックアウトまでベッドに横になったり
しながらも大人しくしてくれたのだ。


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折しもこの日は神戸マラソン。
このホテルからすぐの国道2号線は朝から13時半まで通行止め。

これに銘子が気づいたのは宿泊の数日前のことだった。

きゃ〜っ!

ホテルに確認の電話を入れると、車の乗り入れは規制中は無理なので
公共交通機関で来てくれ、という。

そんなん、この母親を連れて、無理〜〜〜!!

このホテルのチェックアウトは12時。
ホテルの案内は、チェックアウト後はホテルラウンジで
規制解除されるまで時間を潰してほしいとのこと。

しか〜し。最近反抗期の母親が大人しくしてくれる保証はないし、
どれほどの宿泊客がホテルラウンジに集まるのか分からない。

銘子は部屋の午後2時までのレイトチェックアウトを願い出た。
ホテル側は予約状況で渋っていたが、なんとか交渉成立したのだった。

朝9時からの朝食を終えて、銘子は律子の顔マッサージやら
パックを施して時間を潰した。幸いにもマッサージで気持ちよくなったのか
律子は1〜2時間ほど寝てくれたのだ。

午後2時前。チェックアウト。

神戸マラソンの影響が残るであろう2号線を使うのは諦めて
銘子はずんずん北上し、阪神高速北神戸線経由で帰路に着いた。

帰りの車の中の律子は大人しく座っていてくれた。
あんまり静かなので『おかーさん。起きてる?』と聞くと
『生きてるー』と答える。

生きててくれたらそれでいいのよ。おかあさん。

こんな女子会、おかーさんがもっと元気な時にもっともっと
行っておけばよかった。そう思うと運転中の目が
涙で見えなくなってしまうので車の中に流れていた曲に合わせて
声に出して歌い出した。

『ありがとう、って伝えたくて
 あなたを見つめるけど
 繋がれた右手は
 誰よりもやさしく
 ほら この声を受け止めている』

余計に泣けてくるやん!


このお話はハックションである。

〜おわり〜



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2014年06月15日

第一回・大人の修学旅行

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昨年末のノエルで
『大人の遠足』の次は『大人の修学旅行』だねー!
なんて云ってたらほんとになってしまった。

もちろんわたくし、銘子が企画&添乗員!

6月某日、それは決行されたのでした。。。




阪急池田駅集合。

参加者は、牧子、佐織、加乃、桐子、盛敦、銘子(全て仮名)の
6名である。
駅北側に伸びる商店街をゆるゆると進み、抜けたところを左折。
すると目の前にのぼりが見えてくる。

ここが大衆演劇の殿堂、池田呉服座だ。
席はすでに予約済み。ダテに下見に行ってないもーん。

大衆演劇。

たぶん誰かに誘われたりしない限り、自分から
チケット買って行かないだろう。6名全員が初体験!
あまりにもついて行けなかったら退席も辞さない覚悟で
着席。

『銘子さん、どこ?席?』
『えっと、そこ!<え>と<お>列に3人ずつ』
『うわ、前から4列目?』
『だって初めてだったら、ここね、って受付の人が
 云うんだもん』
『舞台、近っ!』

そんなこと云いながら駅前で調達した
おにぎり弁当を配る銘子。

『はい、弁当にビールねー、柿の種もあるよー』
『お、さんきゅ』
『はい、ドーナツ!』
『え?桐子さん持ってきてくれたん?』
『私はこれー、』
『え?牧子さん、これ、何?』
『ブッセ。クリームがあっさりしてておいしーの!』
『加乃さんのマロングラッセもあるでー』

わいわい云いながら弁当をつつく。
大概のものは舞台中も飲食OKなのだそうだ。
写真撮影も芝居のときはダメだけど、歌謡ショーになったら
いいらしい。

まず、どんな流れなのかも分からないので
開演を待つしかない。しかし周りはかなり濃い〜メンツが
揃っていた。

金髪のウルフカットのばあちゃん。
パンチパーマの、これもばあちゃん。

『あれー、久しぶり!』
『そこの席なん?こっちおいでー』
なんて皆が声かけ合ってる。みんな、身内か。
前の方の夫婦は家から弁当詰めて持ってきてるしー。

お馴染みさん同士の中でぽつんと浮く6名。

気がつくと、周りの客にガン見されてる。
しかも指差してヒソヒソ話されてるしー。
すごいアウェー感を感じながらひたすら待っていると
舞台ではマイクテストしてるらしい。

『ワンツー、ツー、ツー、ツー』
幕の内側ではかなりバタバタしている様子。

そしていよいよ開演!

江南スタイルの音楽が響き、幕は開いた!


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まずは顔見せを兼ねて1人ずつ踊りを披露。
若手から始まり、座長の登場。

え?何で火のついた煙草持ってんの?

着流しにくわえ煙草。煙草持ってターン。
うそ。
あ、煙草投げた!

座長が舞台袖に火のついた煙草投げた途端、
にゅーっと腕が出てきてそれをすばやく拾う。
で、さささっと灰もその手でぬぐう。

涼しい顔で座長は踊りきる。

流れるように演目は進み、ちょっと歌舞伎調の
『お富与三郎』のさわりをちょびっとやって
一部は終了。

二部は人情芝居。

あらすじは次の通り。

********************

佐渡の一膳飯屋が舞台。
3年も行方しれずになった夫を待ちながら
舅(ジイ)と幼い息子とともに暮らすおみつ。

憎からず想っている柏崎の伍作の
求愛を受け入れられないでいる。

そこへ夫の仁太郎が戻ってくる。
記憶を失くしていて音信不通だったのだが
自分がいない間に頑張ってきたおみつの
気持ちをくんで、仁太郎は一芝居打ち、
伍作との新しい人生を進めるように
おみつの背中を押してやるのだった。

********************

ジイと孫の別れの場面では客席から
鼻をすする音がチラホラ。
ジイと仁太郎との掛け合いは
ボケ倒して客席を爆笑にもっていく。

たぶんほとんどがアドリブだろう。
泣き笑いのあとは第三部、歌謡ショー!

座長。お見それしました。
全ての演目で踊り方が違う。

そしてお約束のおひねり贈呈!
我々は初めて見た!
やっぱり実際にあるのねー。

座長の胸元には福沢諭吉がピン留めされているし
客が手渡した差し入れの紙袋を持ったまま
座長は華麗に踊るのだった。
これぞ贈った側へのファンサービス。


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舞台での踊りの振りを真似て座ったまま踊るばあちゃん。
大音響の中、うたた寝するばあちゃん。
いかつい格好なのに芝居の泣く場面で号泣してたじいちゃん。
自分の目の前に演者がやってくるたびに
最前列から身を乗り出して拍手するばあちゃん。

どれもこれもいい顔。
これにはまる理由が少し分かったような気がした。

思っていた以上に楽しめたようで
満足した6名はそのまま今夜の宿、不死王閣へと向かったのだった。


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夕食後、部屋での宴会は大盛り上がり。
お座敷遊びの『金毘羅船船』があんなに盛り上がろうとは
思いもしない銘子であった。
総当り戦で優勝は牧子さん!見事商品をget !
宿の前の川に飛び交う蛍を見られたのもラッキーだった。

当たり前じゃん、カリスマ添乗員の銘子様、
昨日までは1〜2匹だった蛍、5匹ほどに
増やす、この力量!(って偶然だけど)

翌日も池田を散策。
小林一三記念館(阪急電鉄生みの親)も覗いてみた。

このひと、阪急電車走らせて、宝塚歌劇やら阪急百貨店作って、
沿線の宅地開発もやったんだよねー。
えらいよねー。


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さらに向かう先は、チキンラーメン記念館!
池田には小林一三も安藤百福もいたのよねー。
恐るべし池田!

で、予約しておくと、チキンラーメンを麺打ちから
作れる体験工房があるので銘子はこれを押さえておいたのだ。


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粉を混ぜ、麺を延ばし、味を付けるところまで
各自がやり、最後の『揚げ』はお任せする。


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わー、出来てる。


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各工程の合間に袋に絵を描いて、これに入れてもらって
出来上がり。


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濃い、濃すぎる旅行が終わった。。。
梅田での打ち上げには志保さんも合流。

打ち上げも盛り上がり、二次会も開催。

またやろーね、気をつけてねー、
帰るまでが旅行です、などとと云い合いながら
解散して2月から構想練った
『大人の修学旅行』が終わったのでした!

お疲れ様!

長い長いお話、読んでくれたあなたも
お疲れ様!


posted by Avril at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2013年11月13日

迷走!リフォーム



先日、銘子は近くの大型ショッピングモールにある
水回り専門リフォームのショールームに行って来た。

ちょっと前に嫌な水道屋を呼んだあたりから給湯器の調子が悪い。

思い切って給湯器、トイレ、洗面所、ユニットバスの
総入れ替えをしようと決めた。
築10年を越えたマンションで、そろそろリフォームに
入っている部屋が増えていた。銘子もそろそろ、とは
思っていたのだが、給湯器のパワーダウンがきっかけで
具体的に考えるようになったのだ。

まずは『水回り専門店』数社に見積もりを出すことにした。

消費税値上げで来春までに駆け込み工事が増えることを
考えると早めに手配した方がいいんだろか、しかし
駆け込みで工事が立て込んで雑な工事をされる可能性もある。
消費税値上げ後も、そのぶん値下げするなりで企業努力も
あるだろうから慌てなくてもいいかも…

色々考えながらとりあえず、相場ってものを知りたくての
見積もりであった。

混雑するモール街。

その店先には誰もいなかった。暇そうなおねーさんたち。

とりいそぎ、相談に乗って欲しい旨を伝えるとおねーさん、
どんなのが希望か、と要望を聞いてくる。
まずはして欲しいことを全部云ってみた。

熱心に聞きながらメモしていたおねーさん、

『では、担当のものが実際にお伺いしてお見積もりに入ります』

あ。そうなの?
ここでは見積もりはまだ出来ないってことね。

『担当者が今日中にお伺いする日の打ち合わせの連絡を
入れますので何時まで連絡可能でしょうか?』

『携帯電話なのでいつでもいいですよ』



銘子は買い物に出かけた。
ちょうどレジで支払をしているときに電話が鳴った。

出られなかったので支払を終えて店を出てから
折り返し電話を入れると要領を得ないおにーさんが出た。

『担当者は A ですか?それとも B ですか?』

担当者の名前を云わないとつなげないような云いぶりである。

『え?私は担当者から連絡が入ることは聞いていましたが
どの方が担当されるか知らされておりません』

『あ‥そうなんですか。ではしばらくお待ち下さい』

軽い肩すかし。

再び、頼りないおにーさん。

『あの。担当者が他の電話に出てますので折り返し電話します』

これからも買い物を続けるつもりだった銘子は
また電話に出られないことがありそうだったので
翌日の昼頃に連絡もらえるように頼んで電話を切った。

『あ…はい。折り返しではなく、明日の、昼。あ、はい』

何だか銘子は嫌な予感がしていた。

翌日の15時過ぎ。
銘子は連絡が入っていないことに気づいた。
昼はとっくに過ぎてる。やっぱりいい加減な店なのかなー?

16時前。携帯が鳴った。

『あの。明日のお昼に(って今日だろ?)電話するように
伝えられていたんですが、あの、ちょっと。で、今お電話
させていただいてます』

『あー、そうなんですか』

『で、ご要望は?』

え?要望は昨日、おねーさんに全部云って来たぞ。
え?もしかして…

『あの。要望って、見積もりの希望日のことですか?』

『はい』

『あーそう』

また嫌な予感。

見積もり当日。銘子は体調不良で会社を休んだ。
夕方、なんとか起きられたので19時の約束までに
簡単な支度をした。

ずっとベッドに寝ていたのでシャワー浴びて、浴室をざっと
掃除して待った。

19時5分前。近所まで来て待っているのだろうか。
19時。音沙汰なし。

19時10分。音沙汰なし。
19時20分。音沙汰なし。

もし約束の時間に遅れることがあれば普通の営業マンなら
その連絡を入れるはず。

19時25分。銘子はその店に電話を入れた。
おねーさんが出た。

『あのー。7時にお見積もりに来られるということで
お待ちしているのですが連絡もないのですが、どうなってるのですか』

『え』

『あの。****さんと7時にお約束をしていて…』

『あ!少しお待ち頂けますかっ?』

銘子が待っていると電話に出たのは男性の声。

『あの。****です』

え?なんでうちに来ないでそこにいるの?

『実は予定は入れていたのですが、忘れてしまっていて…』

わ・す・れ・て・しまっていて ???

それを素直に云うか?

銘子は静かに電話を切った。

見積もり前に終わってしまった。
次のお店はちゃんと来てくれるだろうか?

リフォームは完成するのか?
出だしが悪いので迷走しないよう、銘子は祈るのであった…。

〜この話はハックションである〜




posted by Avril at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2013年11月10日

美容室漂流記


銘子は美容室が苦手である。
昔は半年ほど放置して伸び放題、なんてことを繰り返していた。
ストレートロングなら何とかなったのだ。

しかし年齢とともに増え続ける白髪をどうにかせんといかん。

仕方なしに銘子は美容室に足を運ぶ。
でもどうしても馴染めずにその店に続けて行くことができなくなる。
嫌な気持ちになってしまうのだ。

例えば、シャンプーを終えて席に戻るさいに、居酒屋並みのデカイ声で
『お疲れ様でした〜!』『お疲れ様でした〜!』『お疲れ様でした〜!』
連呼される。

更に、シャンプーのときに首に巻かれるケープが異常に臭い。

『自分さぁ〜』息子くらいのスタイリストにタメグチで話される。

シャンプー後、アシスタントの女の子がマッサージしてくれるが
ことごとくツボを外される。余計に疲れるってば。

店内のトラブルか何かでイライラしてその気分のまま接される。

確かこのときの担当スタイリストのおねえさんは、銘子の前髪の
束を間違ってかなり短く切ってしまった。

切った瞬間、そのおねえさんが『ひっ!』と小さな悲鳴を上げたのを
聞いたので手元が狂ったのは間違いない。

その挙げ句に開き直ったお姉さんは
『この長さに合わせていきますね〜』と云いきり、銘子の前髪は
建物の庇(ひさし)のように申し訳程度の長さに仕上がったのだ。

またあるときは、スタッフが隠すのを忘れた自分のカルテの『話題』の欄に
『料理、酒の話』と書いてあったのを見た。
そういえば、ドライヤーかける間だけついてくれたアシスタントさんが
いきなり料理の話を振って来て不思議に思ったことがあった。
そのカルテを見て銘子は何だか白けたのであった。

ことごとく銘子は居心地のいい店がなくて漂流し続けている。

つい最近、銘子は新しいサロンをネットで探して予約した。
ここはスタイリスト2人だけの小さな店。
シャンプー後に大きな声で『お疲れ様』コールされることもないだろう。
アシスタントがいないから自身でシャンプーブローしてくれるだろう。
下手なシャンプーに頭皮が火傷するかと思うほどドライヤーを
近づけることもないだろう。

しかし店を入った瞬間、何となくそのまま店を後にしたくなった予感は
…当たってしまった。

担当してくれたおにいさん。服装から受ける感じが何となく不潔。

ともかく髪をどうするか聞かれたので、クセがでてまとまらなく
なって来た前髪をどうにかしたいのと白髪を染めたいというと
『じゃあ、前髪だけ縮毛矯正かけて、全体を染めていきましょう』

施術が始まった。

ふと見ると、おにいさんの腰につけたバッグに入ったハサミや櫛が汚い。
そして顔についた細かな髪の毛をはたく為のブラシを見て
銘子はどん引きした。

『これで私の顔を…?』

以前は白色だったはずのブラシには細かな毛の破片がたっぷりと
ついていた。

シャンプーが始まった。

う…。やはりケープはカビ臭がする。

ぷっ、と音がした。ふと見やるとおにいさんはゴム手袋を装着しようと
していた。おにいさんの手は可哀想な位あかぎれていたので仕方ないと
思うのだが、銘子はゴム手袋でシャンプーされると頭皮に軽い炎症を起こすのだ。

何の断りもなくゴムでゴシゴシされ、カラーが始まった。

白髪染めのクリーム状の薬を髪に塗るのだが、
このおにいさんの塗り方がものすごく雑で、勢い良くバシバシ刷毛を
はたくので、銘子の頬にそのクリームのかたまりがべったり飛んでくるほどだった。

『後で拭きますんで』

(すぐに拭いてよ〜!という銘子の心の叫びは届かなかった)

おにいさんが雑に髪を触るので耳につけたビニールのカバーがずれる。
もう何度使い回しているのか、透明部分がほとんどなく茶色に染まった
ビニールの耳カバー。ゴムの部分が伸びているのか耳からすぐに
外れそうになる。構わずおにいさん、バシバシクリームを塗る。

最後のシャンプーで頼んでいたトリートメントを始めた
おにいさん。頭の上で何だかゴム手袋で銘子の髪をしごく音がする。
『むぎゅ、むぎゅ、ぎゅちゅ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぐぎゅっ』
濡れた髪をゴムでしごいて大丈夫なのか???

髪を乾かしているとき、銘子は異変を感じた。

『あの…前髪だけ色が違うように思うのですが…』

『あ。違いますね。縮毛の薬を付けた部分だけ色が変わるんですよ』

…だったら最初にそれを云ってくれ。前髪だけやけに黒い。
それから2〜3分ほどおにいさんは黙ってドライヤーをかけ、
ぽつりと一言云った。

『じきに馴染みますんで』

その2〜3分の『タメ』はなんなんだ?
言い訳を考えていたのか〜?

髪を乾かした後で前髪の長さの調整が始まった。
多めの束を一気に切るからか、銘子の顔に切った髪が勢い良く
降り注ぎ、細かい髪が目の中に入る。
ハードコンタクトを入れている銘子には拷問の痛みだった。

『こんな感じで…いかがでしょうか?』

おにいさんが云うので正面の鏡を見た銘子は思わず聞いた。

『こ…これで出来上がりですか?』

『はい。あとは薄さを調整するくらいです』

『こんなに左右が歪んでいるのに?』

『あ』

おにいさん、斜めになっている左右を合わせようと
再度切り出した。何なんだ、一体。

そして仕上げに例の汚いブラシで顔をなでられた。
銘子は息を止めて我慢した。

家に戻った銘子はすぐに店のカードとおにいさんの名刺を
ゴミ箱に捨てた。二度と行くつもりはない。

銘子の住む界隈には美容室が乱立しているのだが、
居心地がよく、清潔で、きちんと対応してくれる店が見つかるまで
美容室漂流はまだまだ続くのだった。

銘子の頭皮は、ゴムの摩擦で掻きむしるほど痒くなってきていた…。

〜このお話はハックションである〜


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2013年02月09日

ぱふぱふ〜

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その日の朝はいつもと窓の風景が違った。
白い…。

雪が積もりかけていた。
うわ、自転車で会社行けるかな?
心配したが、徐々に雪の降りはおだやかとなり、やがて止んだ。

白かった地面は元の色に戻りかけている。
よかった。

安堵した銘子の目に、ベランダの柵の上にほんのり積もった新雪が
やけにきれいに映った。

『雪だるま、つくろう!』

かじかむ手を時折お湯で温めながら完成した雪だるま。

よし!目入れだ!

丸い黒いもの…周りを見回すと、さっき入れた黒豆茶の黒豆を
急須から取り出して埋め込んだ。ずぶっ。

眉毛は…細い黒いもの…っと、ふと作り立ての父親用の弁当を見た銘子は
ご飯に乗っけた細切り昆布の佃煮を指でつまんだ。

雪だるまに乗せるとあっという間に雪が茶色ににじんでいった。

いかん!汚いっ!

慌てて銘子は新しい雪で茶色を隠す。

プランターにあったローズマリーをちぎってそれらしくした。
会社で皆に見せようとiPhoneで撮影し、支度して上機嫌で
銘子は部屋を出た。

自分自身になにが起こっているか、そのとき
銘子は知りもしなかったのだ…。

(さらに立ちくらみたい方は、続きをどうぞ!
 …長いよ。 )


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2012年09月30日

ピンクのクリアファイル

 

銘子は待っていた。

約束の午後1時を過ぎている…

仕事のやりくりをして待っているのにどうなってるんだ?


話は少し前にさかのぼる。


ある日、銘子が加入している保険会社の担当者から電話があった。

なんでも、『利率が下がるので、一度伺って説明したい』とのこと。

どれの利率ですか?と問うと『個人年金』のです、とお姉さんはおっしゃる。


2つ契約中なのでどれなのかな?と思いながら

『仕事が忙しいので、わざわざ来てもらわなくても、書面で説明してくれたらいいから』

と返答すると、電話口でお姉さんは『直接伺ってサインをもらわないといけないことに

なっている』としつこく云うので日時を決めたのだった。


『そんな説明にわざわざ…』つぶやきながら、銘子は目の前の

卓上カレンダーに印を入れた。


 そしてお姉さんとのランデブーの当日。

ま、忙しいから来ないなら来ないでいいっか、と銘子が思い出した

1時半にチャイムが鳴った。


『1時っておっしゃってませんでしたか?』

『え?1時半と私はメモしています』と、お姉さんがのたまう。

かばんをゴソゴソしてその手帳を見せようとするので

銘子はそれを制してスリッパを出した。


自分の勘違いかもしれないし、水掛け論なのでここはスルーということで。

華奢なお姉さんの後ろからはみ出るように一緒にいらっしゃったのは、

海千山千、って感じのマダム。


 『本日同行致しました、安心して託してください、の安託(あんたく)と

申します!』名刺を差し出された。保険会社にぴったりの珍しい名前だ…。

そして奇遇にも銘子の職場に同名の『安託さん』がいる…。

 

『うちにも同じ名前の安託さん、いるんですよ〜』と何となく

云いそびれて席に着く。隣の部屋で作業している安託さんが

聞こえたのか、少し反応しているのを感じる。


何となく、似たタイプだな…保険会社の安託さんの向こう側にうちの

安託さんが重なって見えた。


急に改まった口調で、保険会社の安託さんが云った。

『ワタクシどもがお伺いしたのには、3つの理由がございます!』

ひとつは、契約の数 × 一口で何かのキャンペーンに応募出来ること、

もうひとつも同じような加入手続きだった。


担当のお姉さんは大きな安託さんの少し後ろに控えて

(横に並んでいるのにそう見える)ニコニコ笑って頷いている。


『そして…』

 安託さんの声が固くなる。

『こちらの商品なんですが…』


そのとき、『安託さん!これなんですが!』と銘子の会社スタッフが

大きな声でこちらに向かってきた。

びっくりする保険会社の安託さん。その横をスタッフは素通りする。

隣の部屋で『何ぃ〜?』とのんびり問い返す、うちの安託さん。

 

『うちにも同じ名前の人、いるんですよ』苦笑いしながら

銘子が云うと、白々しい空気が流れた。


 気を取り直すように書類を出して、安託さんは説明を続けた。

『実は、こちらの商品の利率が10月1日をもちまして

下がることになり、もしご検討頂けるなら今のうちにご契約頂きますと、

かなり利回りのいい将来への貯金、と考えられるかと…』


 一旦、間を置いて彼女は続ける。

『こちらをご覧下さい。この一時金をお納め頂きますと、

60歳から10年間、毎年これだけの金額をお受け取りになれます…』


 雰囲気は完全なおばちゃんキャラなのに妙にネイルが可愛いなぁ…、

化粧ポーチがピンクのキティーちゃんの、とか持ってたりして!

書類をなぞるピンクの小花の爪をぼんやり眺めながら銘子は説明を聞いていた。

 

な〜んだ、新しい商品の勧誘で、契約済の利率が下がるんじゃないんだ。

これが今回の来訪のメインなのね。

電話口のお姉さんの説明では誤解してしまったけどな、と思いながら

銘子は頭の中で計算した。

 

ちょうど定期預金が満期になっていたのもあって、考えてもよさそうな

話だった。ちょっと大口だが、老後にはいいだろうと。

 

『お薦めした商品はとりあえずこの金額で設定しましたが

もっと色々な設定が出来ます』


『じゃあ見せてください』


安託さんが後ろのお姉さんに促すと、お姉さんは申し訳なさそうに云った。

『すみません…作ってきてません…』


 『ふっ』

銘子の鼻から息が漏れる。

通り一遍の説明だけして帰るつもりで、客がその気になるなんて

思ってなかったのがありありだった。


今から会社に戻り次第、それらの設定のご連絡致します!とお姉さんは強く云う。

『だいたい、どの位の時間にお返事くださいます?』と確認すると、

お姉さんは『すぐに』と更に強く云う。

だから、そのすぐに、ってのはどのくらいなのか具体的に知りたいんだけど!

そう思ったが、銘子は了承した。


これと別件に、少しだけ変更があるものの手続きをして欲しいとお願いした。


保険会社の提案をもらってから少し考えて、こちらから連絡をすると云うと、

利率は10月1日に変わるので、契約するなら早めに返事が欲しいと。

じゃあ、次の週明けの月曜に返事すると約束すると、

そのときに別手続きの書類も持ってきてくれることになった。


『では、書類の作成のこともありますので、当日の午前中に

電話で契約の有無のご確認させていただいてよろしいでしょうか?

そのほうが、スムースに進みますので』

安託さんが念を押す。お姉さん、にこやかに頷く。


帰り際に、お姉さんが『では次回お伺いするのは今日と同じ時間で

よろしいでしょうか?』と云う。

『いいですよ』

お姉さん、メモしながら『では…1時半に?』


何となく、すこ〜し気分が悪い。

『ええ。1時じゃなく、1時半ってことで』


そして一週間後の午前11時半。

お姉さんからの電話はない。

『午前中』は極端に云えば11時59分59秒までだろう。

小さな事だが、向こうから電話すると云ったのだ。


銘子の中でお姉さんへの『そんなになかった信頼』が、跡形もなく消えた。

あの日、後で連絡をくれた色々な提案の中でも

お姉さんが最初に『入る訳ないだろう』と高をくくった額を用意していたというのに。


午後1時20分過ぎ、お姉さんから『今から伺います』の電話。

1時半きっかりに彼女はやって来た。

銘子はスリッパを用意せず、玄関のカウンター越しに応対した。


怪訝な表情で彼女は『あのぅ…ご契約の件はいかがなさいますでしょうか?』

 

『今日、午前中にお電話頂ける事になってましたよね?それで契約書類作って

いらっしゃると、そちらが仰ったのではなかったですか?』


息をのむお姉さん。

『あの…電話はこちらへ伺う前にすることだと…メモしておりました…』

消え入る声で云う。

で、気を取り直してまた問うてきた。

『で、ご契約は…?』

 

『あのね。保険って、自分がどうしようもなく弱ったとき(病気)とか

困ったとき(事故)に給付なんかの相談に乗ってもらう訳でしょう?

今回の電話なんかちょっとしたことだけど、お約束の時間にないし、

こういう小さなことで信頼できなくなるんですよ。信頼出来ない方と

契約、できないですね』


顔色を変えるお姉さん。でももう遅い。


『ではお願いしていた別の手続きしましょう』銘子が云うと、

お姉さん、鞄をかき回した挙げ句に

『あの…誠に申し訳ないのですが…その書類、忘れてきました…』


泣きっ面に蜂。ドジすぎて笑いそうになる。

でもお姉さん。ちょっと抜けすぎ。

やっぱり契約しないで正解かもしれない。


『じゃあ、その書類、郵送してください。記入して送り返しますから』

『いいえ!すぐに取って返してお持ちします!』

『いいですよ。ほんとに。送ってください』

『いいえ!伺います!!』


慌てて帰っていったお姉さん。

私だったらどうするかな。

郵送するだろうか。


上司と一緒でも1人ででもいいから、契約書類作って

すぐにやって来てもう一度勧誘する根性あるだろうか、どうだろうな…と

思っていたら、お姉さんやって来た。

『先ほどは大変失礼致しました…これ、よかったらお使い下さい…』

 

その保険会社のキャラクター入り・ピンクのクリアファイル6枚だった。

これだったら何も持ってこない方がいいのにな、いや、実はこの

ファイルはすごく値打ちがあるんだろうか?銘子には分からない。


『では…手続きさせていただきます…』

カウンターの上で、書類の指示される箇所に記入していく。

『で、お客様、本日、保険証書はこちらにお持ちになってらっしゃいますか?』

そんなの事前に云われてないのに持ってきていない銘子は『いいえ』と答える。

『では、こちらにチェック入れてください』


そこは『証書を紛失した』欄だった。

紛失してないし。

お姉さん、連絡くれたら持ってきてたよ。

こういう手続きに証書が必要なのは当たり前なのだろうけど、

そんなのに慣れてないものに対しては事前連絡するもんでしょう?

失くしてもないのにこちらの不備です、とチェック入れろってのか?


お姉さんに問う気も失せて銘子はチェック入れた。

もう、どんな有利な商品も入る気がしなくなっていた。

 

『あの…私、どうも口で云っていることと違うことをメモしてしまうようで

本当に申し訳ありませんでした…』

そう云ってお姉さんは帰って行った。


その日の夕方、帰宅した銘子の携帯が鳴った。

『あの…失礼を承知でもう一度お願いのお電話させていただきました…』


銘子が黙っていると、

『あの…今日が契約の締め切りでして…』

今日が?締め切り?そんなこと聞いてなかったし。知らないし。

あくまでもお姉さんのノルマの都合でしかない話だった。


銘子は昼間と同じ『信頼をなくしたということ』を繰り返して話し、

そして同じ失敗を次の人にしないように気をつけてください、と

電話を切った。


銘子の自宅の住所を彼女は知っているし、そう遠くもない。

電話ではなく出向いてきたら、また話は変わったかもしれない。

上司に云われてしぶしぶ電話だけでも、という感じしか受けないのに

誰が考え直すというのだろう。


銘子は後日、違う保険会社の契約を済ませたのだった。


銘子の老後。

そんなに長生きするつもりない、と思いながら何やってんだろう。

クリアファイルは会社の女子スタッフに配った。

うちの安託さんは『ピンクだ!』ととても喜んでくれた。


ラジオから、大型の台風が近づいてくるので注意をするようにと

天気予報が繰り返し流れていた。


 

〜このお話は、ハックション、である〜

 

 

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2009年10月14日

山陰旅行編 その3

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愛の立ちくらみ劇場 ’09 山陰旅行編 その3

 

 

「ケーキセットでも食べるわ(それを昼食代わりにするつもり)」

 

渉がそう云うので

銘子がテーブルにあったメニューを見ると、そこには手書きで

 

『コーヒー¥262』とある。

 

すごい値段。

 

ショーケースの中のケーキも手作りというよりは、

(ケーキではなく)パン工場から仕入れて来たような感じがする。

 

「私は外の屋台でたこ焼きでも買うから、コーヒーだけでいいわ」

 

銘子がそう云うと、渉はケーキセット二つ(ホットコーヒーと

アイスコーヒーで)と別に銘子の分のコーヒーを頼んだ。

 

かなり長い時間が経った。

 

二組目の新婚さんの話も終わり、ゲームが始まったがコーヒーの

香りがしない。

 

「チンっ!」

 

電子レンジで何かが温まったようだ。

 

おばあさんはやっと注文の品を持って来てくれた。

 

『チン・コーヒー』にはなぜか湿気ったハッピーターンが一つずつ

添えられていた。

 

三人は無言でコーヒーを飲んだ。

 

律子はチーズケーキを一口食べてフォークを置いた。

渉は無言で自分の分のケーキを食べた。

 

こうして三人分の清算は、昨日の足立美術館でのコーヒー一杯分で

おつりがくる値段で済んだのだった…。

 

車に乗る前に銘子が屋台を覗いたが、焼いているお兄さんの手元の

たこ焼きの厚みが1cmもあったので買うのを止めた。

 

折角食べるんなら美味しいもの食べたいもんね。

 

「さ、どこ行こうか」

 

「このまま進むと萩を通るけど」

 

「ほな、萩に行こっか」

 

気を取り直して萩へ出発!

 

海岸線に沿って車は走る。

時折、海岸線にギリギリのところがあって、台風で波の高い時には

きっと道路が波で洗われるだろうと想像された。

しかし、それだけに海を眺めながらのドライブは最高だった。

 

三時のお茶の時間までに萩に到着した。

 

萩博物館の駐車場に車を停めて、いざ、散策!

 

至る所で『萩焼』の陶器が売られている。

観光客も多い。

 

日差しがキツい。

暑い。

 

白壁の路地を歩いていたが、なんせ暑い。

 

「休憩しよか」

渉が提案したので、営業中とあった喫茶店のドアを開けた。

その瞬間、中からおじさんの声が。

 

「入らないでもらえます?」

 

中には先客らしい四人連れが一組だけ。何でやねん。

先客も驚いてこちらを見ていた。

気を悪くして、黙ってドアを閉めた。

 

じゃあ、営業中の札、出すなよ。

 

ずんずん歩く渉の手にはもう車のキーが握られていた。

 

「もう、萩はいいの?」

 

「うん。もういい。もう絶対に来ない」

 

さよなら、萩。

 

車に戻り、ナビで宿の電話番号を入力する。

今夜の宿は、湯本温泉『大谷山荘』だ。

 

土曜の朝、朝日放送で放映中の旅番組で紹介されていた宿が

ここだった。放送されたのはここの別邸だが、そこの値段はぶっ飛び

だったので今回は本館を予約したのだ。

 

本館もとっても素敵だった。

今回の旅行は全て銘子が予約等を請け負ったが、渉のリクエストは

少し高くても『いい旅館』にしてくれ、とのことで、さらに

旅行期間が『シルバーウィーク』だったこともあって選ぶのに

骨が折れた。

しかし部屋に案内されるまでウェルカムドリンクを飲んでいた

ラウンジで満足そうに見回していた渉を見て、銘子は内心ホッとした。

 

部屋も風呂も食事も大満足であった。

しかし、なんせドライブ旅行となると運動不足でお腹が空かない。

そこへ豪華な食事なので胃が悲鳴を上げた。

貧乏性なので出された食事は出来るだけ食べようとしてしまう。

 

先付け、前菜、土瓶蒸し、お造り五種盛り、陶板焼き、唐揚げ、

小鍋、蒸し物、てっさ(お造り)、つみれ汁、炊きたてご飯、

漬け物、デザート。。。

 

荷物を持って移動しなくていい分、こういうこともあるのだなあ。

 

翌日の朝食はバイキングだった。

 

久しぶりにパンを食べる。

機械式だが一回ずつ豆を挽いて抽出するコーヒーが美味しい。

近くの牧場からの牛乳があったので、それでカフェオレにする。

 

一瞬和食にしようかと迷うくらいの料理の種類だった。

しかし銘子は胃と相談して、軽くサラダとパンにした。

昨夜、動けない程に食べた後、生ビール1杯ですっかり酔った

渉が早々に寝てしまい(この日は別に部屋を取った)、

前日ほとんど寝てなかったこともあって、静かな部屋で

つい寝てしまったのだ。それも午後9時に。

 

連休の渋滞のことを考えて、早めに帰路につくことにして

(なんせ、山口県から帰るんだし)

ちょこっとだけ近くを観光することにした。

 

ここ長門には青海島(おおみじま)というところがあって

(橋で結ばれているが)この島が『海上アルプス』と云われる程

様々な形の岩が点在する景勝地なのだ。

ここを観光船で一周してみることにした。




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午前8時40分の始発、乗船する。

 

すんごいレトロな船。

窓は木枠だ。

それも引き戸。



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もしもの時、本当に使える救命胴衣は人数分あるのだろうか。

一抹の不安を胸に、通路を挟んで進行方向『左側』に三人が座った。




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ゆったり船出するが、波が少しあるのか岩のトンネルはそのせいで

くぐれないと連続パス。テープに録音された案内が船内に流れる。

 

「皆様、右側に見えますのが…」

 

「次に右に見えて参りますのが…」

 

「右、前方に見えて参ります…」

 

ポイントは全て右側に固まっている。

よく考えれば、船は島を時計回りに進むのだ。

つまり、島をぐるりと右回り。

通路を挟んで右に座る人の頭越しの窓に見える岩を見るしかない。

 

銘子は写真を撮るのは諦めてぼんやり海を眺めることにした。

渉は諦めきれずに、右座席の乗客の頭越しにデジカメを差し出して

撮っていたが…。

 

帰りはゆっくり中国自動車道を走って何度もサービスエリアで休憩しながら

家へ向かった。旅行中、全く渋滞に遭わなかったのだが、最後の最後に

『赤松』出口前からぴったり停まってしまった。

それが午後4時半過ぎのこと。よくぞ手前のサービスエリアで

トイレ休憩しておいたこと!

そこから『宝塚』出口まで2時間近くかかった。

 

さすがにシルバーウィーク。隣を走る車のナンバーがすごい。

『湘南』『釧路』…今からどこまで帰るんだろ〜。

多分、『吹田』辺りでもう一回すんごい渋滞があるみたいだし…。

うちは『宝塚』で降りるからいいんだけど、お疲れ様〜!

 

午後7時。マンション前で降ろしてもらって旅行は終わった。

たまには親子水入らずもいいもんだ。

 

多少の不満はあったが、でもそれも全て旅のネタとして

思い出に残る。70代コンビの両親といつまでこうしてられるか

分からないけど、また行けるといいな、銘子はそう思った。


おわり


〜〜このお話はフィクションというよりもハックションである〜〜


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2009年10月13日

山陰旅行編 その2

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愛の立ちくらみ劇場 ’09 山陰旅行編 その2

 

 

 

それはチェックインして部屋に入った際の仲居さんとの話に戻る。

 

砂時計ミュージアム、ってここからどのくらいかかります?」

 

渉が何気なくお姉さんに尋ねると、「はぁ、2時間ですね」と

こともなげに答えた。

 

2時間???」

 

この旅行に行く前に、渉は孫の風香に頼まれたのだ。

 

「おじ〜ちゃん、旅行で島根に行くって?

 だったら砂時計買って来てっ!」

 

島根を舞台にした漫画『砂時計』が人気となり、その後テレビドラマに、

そして映画化され、すっかり観光名所になっているのだ。

そして映画の中で重要な小道具として登場したのが、

砂時計ミュージアムの『一分間砂時計』。

ここでしか手に入らない。これを風香はおじいちゃんの渉にねだったのだ。

銘子は知らなかったが風香はこの漫画を全編持っているらしい。

はまってたのね〜。

 

「その『一分間砂時計』は人気なんだって。

 手作りで生産が限られていて、売り切れることもあるらしいよ。

 ガイドブックにそう書いてあるわ」

 

旅行前に銘子は、ここのミュージアムへのアクセスを調べるように云われて、

そう渉に教えたっけ。

 

どうもそこへは国道で一本道だそうで、混めば動かないし、

他の逃げ道はないそうだ。

 

「ミュージアムの開館時間はいつや?」渉が銘子に聞く。

 

「えっと…9時やって!」

 

「明日の食事時間は何時からいけますか?」

 

今度は仲居さんに渉は尋ねる。

 

「はい。7時からとなっております」

 

「じゃあ、7時にお願いします」

 

「かしこまりました」

 

仲居さんがふすまを閉めて部屋を出て行った。

 

「お父さん、明日、何時にここ出るの?」

 

「…7時半出発やな」

 

「え?」

 

2時間かかるんやろ。砂時計が売り切れたらあかん」

 

可愛い孫の為、おじいちゃんは頼まれた砂時計を

何としても獲得しなければならなかったのだ!

 

7時に食事で7時半出発だったら、朝風呂にも入りたいし、

支度を入れたら…ということで5時起きとなったという訳。

 

話は元に戻り、無事に9時過ぎにミュージアムへ到着した。

 

車を置くなり渉は大股で歩き出した。

 

「おと〜さん、そんなに急がなくても!」

 

聞きゃ〜しない。ずんずん父親の背中が小さくなる。

 

「可愛いねんなぁ、風香と真央が」

 

律子が感心してつぶやいた。

 

やっと渉に追いついたのは入場券売り場だった。

すでに3枚購入して焦れている。

 

追いつくと同時に、渉は入り口のお姉さんに入場券3枚をかざして、

銘子らを指差した。

「あの2人とで3人です!」渉は館内へ入って行った。

 

一刻も早く砂時計を買いたいらしい。

 

急ぎ足で館内を探す。

ミュージアムショップは見つからない。

館内案内図にもない。

 

焦れた渉は入り口のお姉さんに尋ねた。

 

「ああ、ショップは外の『ふれあい交流館』にありますぅ〜」

 

「一旦外に出て再入場できますかっ?」

 

渉が入場券をかざして尋ねた。

 

「はい」

 

その声を背中に、もう渉はミュージアムを出ていた。

 

ショップには目当ての砂時計が展示してない。

レジのお姉さんに尋ねると

 

「はい、それはこちらで承ります」

 

それはレジの奥に積み上げられていた。

 

「で、一分計と三分計とがありますが、どちらにされますか?」

 

「えっ?」

 

絶句する渉。

 

横から銘子が「一分計って云ってたからそれでいいんじゃない?」

 

やっと風香と真央の分のふたつをご購入。

 

めでたし、めでたし、と思ってふと見ると渉が携帯で電話している。

風香に電話して、ほんとに一分計でいいのか確認しているようだ。

 

ほんとに…もう…じいちゃんたら。

 

もちろん、一分計でないと『意味ない』らしく、それでOK

 

ミュージアムに戻って砂時計をじっくり鑑賞する。




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世界最大級の、『一年計』というのがあるのだ。

大晦日にひっくり返すそうだが、どのタイミングで返すのだろう。

クルッと軽く返すような大きさでもないし(だって砂が1t入ってる)

…気になるところだ。

 

余談ではあるが、この『一年計』(砂暦)は

竹下元首相の『ふるさと創生事業』の一億円で作ったとか。

 

ここ琴ヶ浜の鳴き砂(ショップの見本品)を

キュッキュキュ〜っと鳴らして出発!

今夜の宿は山口県、湯本温泉なのだ。

日本列島の背中というか、山陰本線に沿って国道9号線をひたすら走る。

 

「ねえ、お昼はどうすんの?」

 

旅館での朝食は想像に違わず、ものすごい量だった。

渉は前の晩にフロントに連絡して、一人だけ『鯛めし』というのに

変更してもらっていた。

 

松江藩主松平公、考案の家伝料理で、あったかご飯に鯛のそぼろや

薬味、諸々をのっけて秘伝のだし汁をかけて食べるという『鯛めし』。

 

「旨いっ。折角ここまで来たんやからこういうの食べとかんとな」

 

銘子は律子と目を合わせて肩をすくめる。

 

普段、渉は家でほとんど、いや決して『魚料理』を食べない。

にぎり寿司は食べる。刺身も新鮮なものだと食べるが、干物や焼魚等は

絶対に箸を付けない。しかしこうして旅で訪れた宿では喜々として食す。

 

「お父さん、お茶漬けもあんまり好きじゃないのに…美味しいの?」

 

「うん!」

 

「お父さん、そしたら家でこんなん作ったら食べる?」

 

「食べへん」

 

「…なんでやねんっ!」

 

結局、丼に軽く3杯ご飯を食べていた渉には敵わないが、それでも

律子も銘子も昼近くになってもまだ満腹だった。

 

助手席でぼんやりガイドブックを見ながら銘子が云った。

 

「ちゃんとしたお店に入らずに、適当に何か買って、

 んで海岸沿いに車停めて、ってのはどう?

 これから先に行くと、自然派のパン屋さんてのがあるって」

 

「それにしよう!」

 

全員賛成。

 

しかしその店が見つからない。

 

ずっと国道を走っていたからサービスエリアでのトイレ休憩もなかったので

徐々に全員『野の花を摘みに、』に行きたくなってきていた。

 

「そこのコンビニで聞くわっ!」

 

ポプラの駐車場に停車。渉はトイレに直行。

 

銘子が店員のお姉さんにパン屋の名前を云って尋ねると

 

「ああ、新しくできた、あそこね!」

 

そう云いながらレジの方へ来るように手招きした。

そこにあったメモ用紙にお姉さんは地図を書いてくれた。

 

「ここ、ポプラ。んで方角は関係なしで書くけどいい?」

 

結局、近所でも有名なパン屋さんを3件教えてくれた。

とっても親切。

 

全員トイレを借りたので、缶コーヒーとお菓子を買って車に戻った。

「3つ教えてもらったよ。まずね…」

 

「もういい」

 

「え?」

 

「国道に戻る」

 

折角お姉さんが教えてくれたのに!渉の気が変わったようだ。

ま、よくあることだが。

 

ふと銘子がお姉さんが書いてくれたメモを見ると、それはコピーの裏だった。

『ポプラ**駅前店、前年売上/当年売上/前年対比/構成比』の一覧表。

いいのかな〜?ま、数字だけで項目名はなかったけどね。

 

そのまま走り続けて適当な『道の駅』に停まる。

 

渉がさっさと入って行ったのは『手作りの店**』と看板にあった店。

扉を開けて入ると、すぐにショーケースにケーキとなぜか和菓子が

並べて陳列してある。ショーケースの脇に一つだけテーブルと椅子があって

そこでイートインできるようだ。

 

折り紙で作った手毬が吊るされていて、おばあちゃんは店内のテレビで

『新婚さんいらっしゃい』を見ていたようだ。

 

嫌な予感。渉も「しまった…」という表情。

だったら…座っちゃったけど、出ればいいのに。

 

「お父さん、ここでどうするの?」


<つづく>



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2009年10月12日

山陰旅行編 その1

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愛の立ちくらみ劇場 ’09 山陰旅行編 その1

 

 

シルバーウィークの初日、午前6時。

銘子のマンション前に父親の渉が運転する白のセダンが

横付けされた。さあ、今日から二泊三日のドライブ旅行である!

母の律子は後部座席にスタンバイしていた。

ナビのナビに加えてナビがカバー出来ない部分の地図検索は、

機械音痴で地図の読めない律子には無理なので

銘子が助手席で担当する。

 

まず目指すは安来にある足立美術館だ。まずナビに登録する。

 

シルバーウィークの初日ともなればものすごい渋滞を想像していたが

早朝ということもあって車の流れはスムーズである。

中国自動車道から米子自動車道に入る。山の緑がまぶしい。

 

高速道路を利用する利点の一つにサービスエリアがある。

『頻尿一家』と自称する銘子家族はとにかくトイレが近い。

さすがにサービスエリアは早朝にかかわらず混み合っていた。

 

駐車スペースには、車の中で泊まったのか、

毛布にくるまって眠っている家族連れも多く見られた。

 

こうしてこまめに休憩しながら、無事に開館時間を少し回った頃に

美術館に到着した。

 

入館料は¥2,200。もちろんリサーチ好きな銘子は

HPで『割引入場券』をプリントアウトしてきている。

これで一人¥200の割引となる。3人で¥600浮くなら

コーヒーの一杯でも飲めるではないか!

銘子ちゃん、エラい。

この美術館の庭園が何よりも楽しみだった渉が歓声を上げる。

天気のよいのもあって、緑が映えて美しく手入れされた庭園が

目の前に広がった。

 

まず休憩を兼ねて館内の喫茶室でコーヒーを飲むことにした。

 

『喫茶室翠』

 

重厚な室内。庭に面した大きな窓からは美しい庭園を臨むことが出来る。

 

 
 

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コーヒーにはここの庭師さんが焼いた『竹炭のスプーン』がついてくる。

 
一杯¥1,000



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入場料を浮かせた金額では飲めない。

ま、ソファーにゆったり座って庭を眺めながら飲む料金も入ってのことと

云い聞かせていると、渉が竹炭のスプーンでぐりぐりコーヒーを混ぜている。




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「あれ?お父さんもう一口飲んだの?」

「いや。今から」

 

竹炭のスプーンで混ぜることによってコーヒーがまろやかになる、

そのふれこみを確かめるなら、先にそのまま何もしないで飲んで

その後でかき混ぜてみて違いを楽しむもんでしょ〜!

 

ぐび。渉が一口コーヒーを飲む。

 

「全然分からん」

 

そりゃ〜そうさ。始めから混ぜてりゃぁ違いは分かるもんも分からん。

まったく…元々説明書を読まない性格だから仕方ないけど。

 

とぶつぶつ云いながら銘子はまず何も入れないコーヒーを口に含む。

少し酸味のある豆のようだ。

次に例のスプーンで混ぜてみて口に含む。

…まろやかになった…気がする。

 

銘子の舌も所詮その程度のもんである。

 

横山大観のコレクションが世界一とかで作品の展示が多かったが

銘子には大観の『落款』の変遷が興味深かった。

 

展示物を見ながら庭を見ながら館内を巡り、昼時となった。

夕食は旅館でだから、きっとヘビーなことになるだろうし、

それでなくても車での移動で運動しないから昼は軽くいこう!ということで

名物の『出雲そば』に満場一致した。

 

美術館の駐車場の一角にある蕎麦屋が有名だとかでそこへ勇んで行く。

 

スタミナそば、というのがここの名物らしいのでそれを注文する。

 

すぐに運ばれて来た、それは温かい汁蕎麦にエビの天婦羅ととろろと

生卵がのっかっていた。




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「もしお出汁が薄かったらこれ入れて下さいね〜」

 

おばちゃんがどんっとテーブルに置いたプラスティックのポットは

しっかり汗をかいていた。

つまり、冷蔵庫に入れていたものを出したのだ。

 

熱いお出汁に冷たい汁を???

 

熱いものは熱く、冷たいものは冷たく頂く信条の銘子には許せないことだが

猫舌の人には嬉しいかもしれない。

 

「冷たい…それに…美味しくない…」

 

それでなくても食の細い律子がすぐに箸を置いた。

 

天婦羅は揚げたてではなく、いつ揚げたか分からない冷たいもの。

そんなに熱くない出汁に冷たい天婦羅ととろろに生卵。

蕎麦にはコシがあったが本来熱々をすすりたかった銘子はがっかりした。

割子蕎麦を頼めばよかった。

 

普段、麺食いの銘子一家であるのだが今回は残念。

三人ともがっかりして店を後にした。

 

さあ、気を取り直して次の目的地、『出雲大社』に向かうぞ!

この日の宿泊先は『玉造温泉』なので安来から松江市内に入り、

宍道湖の北側を走り出雲大社へお参りし、

宍道湖の南側を通ってホテルに向かう行程とした。

 

天気は少し曇りがちになったが、たまに雲の切れ間からのぞく光が

湖面に反射して美しい。車は快調に走る。

 

昼下がりの出雲大社到着。

 

ここでは『二礼四拍手一礼』で、さい銭を入れ、90度の礼を二回、

四回手を打って願いことをしてまた90度の礼をするとか。

 

現在、『平成の大遷宮』で屋根の葺き替え工事が進められている。

折角だから両親が大遷宮の寄付を(一口千円)した。

この社殿のすべてを『檜皮葺き』にするって気の遠くなる話だ。

60年に一度行われているそうだ。



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仮拝殿でお参りし、でかいしめ縄(1.5t)を撮っていると渉が

さっさと帰ろうとする。

 

「お父さんっ!まだっ!神楽殿(かぐらでん)にも行くのっ!」

 

大声で呼び戻す。

 

270畳の神楽殿に合わせたしめ縄は長さ13m、胴回り9m、重さ4.5t

立派なもの。このしめ縄の底面(直径2.5m)の断面に硬貨を差し込もうと

子供達が何度も失敗しながら投げていた。何かのご利益があるのかな。





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一度でささると、もう一度出雲に来られる。

二度目でささると幸せな結婚が出来る。

…ってトレビの泉と違うって。

 

疲れのでないうちに宿に向かう。

佳翠園 皆美

気持ちのいい応対で好印象。

でも何であんなに細かい砂利をあんなにたっぷりエントランスに

敷き詰めるのだろう。車から玄関まで、ヒールが沈むは、

荷物のカートが沈んで転がらないは、これだけは不満に思った銘子だった。

こんなだったら固い通路をどこかに通しておくべきだよ〜。

 

早いチェックインだったので食事前にゆったり入浴し、

律子と銘子は別室でマッサージを受けてみた。

銘子を担当したおねえさんは銘子の肩こりに四苦八苦していたが、

少しでも凝りがマシになって銘子は大満足。

律子が試したのは生まれて初めてのフットマッサージ。

足裏だけのマッサージでどうして体中がぽかぽかするのか不思議そうだったが、

これも大満足。

 

係のお姉さんの誘導で食事会場に案内された。

 

用意された食卓に一枚の和紙があった。

 

『初秋の空 美しく晴れわたり 君の誕生 祝いぬるかな 女将』

 

予約時にちょこっと知らせておいたのをちゃんと覚えてくれてたのね。

今日は父、渉の70回目の誕生日だった。お祝いのグラスワインは

飲めない両親の分まで銘子が頂きました。うふ。

 

しか〜し。

自分の誕生日だから、とチェックイン後、部屋で宿の案内を読んだ渉が

宿が準備した料理の他に2〜3品追加注文していた!


それを思い出し、目の前に並んでいる料理だけで銘子は少し目眩がした。

 

「食べられるんかいな…」

 

しかし、旅館の料理ってなんでこんなに多いのだろう。

食前酒、先付け、前菜、温泉水を使った和牛・海鮮・野菜の蒸し料理、お造り、

更に四品からいずれか一品選ぶ料理、松平不味公献上品の『岩のり』を使った蓋物、

炊き込みご飯、留椀、香の物、デザート。

 

これにまだ島根和牛のステーキとアワビのステーキに車エビの焼き物を

頼むんだから目眩もするだろう。

 

銘子の家族は頻尿一家でもあるが、早食い一家でもある。

 

家族の中で酒を嗜む銘子を除いて、両親は殊の外食べるのが早い。

その早さに合わせて飲み食いすると、てきめんに悪酔いする。

なので銘子は意識してゆっくり食すことにした。

 

仲居さんがサービスしてくれるペースもあって、

割とゆっくり食事することができた。

かなりの食べ過ぎの状態で館内の土産物を物色し、部屋に戻る。

それでも食事開始から2時間もかかっていない。

 

「安来節、見に行こっか」

 

律子と銘子がマッサージを受けてる間に、部屋で館内と周辺案内の冊子を

熟読した渉が提案した。

 

近くの温泉施設で『安来節ショー』なるものが行われているそうだ。

 

浴衣に羽織でふらりと出かける。入場料は¥500

折角だからと最前列に陣取る。入場者は銘子の家族を含んで7名。

舞台に設置された大画面テレビで、この地方の観光地や名産品を紹介する

ビデオが流れている。開始時刻の20時を回ってもまだ始まる気配はない。

 

まあ、7人相手にやる気も出ないわなぁ…とは思うものの、紹介ビデオの

『宍道湖では…』の台詞を聞くのが5回目となると、さすがに焦れて来た。

ふと見回すと席はほとんど埋まり、満席状態になっていた。すごっ。

80名は入っているかな。

 

やっと始まった。

 

民謡を歌う人、三味線の人、鼓を打つ人、ダンサー…いえ、舞う人2名。

 

鬼瓦のようなおばちゃんとゴリラのようなおばちゃんのコンビの

「あ〜あ、しんど」「はいはい、いきまっせ」ってな怠そうな雰囲気に

一瞬引いてしまったが、何と踊りが上手い。



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最後の安来節ショーをもって公演は終了した。

踊るおっちゃんは(さっきまで鼓を打っていた)安来節の『師範』だそうで

さすが!おっちゃんの親指がほんとの『どじょう』に見えた!

 

お土産に日本手ぬぐいもらっちった。

(安来節のイラスト入り)

 

下駄をからんころん鳴らしながら宿に戻る。

 

もう一度風呂に入りたいところだが、

さっさと寝る準備をしている両親に合わせて

横になっていたら銘子も寝てしまった。

未明に、ものすごい地鳴りのような渉のイビキで起こされるまで。

 

夜明けまで渉の大音響のイビキと、隣でかすかに伴奏する律子のイビキとで

完全に眠れなかった銘子だったが、5時過ぎの朝風呂でしゃっきり目が覚めた。

 

何で5時起きだったって?


<その2へ続く>




posted by Avril at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年08月29日

自分へのご褒美

愛の立ちくらみ劇場『自分へのご褒美』編

(今回の写真は携帯のなのでちょっと画像が荒いかも!)


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午後8時、舞子駅で銘子は志保と落ち合った。
今夜からゆったり一泊の
『自分へのご褒美ツアー』なのだ!

駅から徒歩でホテルへ向かう。

仕事帰りのままの志保だが顔はもう
すでに休日モードにゆるんでいる。

銘子は一旦自宅へ帰り、もう完全遊びモードの
様相である。

まずはチェックインしてちょっと遅い夕食である!


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明石大橋の夜景を臨む席に案内された二人。
なぜか横並びのロマンスシート状態。
ちょびっと照れる。
何でやねん。

まずはビールで乾杯。

すぐに前菜の蛸の甘辛煮が運ばれて来た。


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柔らかく美味しく炊き上げられている。
う〜ん。満足。

続いて刺身だ。まぐろと鯛と烏賊の盛り合わせ。


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あっという間にビールを二杯飲んだ銘子は
泡盛へスライドする。

だってレストランと部屋は同じ階。
ほふく前進ででも帰れるんだも〜ん。


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淡路名物の『鱧鍋』が運ばれて来た。

豆腐とタマネギと三つ葉が入っている。
薄い出汁にしっかり旨味が出ている。

出汁ごと取り分けて、そこへ
すだちを絞り、小口ねぎと土生姜の
すりおろしを入れて頂くのだ。


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ああ。旨い。今度家でやってみよ〜っ!
銘子は心に誓った。

次は寿司の盛り合わせ!


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どれを食べても美味しい。

志保は芋焼酎のソーダ割り、次に水割りを
銘子は泡盛の次に芋焼酎のストレート、そして
最後に梅酒の水割りを頼んですっかり酩酊状態。

「銘子さん、お眠?」

「あ。うう…」

志保に云われて我に帰る銘子。

「そろそろ部屋に戻ろう!」

酩酊状態の銘子は顔と目を取ってさっさと
ベッドに入った。

志保が風呂から出て来たのもカーテンを閉めてくれたのも
全く知らなかった。まあ、いつものことである。



このホテルの名物は朝食のルームサービス。


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部屋に備え付けのパジャマのまま食べられる。
外は急に暗くなって土砂降りの雨となった。

その雨を見ながらとる朝食もまたこれ、
オツなもんである。

パニーニにハムとチーズと生野菜。
ヨーグルトにオレンジジュースに
熱いコーヒー。
自家製マヨネーズもついていた。

さあ、部屋をチェックアウトして
メインイベントである!

まずはホテル内の岩盤浴へ。
受付でタオルが3枚と作務衣の入った
袋を渡される。

ロッカールームで作務衣に着替える。

「3枚あるけど、どのタオル持って行けば
いいんだろ?」

「さあ、これでいいんじゃない?」

二人は適当なのを1枚とペットボトル
(ミネラルウォーター)を持って
浴室へ向かった。

係員のおねえさんが待っていた。
説明が始まる。

「えっと、まず特大のタオルを岩盤に…
 あれ?タオルは?」

「あ。ロッカーです。取ってきます」

ちょっとおねえさんが、イラっとする。

ロッカーに戻りながら志保が云う。

「確かさあ、受付で作務衣に着替えたら
 袋ごと持って岩盤のことに行けって
 云ってたよね」

「あら、そうだっけ?」

耳まで休日になっている銘子は
そんなこと知ったこっちゃない。

先客はおばさんが二人いた。

岩盤にタオルを敷く。

ちょっと湿った嫌なニオイがする。
でも我慢するしかない。
だってこれしかタオルはないんだもん。

腹這いになって5分。
その後、裏返って休憩して、を
繰り返すのだ。

15分寝そべって、一回目の休憩に
向かおうと銘子が志保のブースを覗くが、
…いない。

あれ?

休憩所に向かおうとすると、
志保が浴室に戻って来た。

静かな浴室は私語は禁止されているので
志保と銘子はそのまますれ違った。

休憩所で銘子が壁に貼られた
『岩盤浴のしかた』を見ると
『腹這い5分、上向け10分』とあった。

「あれ?15分じゃないの?」

銘子の勘違いだった。
このままいくと5分ずつずれてしまう。
なので、銘子は二回目の休憩は志保に合わせた。
休憩所には先客のおばさんがいた。
おばさん達は常連らしく、5分&10分の
リズムは完全に無視して好きな時間だけ
寝そべっているようだ。

さっきなんか、横向きになって
足上げ体操してたもんな。

「あんたら汗かいてる?」

「はい、しっかり出てます」

「出てるように見えへんけどな〜」

そう云いながらおばさん達は志保と銘子の
身体をばんばん触ってくる。

かなりフレンドリーなおばさん達である。

腹這いと上向けと休憩の最後の4セット目の
残り5分となったとき、休憩からさっきのおばさんが
帰って来た。

「あと5分!5分だけ我慢しよう!」

「ひゃ〜、暑っ!」

先程までの静けさはどこへいったのだろう。
おばさん達は話し続ける。

「だからぁ。**さんが云ってたけど、
ここのアンケート、いちいち書かへんでも
いいらしいよ」

「へ〜っ!そうなん?」

「でも私、この間書いたってん!『赤のボールペン』で」

「へ〜っ!」

「支配人に渡して頂戴、ってね!」

大爆音の声が浴室に響き渡る。
まだまだ話は続くようだ。

銘子が、

おばさんの足の裏に『赤のボールペン』で
『うるさい』と書いたろか!

と思い出したとき、志保がすっくと
起き上がり、爽やかな、かつ毅然とした声で云った。

「すみませ〜〜〜ん。もう少し
静かにして頂けませんか〜?」

少しの沈黙があって、おばさん達の
小さな声がした。

「すみません…」
「すみません…」

分かればいいのだ。
って、何でそもそも急に大声で
話しだしたのかは未だに分からない。

おばさんの一人は、年下の者に注意されたのが
気に入らなかったのか、

「ああ、暑っ…」

と小さな独り言をいい続けていた。

5分経った。

本当は岩盤浴後の肌は汗を拭き取るだけでいいのだが
二人はさっとシャワーを浴びた。

パウダールームで顔を作る。

だってこれから館内のイタリアンレストランで
ランチなんだもん!

「銘子さん、いつもはよく水飲むのに
ペットボトルの水減ってないやん!」

「ふふふ。当たり前やん。
 ビールのためよっ!」

岩盤浴。その後のビール。

身体にいいんだか悪いんだか分からない。

でもまずはこれがないと始まらないのだ! 


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まずはトマトの冷製スープ。
酸味が程よい。


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前菜は白身魚のエスカベッシュと
冷たいローストビーフのサラダだ。


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次はまほろばトマトというのを使った
爽やかなサラダ。


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この頃にはすでにビールから
スパークリングワインにうつる。


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穀物パンとフォカッチャはオリーブオイルで。


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志保がチョイスしたのは
『野菜たっぷりのリゾット』


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銘子は『ミートソースのパスタ』である。
なぜか白のグラスワインを追加注文する銘子だった。


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デザートは三種類。
ティラミスにチョコレートケーキ、
そしてアイスクリームだ。


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仕上げはエスプレッソ。
志保はホットコーヒー。

「コーヒー飲むと利尿作用あるから
トイレに行っとかないと!」

「じゃあ、トイレに行ってから
行きますか!」

どこに行くかって?

館内にあるサロンでエステを
予約してあるのだ。

ふっふっふ。

なんて豪華な一泊二日。

おいしいお寿司食べてしこたま飲んで
ルームサービスの朝食に岩盤浴。
イタリアンのランチにエステ。

こんなことしていいんだろうか。

いいんです。
だって色々頑張ってるんだもん。
んでもってまた、頑張るんだもん。

色々なことに感謝しながら
二人は至福の時間を過ごしたのだった。

ホテルを後にする頃には
日は西に傾きつつあった。


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「楽しかったね〜」

「また来たいね」

「頑張って、また来よう!」

こうして『超豪華・自分へのご褒美』の
一泊二日が終わったのだった。。。

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2009年07月04日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 10

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第十章 どたばたチェックイン

昨夜のシャンパンが少し残っていた。
ううう…
もともと酒に強くないけれど、
昨夜は一晩で一本飲んじゃった。

パッキングしなきゃ…

頭を働かせるにはまだ頭の芯が酔っているので
さっとシャワーを浴びて化粧し、身支度して
すぐにでも出かけられる状態にした。

おのずと荷造りは簡単になる。

だって、あとは全部詰め込んだらいいんだも〜〜ん。

パッキングのことをあまり考えずに手当り次第に
土産物を買っていたのでスーツケースが一杯になっても
まだ入れるものがある!

仕方ないのでBHVで買ったショッピングバッグに
適当にポイポイ放り込んで…いるうちにチャイムが鳴った。

部屋の引き渡しに先日のAikoさんが現れた。

スーツケースを閉めようとその上で飛び跳ねていた銘子は
上気した顔で彼女を迎えた。

「少し…早かった…でしょうか?」

遠慮がちにAikoさんが云った。

「いえっ!」

額に汗をにじませて銘子は答えた。

Aikoさんの手を借りてとりあえずスーツケースは閉まった。
閉まってしまえばこっちのもんである。

「ベルトは…?」

忘れて来ていた。彼女はこのままベルト無しでいくと
運搬中に投げ飛ばされてぱっくり開いてしまうことが
たまにあるという。

不安の気持ちを抑えながら鍵の受け渡しを行う。
部屋の点検を終えて鍵を返す。

ありがとう。一週間、お世話になりました!

マンション前には空港まで送ってくれる日本人が
待っているそうだ。

スーツケースを転がしてマンションを出るとそこに
いたのは女性だった。勝手に男性を想像していたので
銘子は驚いた。

車の中で名刺の交換をし、なぜか会話が弾んだ。
空港までノンストップの会話の応酬。

彼女はIkukoさんといい、在仏17年となるそうだ。
ここで生活し、子育てもしているとのこと。
銘子には想像を絶する状況だ。
すごい!

鍵の受け渡しを代行してくれたAikoさんも写真家として
Parisで頑張っていた。

異国で頑張っている彼女達、もっと沢山の日本人、
頑張れ!

と思っていると車はシャルルドゴールの2Fに到着した。

「重いですね…」

スーツケースを下ろしてくれたIkukoさんが云う。

「大丈夫です!だってビジネスですもん!」

「あ。ビジネスだったら大丈夫ですね」

今回は行きはエコノミーだが、帰りはビジネスに
マイルを使ってグレードアップしておいたのだ。
それもあって、あまり考えずに荷物を増やしたところがある。

「で、その袋にはまさか食料品は入っていませんよね?」

「え?」

元添乗員だったIkukoさんが云うには機内持ち込みの荷物に
食料品が入っていたら、没収される可能性があるとのこと。

うわっ!入ってるわ。

「軽い服とかと入れ替えた方がいいですよ」

「分かりました。ありがとう!」

空港内に入って、端っこに行ってスーツケースを開けてみる。
先程、Akikoさんに手伝ってもらって無理矢理閉めたからか
鍵がおかしくなっている。なかなか開かない!!

どうにか開けて荷物を入れ替える。

スーツケースの上で飛び跳ねて蓋を閉めようとしていると
どこからかおじさんが走りよって来てくれた。

「大丈夫か?閉まるか?」

「はい、ありがとうございます…」

「フランス語話せるのか?」

「あ。少しだけ」

「そうか!それはいい!
 よし!これで大丈夫だ!」

「ありがとうぅうううっ!」

何がいいのか分からないまま、
おじさんが去った後よく見てみると
やっぱりちゃんと閉まっていない。
やはり鍵が壊れてしまっているようだ。

また開け直してもう一度無理矢理閉めた。
銘子は飛び跳ねただけでなく、恥ずかしい思いもあって
かなり上気していた。

ふと視線をあげるとそこに不思議な機械があった。

「あ」

スーツケースをビニールでコーティングするというか
ラップでぐるぐる巻きにして熱を加えてぴっちり
保護するのだ。

6ユーロ。

何となくAikoさんの言葉が脳裏でよみがえる。
あ。スーツケースがはぜる様子が浮かぶ。

「すみません…」

そこにいたお兄さんにお願いする。

お兄さんが納得するまでなぜか4回ほど
ビニールをかぶせてはコーティングしてくれた。

これなら飛行機の格納庫から落ちても
大丈夫なのではないか???

チェックインカウンターに向かった。

銘子の番が来てスーツケースを載せた。

「あかん。無理」

「えええっ?」

見ると計りは34kgをさしていた。

あ。ビジネスクラスの預かり荷物のマックスは30kg。
でも前回、アワードマイル
(貯まったマイルを全部つぎ込んでチケットにあてた)で
ビジネスだった時、32kgでも大丈夫だったではないか!!

「あなたの場合は20kgまでです」

銘子のEチケットをプリントアウトしたものを指差して
係のおじさんは云う。

確かに20kgと記載されている。
しかしそれはまずエコノミーのチケットを取った時の
ものであり、それを元にグレードアップしたのだから
ビジネスの許容量30kgは記載されているはずはない。

「私はビジネスでしょ?なんでダメなの?」

そこからねばる銘子だった。ぴっちぴちに
コーティングされたスーツケース、開けるつもりはない。

おじさんは首をすくめるばかり。

「日本人、呼んでっ!」

銘子は最終手段に出た。
交渉するには言葉が続かない。

おじさんは電話をかけ、相手としばらく話すと
そのまま受話器を銘子に差し出した。

そのおねえさんに、銘子は無理矢理ビジネスの30kgは
納得してもらった。しかし、おねえさんはあと2kgを
譲らない。

「32kgまではなんとか許容範囲内なんです。
 34kgはどうしてもだめなんです。2kgどうにか
 減らして下さい」

労働組合の決め事とか何とか云っていたが
14kgの荷物をスーツケースから出すのと2kg出すのとでは
大違いだ。

銘子はまたさきほどのおにいさんの機械のところに戻った。

「2kg減らさないといけないの」

おにいさんは肩をすくめながら
黙ってカッターナイフを差し出してくれた。

皮を剥くようにスーツケースからコーティングを剥がし、
カッターナイフを返すとおにいさんは黙って
そのコーティングも受け取ってくれた。

もうすでにチェックインは済んでいるので、列に並ばずに
横から入れと云われていたのでそのまま空いたところに
銘子はスーツケースを持っていった。

31.8kgだった。ぴったし。
30kgを越えていたので係のおねえさんはまた銘子に
何か云おうとした。
すかさず銘子は隣のブースのさきほど押し問答した
おじさんを指差す。

おじさんが二言三言話して、おねえさんはすぐに
納得。そして見事にスーツケースは格納されていった。

ホッとした銘子はそのままパスポートコントロールを
通過した。
Ikukoさんのアドバイス通り、食料品は全てスーツケースに
入れたので何も没収されずにセーフ。

とにかく乾いた喉を潤すべくラウンジに向かった。
ビジネスクラスからはこのラウンジを利用出来る。

まずは席を確保して腰に手を当てて
シャンパンをぐい〜っ。

ふい〜。よみがえりながら銘子はポテトチップスと
ビールを持って席に戻った。

軽く1時間程をここでゆったり過ごして
どたばたしたチェックインの疲れを癒そう、
そう思いながら時間つぶしの『数独』をしながら
銘子はビールを飲んでいた。

隣のテーブルでは日本人らしき若い女の子が
英字新聞を読んでいた。
そこへ現れたもっと若い二人連れ。

「あの〜、ここ空いてますかぁ?」

その女の子の隣のテーブルには飲み残した形跡があったのだか
それがまた戻ってくるのか分からない感じであった。

「よかったら、ここにどうぞ!」

英字新聞の女の子が同席を薦めると

「じゃ、すみませ〜〜〜ん」

口を一回も閉めたことがないようにぱっくり開いたままの
20代前半の女の子が座った。
たぶん、口呼吸だな。

と、その連れは同じ感じの若い男性。
二人の左手に光る指輪が
あったので『新婚さん』と見て取れた。

柱の陰にいる銘子は二人から見えない。

二人は話し続ける。

「パリに一週間いたんですけどぉ」

肩からエルメスのバッグを斜め掛けにしたまま
新婦は話し続ける。

「昨日は最後だってことで三ツ星レストランに
 行ったんですよぅ」

み、三ツ星ぃ???すごっ!
二十歳そこそこで行ってしまうのか!
銘子は耳がダンボになった。

「でもさぁ。ぜぇんぜん美味しくなくってぇ!」
「塩っからいっていうかぁ、フランス人、味、
 おかしいですよね!」

ええええええええっ?美味しいものは美味しいよ!
銘子の腰は浮きかけた。

「だってぇ。値段と味が合ってれば文句云わないですよ。
 昨日だって、前菜で、こんなグラスにちょびっと
 何か盛って出て来て、
 それが85ユーロですよ〜!」

え。私は昨日、メインからコーヒーまでで13.5ユーロで
満足したぞ。前菜だけで85ユーロぉおおおおおっ???

女の子はどちらかというと、ドイツびいきのようで
適当に新婚さんの話に相づちを打っていたが、
しばらくして飲み物のお代わりに席を立った。

「何か飲みます?」

女の子の問いかけに新婚さんは云った。

「あ。二人ともお酒、だめなんでぇ!」

ふと視線をずらすとテーブルに
オレンジジュースが並んでいた。

お子ちゃま口(ぐち)なだけじゃないかぁぁぁっ!
そんなんで三ツ星レストランに行ったの?
それで帰国してからそこかしこで
「フランス料理、大したことないよ!」
なんて云うの?

しかし。そこで銘子が何を云おうとただの
お節介おばさんである。

ぐっとこらえて数独を続ける銘子だった。

もっと大人になって、自分で稼いだお金で
もう一回来てみたら、きっと見方は変わっているんじゃ
ないのかなぁ?

ってそれこそお節介か。

時間になったので銘子は搭乗口に。



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さよなら、FRANCE。
また来よう。

ああ。
その前にお金貯めなきゃ!!!

銘子は心を新たにするのだった…。


おわり。


〜〜このお話は全てハックションである。。。〜〜




posted by Avril at 20:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年07月02日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 9

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第九章 Paris滞在最終日

今日も一日、傘のいらない天気になるようだ。
いつものたっぷりとした朝食を摂りながら、ぼんやり
今日の行程を考える銘子だったが、全く思考が
定まらない。

洗濯機が止まり、干し終えてもまだ決まらない。

ぐずぐずしていると、お昼前になってしまった。

あ〜〜〜!ランチに行こう!

銘子は Le Pré Verre へ行くことにした。
予約はもちろんしていないので、直接店に行った。
ここも開店と同時に席が埋まる人気の店なのだ。

12時少し過ぎた頃に店に入った銘子は店のおにいさんに声をかけた。

「あの…予約してないんですが…」

「あ〜、それじゃあ無理だね。一杯だよ」

「あらら、それは残念!」

「でも13時半以降だったら大丈夫だよ!」

「あ、そうなの?じゃあ予約しますわ!」

13時半までの一時間と少しをどこかで潰さなくてはいけない。
そうだ!近くのここに行こう!

銘子が向かったのは、ご存知、
『ノートルダム大聖堂』だった。


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まずは正面から左側に回って建物を一周することにした。
真後ろの印象は全く正面と異なる。
じっと見つめていると、何だかジブリのアニメに出てくる
不思議な生き物に見えてくる。

セーヌ川に出てそのまま側面を見上げていると、銘子は
不思議なオブジェを見た。

塔の付け根にある緑色のもの。。。


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ズームしてみると、こんなのだ。


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たぶん、『聖・***』で、きっと何か云われがあるのだろう。
銘子はその辺が疎いので分からない。

もう少し進むと、また同じようなオブジェがあった。

今まで何回も訪れているはずなのに、初めて
こんなのがあることを知った銘子だった。

「何かの機会があったら調べてみようっと」

それから銘子は正面から中に入って行った。

沢山の観光客。
思い思いに写真を撮る人、椅子に座って祈りを捧げる人、
物思いに耽る人。

時折、オルガンの音色が流れてくる。


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ゆっくりと一周していたら、おっと!時間がないではないか!!


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慌ててレストランに戻ると、ちゃんと席が用意されていた。
すんごい奥まった所だ。

何にする?と向こうの離れた所から尋ねられたので銘子は
店内の黒板を指差す。お兄さんは頷いた。

前菜+メイン+コーヒー+グラスワインで13.50ユーロ。

メインのチョイスは…と思うのだが、あまりに忙しそうに
しているので声をかけづらい。そんなとき、妙に気弱になる
銘子だった。ま、好き嫌いがないので『お任せ』でいいや!と
待っていると、ひよこ豆のサラダが前菜で出て来た。

スパイスの効いたマヨネーズっぽいソースに絡めて、
たっぷりの生野菜の上に盛られている。

写真は慌てて撮ったので失敗。

隣のカップルに見つめられたので2枚目を撮るのを断念。

前菜が下げられるとすぐにメイン登場!
(これは何とか撮れた。携帯だけど…)

あ。また魚だ。


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白身魚のグリルと焼き野菜添え。
サフランソースかな???胡麻が香ばしい。
お皿全体に振りかけられたスパイスは何なのだろう???

パンもワインもおいしく、大満足。

お肉、食べたかったけど…。ま、次回の宿題だな、と銘子はすぐに
気持ちを切り替える。

なぜか、店の主人は精算時に『東京店』の名刺をくれる。
いよっ!商売人!
でもたぶん、東京では銘子は行かないだろうけど。

食後はまたセーヌ川を散歩する。


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この写真を撮った頃から急に日が射して来て肌がじりじり焼けてくるのが
分かった。銘子がそのまま目指したのは!

マカロンの大御所!
LADUREE !

銘子が店に到着すると、すでに8人程並んでいた。
そのうち日本人が4人。半分である。

まず、手前に並んでいる箱(大きさと色)を選び、
(何個入るか明記してあるので安心!)ずらりと並んでいる
マカロンから好きなものを選んで箱に入れてもらうシステムだ。

店を出ると、あまりの日差しの強さにこのままマカロンを
持ったまま歩き回るのは無理があると思い、銘子は
一旦部屋の冷蔵庫に入れるべく戻ることにした。

日はまだまだ高かったが、すでに18時過ぎ。
まだ日本時間での生活リズムが抜けきらない銘子は
夕食モードになってしまった。

最後の晩餐は部屋ですることにした銘子は
スーパーに買い出しに行くことにした。

外に出るともちろんまだまだ日が高い。
そうだ。ビール、飲もう。

まだParisに来てから Blanche (白ビール)を飲んでないことに
気づいた銘子はカフェに入って注文した。

「白ビールありますか?」

「あるよ! 25cl と 50cl のどっちにする?」

「じゃあ…50!」

「了解!」

50cl (センチリットル)= 500ml 

飲みがいがある。銘子は道行き人を眺めながら
ビールを飲んだ。

ふと隣の席のテーブルを見ると、なんと!
Désperados があるではないか!

これはテキーラ風味のおいしいビールを聞いていたのだが
まだ銘子は飲んだことがなかった。

すぐに Blanche を飲み干してお兄さんを呼ぶ。

「Une Déspé ,SVP!」

きたきたきた!


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先程と同じく 50cl にしたので Déspé のグラスではないが
ま、仕方ない。

すっかりほろ酔いで銘子はスーパーに向かった。
(50cl + 50cl = 100cl =1000ml =1リットル)

惣菜売り場でハムを2切れ、タブレとオリーブの
カクテルと100gずつ買い、部屋に戻る。

もちろん、冷蔵庫にはシャンパンがスタンバイ!

先日買った美味しいバゲットを添えた。

一人だけの、チープだが豪華な晩餐の始まりなのだった。。。

つづく。


第十章をお楽しみに!



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2009年07月01日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 8


第八章 夏の夜景撮影

朝から晴れたこの日、銘子はバスで観光してみることにした。
ちょうど最寄り駅から80番線のバスが出ており、それに乗ると
エッフェル塔を左に臨みながらセーヌに向かい、アルマ橋を渡り、
サンラザール駅を経由してサクレクールの辺りまで行けるのだ。

バス停に行ってみると、某スーパーマーケットのトラックが横付け
されている。パレットに載せたものすごい量の荷物を下ろしては
開店前の店先に置いている。

急ぐ訳でもなく、ゆったりとした仕事ぶりである。

バスの到着があと10分を切ったあたりから銘子の方が
焦りだした。

「どうするんやろう???間に合うんやろか…」

そんな銘子を尻目におじさんはゆったり荷下ろしをしている。

「じゃあな〜!」

「ほな〜」

ってな感じで店の人と挨拶を交わしておじさんは運転席へ。

バスが来たのはその1分後だった。
すごい!…っておじさん達にはそれが日常なのだろう。


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バスの終点近くで途中下車した銘子はサクレクール寺院へ向かって歩き出した。
ちょうど寺院の裏手に出た。風が強く吹いていた。まだ空には鉛色の雲があり、日差しは少ない。
少し肌寒さを感じながら銘子は寺院の正面に回り込んで写真を数枚撮った。

するとみるみる空が明るくなってきて、しばらくすると気持ちのいい天気に
なった。

ひとしきり写真を撮ったので、寺院の正面を背に坂道を降りた銘子が
次に目指したのはまたまた Galeries Lafayette だ。
Dalloyau(ダロワイヨ)のマカロンを買うのだ。
ついでにデパ地下?で軽く昼食をとることにした。

サンラザール駅方面から歩いていくと???何?これ???
路上に不思議なうさぎのオブジェが!


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ここも老舗のデパート、Printemps の何かのキャンペーンのようだ。
店内にも、ショーウィンドウの中にも様々な色、様々な大きさのうさぎちゃんが
いた。このデパートの中も一周してみる。

猛烈に『肉』が食べたくなってきた銘子は、以前、
食品売り場の精肉コーナー横のイートインで『ステーキ&フリット』が
あったのを思い出して探した。

…が、どこにもない。

生ハムをスライスしてワインと一緒に楽しむカウンターがあるのみ。

前にはなかったワイン専門コーナーにレストランがあるのを見つけた
銘子はそこへ向かった。美味しいワインにありつけるかも!

カウンター席があったので迷わず入った。
店内にはテーブル席がいくつかあり、真ん中に大きなテーブルが
あって、これがカウンター席のようになっている。

あれ?…見慣れた単語がメニューにない。

「えっと…」

先日の『レストランで固まる日本人の二人連れ』状態である。
ま、好き嫌いもないのでどれでもいいっか!

適当に銘子は注文した。
ワインは HAUT MEDOC の2002年ものだった。
とっても美味しかった。

料理を待っていると、ナイフとフォークが用意された。

「あ、もしかして…」

明らかに、肉を食べている人たちのナイフと違う。

料理が来た。

やはり『魚』だった。

あ〜あ。付け合わせは食べたかったフリットだから
ま、いいっか。タラのソテー・バジルソース、フリット添えか。

銘子が食べだした頃、ちょうど銘子の正面に座った
ド迫力の(体格も化粧も衣装も)マダム。
細かく注文したあと、マダムはじっ…っと銘子を注視した。

「み、見られてる…」

気まずい雰囲気と手持ち無沙汰を解消するのにマダムは
何かつまむものを、と更に頼んでオリーブのカクテルを
出してもらっていた。

マダムは何を頼んだんだろう…。

そこへやってきた、超美味しそうな肉!
マダムがナイフを入れると肉汁がじわ〜〜〜っ。

ああ、旨そう。

「マダム、それって子羊ですか?」

「ええそうよ。子羊のバーベキューソース!」

「あ〜、それ食べたかったな〜。私間違えて魚を
 頼んでしまったんですよ〜」

「あら残念ね!美味しいわよ!」

そんなことを話しながら、銘子は食事を終えた。
そしてマダムに別れを告げて店を出た。
そんなに肉を食べたいなら、注文の時に店の人に
聞けばいいのに!って後の祭りである。。。

グラスワインが6ユーロの食事が17ユーロで
23ユーロの食事だった。

ダロワイヨのマカロンやカイザーのバゲットを買っての帰り道、
Ecole Militaire で途中下車して銘子が向かったのは…

そう!先日行きそびれたパン屋さん!


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もちろん、買ったのは
Baguette Traditionnelle(こういう綴りだったかな?)。
日本に持って帰るつもりで2本購入!

帰り道のNICOLAS (ワイン屋さん)でワインを買って
(これも自分用の土産!)一旦部屋に戻る銘子だった。


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バゲットの端っこを食べてみる。
皮はしっかりぱりっとしていて、中身はもっちり。
ああ、こんなのが普通に部屋から歩いていける距離の店で買えるなんて!
毎朝買いに走るなあ。。。

バゲット好きの銘子はしばしつまみ食いを続けるのだった。

おっと!今日もうひとつ行く所があった!
久々のブランド店。

Louis Vuitton

生まれて初めて海外旅行した際に買ったのがここの財布。
それ以来、丈夫なのと使い勝手がいいので、あまりブランド品を
持たない銘子だが、財布はここのを使っているのだ。

新しい財布を買おう!

折角だからちゃんとオシャレして行きたいので
ワンピースに着替えて銘子は部屋を出た。
St-Germain des Prés へ向かう。

店員さんにあれこれ見せてもらって選び、銘子は大満足!
たぶん10年は使うだろ〜。

ついでに散歩しながら、Gerard Mulot でマカロンを買う。
今回の旅ではマカロンを食べ比べる、というのも楽しみにしていたのだ。

ここはカウンターで注文して、紙を貰い、少し離れたレジにいき、
清算後、レシートを持って商品を注文したカウンターに戻って
商品を受け取るシステムのようだ。

カウンターの中に日本人の若い女の子がいた。
「わ〜、頑張ってるなあ」普通に働くだけでも大変なのに
外国で、なんて銘子には想像を絶する世界である。

商品を受け取り、お店のおばさんと、女の子、それぞれに挨拶して銘子は
店を後にした。

「Au revoir!」「Au revoir!」
「さようなら」「さようなら」

またまた部屋に戻り、銘子は軽く夕食をとった。
やっと『鶏のトマト煮』がなくなった。。。

午後9時半過ぎ。

銘子はまたまた着替えて上着のポケットに携帯、
Navigo 、財布を入れてカメラと三脚を持って部屋を出た。

今回の旅行の最大の目的!
夜の凱旋門とエッフェル塔の写真を撮りに行くのだ!!

CHARLES-DE-GAULLE ETOILE に着いた。
シャンゼリゼ通りをふらりと歩き、よさそうな場所で
明るさに合わせて写真を練習しながら日が沈むのを待つ。

。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。

まだ暮れない。

。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。

寒い。

時計を見ると午後10時半だった。
日は沈んでいるが、まだ何となく空は青みを残している。

これはこれでいいっか。


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銘子はそのままメトロで Trocadéro へ向かった。
午後10時50分過ぎ。
11時ちょうどのピカピカ!に間に合う!

適当な位置に三脚を構え、カメラを装着する。
準備万端。

始まった!!

歓声が上がる。

美しい。

同じ構図なのに何度もシャッターを切ってしまう。

10分程でライトの点滅が終わった。
銘子はカメラを三脚に取り付けたまま抱きかかえてエッフェル塔の
足元へ向かう。

時折立ち止まってはカメラを据えてシャッターを切る。

三脚ってすばらしい。ぶれないねぇ〜。
銘子はつぶやきながらシャッターを切る。

エッフェル塔のマスコットをじゃらじゃらさせた土産物売りのアフリカ系
お兄さんがうじゃうじゃいる中、銘子は突き進む。

昼間のサクレクールにいた土産物売り(ミサンガのようなのを売っていた)は
(歩いている観光客の腕を引っ張るは、前に立ちはだかるは)とっても
強引で銘子は辟易したが、ここのお兄さん達はおとなしくてまだ好感が持てる。
さっと道を開けてくる。

Parc du Champ de Mars (シャンドマルス公園)を突っ切りながら
振り返っては銘子は写真を撮った。

時間も時間なので人が少なくなってきた。

でも公園では車座になって若者が宴会をしている。
木の陰からぬっ…と今度はアラブ系のおにいさんが出て来た。

「ワインにビール、ありまっせ」

首にクーラーボックスを下げている。

一人宴会するつもりはないので銘子は断る。

この人たちから飲み物を買って、エッフェル塔を見ながら
みんな飲んでるのかなぁ…?

もう夜中になりかけているとはいえ、大盛況のみなさん。
大声で大盛り上がり。
街灯しかない、薄暗い公園の芝生の上での大宴会。

いつか大勢で来たらやってみたいな。
…とは思ったが、銘子はトイレが近いので到底無理な話である。

公園の端までやって来た。


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「今日の撮り納めだぁ…」

銘子はつぶやいてシャッターを切った。
もう深夜0時になりかけている。
いくらオバチャンでも女一人ではちょっと怖い時間だ。

銘子は荷物をまとめて足早に大通りを歩いて帰った。
ここから500mも歩けば最寄りの駅前に出るのだ。

さすがに人通りは少ない。
すれ違う人もみな、足早だ。

しか〜し。
緊張しながら歩いて来た銘子が調子抜けするほど、駅前は明るく
カフェではみんな大騒ぎしていた。

「まだまだ飲むし、食べるでぇ〜」ってな感じ。

「あたしは部屋で飲もうっと…」

銘子はカフェの賑わいを横目で見ながら部屋へ戻るのだった。


つづく。。。


次回、第九章をお楽しみに!



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2009年06月29日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 7

第七章 大丈夫???

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またまたたっぷりの朝食を終えてゆったり身支度して銘子は外出した。
生憎の雨。

今日は Voguéo ヴォゲオに乗るつもりだった。
ちょうど去年の今頃に開通した新しい交通手段で、
Parisの Gare d'Austerlitz から郊外の Maison-Arfort とを往復する船だ。
 
乗船料は3ユーロだが、Navigo を持っていればこれで乗れるのだ。
 
メトロで Gare d'Austerlitz に到着。そのままセーヌの川辺に進む。
どっちに進めばいいのか分からないから、銘子はそのまま橋の上に出てみた。
 
「あ、あれね」
 
すぐに乗船場は分かった。全く人気がない。
 
所々で工事している。
傘にあたる雨音だけが耳に響く。
 
バスの停留所にあるような時刻表が立っていた。
見るとあと10分程で乗れるようだ。
 
全く人気がない。
 
後ろで人の話す声が聞こえて振り返ると若いおにいちゃんの二人連れ。
かなり汚れた身なりで、ニヤニヤ笑いながらこちらにやってくる。
 
ううう。。。ちょっと怖い。
周りには他に誰もいない。
 
かすかに銘子の頭の中で『火曜サスペンス』のテーマ曲が鳴りだす。
 
銘子がつっとそこを離れると、おにいちゃん達は同じく
時刻表を見ている。振り返ってニヤリ。
 
「Bonjour.」二人揃って云うので
 
「…Bonjour.」と答える。
 
しばらく時刻表を前に喋っていたおにいちゃん達はそのまま工事の
現場へ向かっていった。
 
な〜〜んや!工事の人ぉ〜っ???
日本みたいに分かりやすく、『ニッカポッカ』履いててよっ!
って無理な話である。
 
しばらくして船がやって来た。


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下船する人は誰もいなかった。
乗組員のおにいさんが、こちらをみて乗るのか?というような
身振りをするので銘子は大きく頷いた。

船が横付けされる。

桟橋をおにいさんが駆け上がって来て、扉を開け、銘子を
招き入れる。雨で床が濡れて滑りそうだ。

そのまま乗船する。銘子がNavigoを見せると「後で」と云われた。

誰もいない。誰も乗って来ない。

席は選び放題だ。何となく、進行方向・右側の最後尾に座る。
まもなく船は動き出した。


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動き出すと、おにいさんが「Madame!」と呼ぶ。
入り口にある、紫のNavigoをかざす機械を指差しているので
そこへ行く。船は少し揺れる。

銘子はこれ位では全く酔わないので何ともない。

雨は結構降っている。
ガラス窓に雨が当たる。
水滴がガラスを伝う。

写真が撮りにくいので外に出たいな〜、外の最後尾の真後ろ向いた席に
座って写真撮りたいな〜、とは思ったが、おにいさんは
船内の全ての扉をチェックしてはしっかり閉めて回っている。
とても云えない。

Bercy に着いた。フランス国立図書館が見える。
分厚い本を開いて立てたような形の建物なのですぐに分かる。

誰も乗って来ない。

船が動き出す。

景色はどんどん寂しくなっていく。


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橋の落書きも目立ってきた。


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折り返し地点に着いたとき、おにいさんは甲板の外からしっかり扉を閉めた。
密閉するような音がする。

「え?何?何?」

不安そうに見ていると、おにいさんが「ここで降りるのか?」と身振りで
聞くので「駅まで戻る!」と銘子は大声で答えた。
おにいさんは頷く。

ゆっくり船は旋回する。

次に停船した時に、おにいさんが銘子のところにやって来た。

「ここで降ります」

「え?私も?」

「いえ。交代です」

「あ〜」

運転手と係員の交代のようだ。
今度はおねえさんが係員だ。

船が船着き場から離れていく。
運転手とおにいさんが二人揃って立っている。
ぼ〜っと見ていると、こちらに手を振ってくれた。
銘子も手を振った。

船はしばらくして元の Gare d'Austerlitz に着いた。

「いい写真撮れた?」

おねえさんが聞いてきた。

「ええ、もちろん!」

おねえさんは不思議そうだった。
おねえさんにとっては『普段のなんてことない風景』を、
『ばしゃばしゃ撮る東洋人の女』は多分、不思議だと思う。

銘子が降り立った船着き場は、まだ全く人気がなかった。

…ってほんまに採算とれるんだろ〜か???
まあ、郊外と結ばれているので、もしかしたら
ラッシュ時はすごいのかもしれないけど、それにしても
寂しい船内であった。大丈夫なのかな?

ま、銘子の余計なお世話である。

時計を見るとちょうどお昼過ぎだった。
少し空腹を覚えた銘子は、どこかで昼食をとることに決めた。

ここから近いのは… L'Ebauchoir だ。
しかし、人気店なので予約無しなら開店と同時に入らないと
いけないと聞いていた。

「今からだと…ちょうど12時に入った客が一回転してる
 頃じゃないかな…ま、行ってみよう!」

雨が降っているからメトロで行くことにして、
 Gare d'Austerlitz に戻る銘子だった。


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駅のこういう風景を見ると、どうしても銘子の頭の中で
『世界の車窓から』のテーマ曲が流れてくる。

ヨーロッパの駅が大好きな銘子は思わず写真を撮ってしまう。


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今回の旅行では列車に乗ってどこかに行く、って計画を立てなかったが、
『ちょびっと鉄子』の銘子は列車の旅が実は大好きなのである。
時刻表なんかを見て行程を立てるのはとっても楽しい!

これは次回の楽しみにおいておいて、銘子は駅を後にした。

隣接しているメトロの Gare d'Austerlitz 駅構内(地上駅)はこんな感じ。
同じ構内なので雰囲気はそのままだ。


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相席だったが、 L'Ebauchoirで大満足の昼食を終えて
銘子が向かったのは…

BHV!(ベー・アッシュ・ヴェー)

ご存知の方も多いだろうが、知らない方にご説明すると、
何でも揃う、『Loft』と『東急ハンズ』と『ホームセンター』を
混ぜ合わせたようなデパートなのだ。

銘子はここが大好きで、Parisに来れば必ずここで過ごす。

まず、一番上にエスカレーターで向かう。
そこからワンフロアごとに見て回る。
照明器具、鏡、額、ああ、持って帰りたい。。。
調理器具。鍋。地階はネジや工具がたっぷり。
水栓やドアの取っ手を一つ一つ見て回るのが楽しい。

一通り見て回って次に銘子が向かったのは、ここも
老舗のデパート、Galeries Lafayette (ラファイエット)だ。

ここのグルメ館でお土産を買うのだ。

少し上の階も見てみると…!あれ?あれ?
特設ブースに Roland Garros の関連商品があるじゃないか!!
数日前に拝めなかったグッズである。

もしかしたら、会場内でしか手に入らないものもあるかも
しれないが、やっぱり世界的な大会だから、こんなコーナーも
そら、設けるわな、と銘子はつぶやきながら見て回った。

銘子はテニスをしない。
でも折角だからTシャツを自分への土産に買うことにした。

グルメ館でひとしきり見て回り、食品をいくつか買って
銘子は部屋に戻った。

まだ結構な量の『鶏のトマト煮』が待っているのだった…。

つづく。。。

それでは、第八章をお楽しみに!



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2009年06月27日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 6


第六章 どしゃぶりとかんかん照りの中のお散歩

目覚ましをかけないここ数日。
それでも何となく6時過ぎには一旦目が覚めてしまう。
きれいな小鳥の鳴き声が銘子の耳に心地よい。

それを聞きながら目を閉じたまま、何となく今日一日の
予定を考えてみる。

う〜ん。どうしよう。

天気予報は昨日と同じ。
雨が降ったり雷がなったりの不安定な状態。
昇りかけのお日様の光がさんさんと窓から降り注ぐ。

「ほんまに雨降るんやろうか…」

昨日の夜、酔っぱらいながら煮た『鶏のトマト煮込み』
味見てみる。うんまい。
夜に食べる頃にはいい感じに味が納まっていることだろう。
銘子は軽く火を入れて朝食に少しだけ食べてみた。

飲むにはまだ若かったというものの、いいワインをたっぷり
使った煮込みだもの、まずくさせる訳にはいかない!

ゆったり朝食を摂りながら、メイルチェックする。
美術館内のレストランでランチってのもいいな、
そんなことを考えながら銘子は身支度した。

まずは Av. de la Motte Piquet をセーヌに向かって進む。
すっかり空は曇り空になっていた。


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エッフェル塔を左に臨みながらてくてく歩く。
Place de l'Ecole Militaire を越えた辺り、左角に郵便局があった。
ここで絵はがき用の郵便切手を買う。

可愛い模様でなくても、柄入りのが欲しかったが「自販機に行け」と云われ
味気のない値段だけ印刷された切手を買う羽目になってしまった。
ああ、残念。

角を左に曲がって Rue Cler を進む。
両側に商店が並び、にぎやかだ。


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ここの突き当たりの右角にあるパン屋さんは
2009年のバゲットコンクールでグランプリを取った
お店だった。ここのバゲットを買いにくることを心に決める銘子だった。


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このあたりで、雨がぽつぽつ降り出してきた。
次第に強い降りになる。

Quai d'Orsay に出た頃には強烈な降りっぷりになっていた。
ええい、ままよ!
銘子はどしゃぶりの中を散歩する。
途中、バス停の屋根の下でカメラを丁寧にバッグに納め
そのままオルセー美術館に向かって歩き出した。

ジーンズの膝から下は完全に色が変わっている。
雨を吸って重い。

オルセーに着いた。
ビックリするような長蛇の列。こんなの並んでたら
晩ご飯になるよ。

観光シーズンだし、朝一番で入っておくのが賢明というものだろうが
早くに部屋を出るような計画を、今回の滞在では立てたくない。

銘子は Musée des Arts Décoratifs に行くことにした。
チュイルリー公園を縦断しているうちに雨が止んだ。

ふと見上げると青空がのぞいた。
うそ!あんな大雨が降ってたのに!!


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朝でも昼でも大抵公園に行くと見かけるランナー。
でもさっきのあの雨の中、どこにいたんだろう???と不思議に
思いながら銘子はシャッターを切った。


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Rue de Rivoli (リヴォリ通り)に出た頃には完全に晴れた。
なんじゃ、こら。


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目指す美術館へ。
特別展では宝石の展示があったが、これは今回はパス。
1940〜2000年代のデザインが展示されている、これを見たい。

まずはエレベーターで上がってここから展示物を見ていく。


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「カメラ、好きなの?」

急に後ろから話しかけられる。
振り返ると名札をつけた係員のおにいさん。

「はい。フラッシュなしで写真撮ってもいいんですよね?」
「うん、もちろん!」

おにいさん。昨日思いっきりニンニク食べたでしょう!!
すんごく臭う。

でもおにいさんは初対面の人間が話す時の距離感が通常の半分だ。
近い。うっ、ニンニク…。

「じゃ、」

銘子が立ち去ろうとすると

「僕はここの係員だよ。説明したげる!」

「あ…」

そこへおにいさんの携帯が鳴る。

銘子はここぞ!とその場を立ち去る。

展示物を見ていると、また後ろからおにいさん。

「これ、すてきでしょう?ベトナムのタンスなんだよ!」

「へ〜、そうなんですか」

ちょうど展示コーナーの端だったので、銘子は外に出ることに。

「さようなら」

「いつまでParisにいるの?」

「今日までです。じゃあ、さようなら」

おにいさんは親切だった。
でも…嘘も方便である。

目指す展示物のコーナーに行こうとエレベーターを探していると
係員のおじさんに制止される。

「ここは立ち入り禁止です」
「え?上を見たいんですけど」

銘子の会話力ではよく分からなかったが、そこから上には
上がれないように云われた。そこから上を見たくて入ったのに。

どっと疲れて銘子は座りたくなった。
確か地階にレストランがあったはず!

美術館のチケットを見せると一番安いランチセットを
頼むことが出来るようだ。

おしゃれなお店でゆったりの昼食。
銘子の周りのテーブルを何となく見渡すが、本当に
みんなよく喋り、食べる。
ワインを飲んでいる人は半分程。仕事中だから?水の人も多い。

銘子の正面の二人連れのビジネスマンはハンバーガーに水。
白い大皿にでっかいハンバーガーに、てんこ盛りのフライドポテトと
生野菜のサラダ。そして別皿にパン。

なんでハンバーガーにパンがつくのだろう。よく
分からないが、かなり肉厚のパテだったからかなぁ?

一人はパンを食べて、一人は手を付けていなかった。

周りを観察をしながら銘子はゆったり過ごした。

犬をテーブルの足元に寝そべらせてビールを飲むマダム。
イギリス人か?銘子の隣の年配のカップルは白ワインで
かなり盛り上がっていた。
斜め前のお婆さんは、銘子と同じ料理を頼んで周りを
じろりと睨みながらゆっくり食べていた。

食事中にまた強い雨が降っていた。
でもまたすぐに止んだ。

銘子は食後の腹ごなしにぶらぶら散歩することにした。
確か4区に素敵なインテリアショップがあるとネットにあったな。
名前は『SENTOU』そのまま読むと『銭湯』。。。
どんな店なんだろう。

控えておいた住所辺りまで来たはずなのに見当たらない。


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通り過ぎたのか?銘子はもう一度、その界隈を回った。
どう見ていってもない。

「おかしいなぁ。。。なくなったのかな、お店」

つぶやく銘子の目の先に『IKAT』というインテリアショップがあった。

まさか、『銭湯』が『烏賊』になったぁ〜っ???

なぜか法被(はっぴ)がウィンドーにあった。
入る気にもならず、銘子は立ち去った。

目指す店は見つからなかったが、そのかわりに、
銘子はとっても素敵なカードを紙製品のお店でみつけて手に入れることができた。

歩き回って疲れたのでメトロ7番線 Pont Marie から PTE D'IVRY へ出て
Tram (トラム)に乗ることにした。これで車窓から街を眺めて
そのまま帰ることができる。今朝、バゲットを買うことに決めた
お店に行く気力はなくなっていたので、銘子は適当なパン屋さんで
バゲットを1本だけ買った。明日の朝の分がちょうど切れているのだ。
BALARDでTramを降りる。8番線でそのまま La Motte-Piquet Grenelle へ。

荷物を部屋に置いて、また近所のスーパー Monoprix へ。
今夜食べる『鶏の煮込み』の付け合わせにパスタが欲しくなったのだ。
それを買いに行こうとした銘子だが、猛烈に喉が渇いていたので…
つい途中のカフェでビールを飲んでしまった。

大好きなビール。『1664』と表記されているが、みんなこれを
『seize』(セーズ)と呼ぶ。ない店もあるけれど、店頭でこのグラスを
見かけたら必ずあるのだ。なぜか律儀に銘柄が表記されたグラスで
ビールは出されることが多いからだ。

席に座っていた銘子に気づいて店の人が来たので、云った。

「Une SEIZE ,SVP!」

ま、「一番搾りください!」とか「スーパードライください!」
って云っているようなものである。


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駅前を行く人たちを眺めながら銘子は二杯飲んだ。
昼過ぎから天気は崩れていない。しっかり日が照っている。
銘子のジーンズはすっかり乾いていた。

買物を済ませてパスタを茹でて夕食!
次のワインはハズレではなかった。
大満足の銘子だったが、今日、適当に買ったバゲットは
まずかった。

…Parisのパン屋さんはどこでもおいしい、ってのは
ただの思い込みであって、まずいところもある、と
銘子は身をもって知ったのであった。。。


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2009年06月23日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 5

第五章・雨のバラ園

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銘子の旅行中の習慣のひとつは起きてすぐにテレビをつけること。
普段の生活ではありえないのだが、やはり知りたい天気予報。

朝のうちは晴れるが、昼からは雨に雷のようだ。

早めに行ってみよう。。。

銘子は先日行きそびれた“Parc de Bagatelle”(バガテル公園)に
行くことにした。今日月曜からは地下鉄乗り放題だし!

先週の土曜日に前もって買っておいた“Navigo”(ナヴィゴ)が
強い味方なのだ。

これがあれば、Velib(自転車)も Vogeo(船)もTram(トラム)も
乗れるのだ!

パリ市内で自転車に乗るのは銘子は怖い。
右側通行に慣れていないこともあって、自分の左側を後ろから
車が追い抜いていく、なんて調子が狂うのだ。
事故が怖いので自転車は止めておくことにする。

Navigoには二つの種類がある。
居住者用(事前申し込み必要)と非居住者用である。
非居住者用の Navigo Decouverte(ナヴィゴ・デクーベルト)は
盗難&紛失の際に再発行してはもらえない。
しかし、証明写真(25×30mm)と5ユーロを窓口に
出せばその場でもらえる。

専用チャージ機で一週間、もしくは一ヶ月分
(使用する範囲Zoneも)を選んでチャージするのだ。
改札で SuicaやICOCAのようにさっと触れて入場できる。

行動の内容によっては、デポジットの5ユーロもあるので
カルネの方が安くつく場合もある。

期限が切れても、次回の旅行の際にまたチャージすれば
使えるという便利なこともある。

銘子は写真を用意して、窓口に立った。

通常は写真と5ユーロ出しながらこう云って

「Je voudrais un Passe Navigo Decouverte,SVP.」

二枚一組のカードをもらって専用チャージ機でチャージする。

でも銘子は今回はズルをする。

同じように写真と5ユーロ出しながら、こう云う。

「Je voudrais un Passe Navigo Decouverte  
   hebdomadaire pour 2 zone 
   avec une poche,SVP.」

(ナヴィゴ、一週間券パリ市内用を一枚と、そのケース
 ください)

基本的には自分でチャージしないといけないんだけど
たまに窓口でチャージまでしてくれることがあるのだそうだ。

「使うのは来週月曜からよね?」と何度も念を押されて
ついに買えた。

チャージは次回に頑張ってみよう。。。

話を元に戻す。

銘子は地下鉄6番線でCHARLES-DE-GAULLE ETOILEに出て
1番線でPorte Maillotへ。

この駅前は放射線状に道が広がっているので
どの道を進めばいいのか分からない。

銘子はすぐそこで公園の掃除をしている職員のおじさんに
尋ねた。

すると公園近くまで行くバスがあるというではないか!!

244番のバスで4〜5つ目が目的地。
名前は忘れたが、ちゃんと『Bagatelle』の単語が入っているのは
この停留所だけだったから大丈夫である。


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公園に着いた頃にはポツポツ雨が降り出していた。
カメラを濡らすわけにはいかないので、傘をさしかけての
写真撮影となる。

そんな銘子の横を沢山の幼稚園児が走り抜ける。

この時期はなぜか『遠足』シーズンなのか、子供と
引率の先生をよくあちらこちらで見かけた。

子供達はどうも『バラのオリエンテーリング』をしているようだ。

渡されたプリントにはランダムに記された番号が。
「17番のバラの花の色は?」とでも聞かれているのか

「あった〜〜〜!ここ!17番!赤。えっと…次は5番!」

プリントの数字はランダム。
植わっているバラの並びは大抵順番通り。

でも子供達はプリントの順番通りしか追わないから、
雨の中、公園内を走り回ることになる。お疲れ様…。

雨が強くなってきたので、銘子は公園を後にした。

行きたかった美術館は休館日なのでショッピングへ。
銘子はLe Bon Marchéに向かった。軽く何か食べたかったので
食品館上のおしゃれなカフェに入った。

雨が降っていたが、屋根があったので銘子は
吹き抜けの席を選び、雨の粒がテーブルや
地面に跳ねるのを見ては座ったまま写真に撮って遊んだ。

小さな球形のスポイドがはまった小瓶が二つ並べられた。
オリーブオイルとバルサミコ酢のようだ。

銘子の斜め前のテーブルでお兄ちゃんが一心にスポイドで
遊んでいる。ぷぎゅ、と吸い上げては、ちゅ〜と絞る。

ぷぎゅ。ちゅ〜っ。ぷぎゅ。ちゅ〜っ。ぷぎゅ。ちゅ〜っ。

お兄ちゃんが係を呼んで何か云っているが聞こえない。
係はすぐに戻って来て、瓶をそれぞれ指差しては説明している。
産地はどこか、とでも聞いたのだろうか。

赤ワインとともに銘子の頼んだ料理が来た。

がっついてしまったので写真はないが、
とっても薄いワッフルのように焼いたガレットで
生ハムとルッコラを挟んでいる。

赤ワインとともに!と思った時に傍を案内されて
通り過ぎた女性二人連れ。日本人かな?

そっと銘子は見ていた。

それぞれ買物を済ませて来たのか、沢山の紙袋。
そして二人はメニューを見たまま微動だにしない。
話もしない。

あれ?あれ?…面白いので腕時計で時間を計ってみる。どれだけ時間が止まるのだろうか。

15分程して、一人がバッグから出して来たガイドブック。
『パリの…』と読めたので、日本人だと確信。

ぷぎゅ。ちゅ〜っ。ぷぎゅ。ちゅ〜っ。ぷぎゅ。ちゅ〜っ。

更に10分経ってやっと注文していた。

あれだけ悩んで「何を頼んだんだろ〜?」
素朴な疑問がもたげるが…
ま、美味しければ「よかった!」だし、とんでもないものが
出て来たらそれは後々のネタとなる。

これが旅行の面白さだもんね!

彼女達が何を頼んだのか確かめるまでに
銘子は食べきっていたので店を出た。

Le Bon Marché の食品売り場はとっても楽しい。

一通り見て回って銘子は宿に戻った。
そしてすぐに近所のスーパーへ向かう。
なんせ、今夜は赤ワインの煮込みを作るのだ!

迷った末に骨付きの鶏肉にする。
一緒に煮込む野菜も買って来た。

「よし!」

銘子はビールを片手に立ち上がるのだった。。。



第六章をお楽しみに!




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2009年06月21日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 4

第四章・朝市散歩

銘子は猛烈にお腹が空いて目が覚めた。
昨日買って来た、おいしいバゲットに取りかかると
先日のMONOPRIXのバゲットをおざなりにしてしまう
自分が分かっていたので、まずは早く食べきってしまおう!

と、ものすごい量の朝食となった。。。

7.juin.09-1.jpg


これ、一人分。

…銘子一人で食べきってしまった。
我ながらすごい。あ。云っておくが、この部屋に誰も
“夜明けのコーヒー”を一緒に飲む相手はいなかったのは
悲しい事実である。(古い表現っ)

どう見ても二人分の食事であるのは否めない。

撮影が終わった直後に、サラダとパンを真ん中に置いて
「さ、食べましょ!」
なんてしてないから。したかったけど、相手いないからぁあああっ。

で、ここで嬉しかったのは何と云っても
カリカリ・ベーコンであった。

この8切れ入りの1パックで1.99ユーロ。


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フィルムを開けて見てみるとちょっと生っぽい感じ。
生ハムとまではいかないけれども、生肉を軽く薫製した感じ。

でもこれがフライパンで軽く炒めると、ものすごくお手軽に
カリカリ・ベーコンが出来上がるのである!!

感動。

満腹の状態ですぐ駅前の朝市をブラブラする銘子であった。


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地下鉄が地上に出ているこの駅。
その高架下に連なる朝市。
新鮮な食材と活気。

ああ、たまんない。


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お店のご主人に、銘子は礼儀として話しかける。

「Est-que je peux prendre des photos ,s'il vous plaît?」
(写真撮ってもいいですか?)

ほとんど全部のお店の主が「いいよ!」と云ってくれる。

「おいしそうですね〜!」
「ありがと!」

そんな会話をしながら色々なお店で写真を撮る銘子であった。


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銘子が好きな花屋さん。
こうしてバケツにさしてディスプレーしてあるお店もあるが、
棚に束ねた花をこちら向けに(花をこちらに、切り口を店側にして)
倒して積み上げているお店もある。

この花の種類に圧倒される銘子であった。

昨日、花屋さんで買ったのよりいいのが朝市であるし、んでもって
安い。今日買えばよかった!!って後の祭りである。


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今はちょうどアスパラガスの旬なのか、銘子の親指くらいの
アスパラから足の親指くらいのごつさのから、様々なのが
店頭に並んでいる。

軸の葉っぱ(つくし、で云うと袴のようなの)を削って根元を
鉛筆を削るように掃除して熱湯に塩を加えた鍋にぶっ込む。

数秒先に根元。少し遅れて穂先をぶっ込む。

数分後にはおいしく仕上がっている。


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出来上がりに少し塩胡椒を振りかけてレモンをギュっと絞る。
オリーブオイルをたら〜りと回しかけて食す。

ああ。おいしい。

朝市ってなんて楽しいんでしょう!!

ホルモンのお店もあった。
舌に足先、内臓。

何でも食べるのね〜。


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銘子の目を引いたこの鮭の並べ方。
この市松模様はなかなか鮮魚売り場で見たことはない。
面白いディスプレーだと銘子は思った。


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八百屋さんのトマト。
トマトの種類にもびっくりするのだが、このトマトもかなり
変わっている。イタリアントマトと表記されていた。

ああ、買いたい。

でも昨日スーパーで2個買ってしまっている…。
一人だと消費する量が決まっているのでなかなか
買物もできない銘子であった。


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朝市をぶらぶら来た道をそのまま元に戻って高架下を進み、
次のMarchéを目指す銘子であった。


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Sévres Babyloneの近くでBIOのマーケットが日曜日に立つのだ。


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もちろん、この時間には Le Bon Marché
 (パリ最古のデパート)は開店していない。

この先を右に折れて少し行くと目的の朝市がある。

朝市を一通り楽しんだ銘子は Rue de Rennes 
(レンヌ通り)を南西に下って Montparnasse へ。

ここ数年の定宿がここにあるので、どうしても
この辺りの風景を見るとほっとするのが否めない。

必ず寄っていた中華惣菜の店に寄って、
ビールと揚げ春巻きの昼食であった。

ライスペーパーで巻いた春巻き。
特製のタレにつけて食べるものであるが、
銘子はこれをParisで初めて食べてから
大好物になっている。

陳列してある中から選び、量をはかってもらって
電子レンジで温めてもらう。

…おいしい。


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少し早めにアパルトマンに戻り、銘子は夕食の
作業に取りかかった。

じゃがいもの皮を剥いて適当な大きさに切って鍋に投入。
できればニンニクを一片入れたい所だがないので割愛。

牛乳をひたひたに注ぎ、バター一切れ入れて
芋が柔らかくなるまで弱火で煮る。

煮えたら、ニンニクを取り出して捨てて
ジャガイモはボウルに取り出して潰す。

潰した芋に、鍋に残った牛乳とバターのスープを
加えながら練って出来上がりっ!

高級なお店になるとそれを裏ごしするらしい。
裏ごしすると喉ごしがたまんない。

でも今回はそれっぽい器具もなさそうなので
銘子は潰すだけにした。
でも旨い!

ジャガイモが違うのか、牛乳が違うのか、何が違うのか、
美味しいのだ!


サラダのドレッシングはオリーブオイルとレモン汁に
塩胡椒。これで十分美味しい。

牛フィレ肉は数枚にスライスしておき、
断面に日本から持って来たチューブワサビを塗り付けて
元のように重ねる。

表面に塩胡椒して軽く焼いて皿に盛る。

仕上げは軽くオリーブオイルを回しかけて出来上がり。

大満足の夕べとなるはずが、銘子はワインを口に含んで
首を傾げた。

「あれ?…美味しくない…」

後で友人に聞く所によると、銘子の買ったワインは
かなり若かったようなのだ。


そんなことを知らない銘子は、捨てるには惜しいワインを 
料理に使うことに決めたのだった!

第五章・雨のバラ園、をお楽しみに!

posted by Avril at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年06月19日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 3

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また、元の Porte d'Auteuil からメトロ10番線 Duroc 乗り換えの、
13番線で Varenne 下車。
すぐそこに Musée Rodin (ロダン美術館)がある。

少しだけ空腹を感じた銘子は  BD. des Invalides に面したカフェに
入った。久々に croque-monsieur を食べたくなった。
croque-madame とどっちにするか悩んだ末に croque-monsieur 
(7ユーロ)を注文する。

『クロック・ムッシュー』
トーストにハムをはさんでチーズをふりかけて
焼くのが croque-monsieur 。それに卵を加えたのが
croque-madame 。命名が面白い。

先に来た、赤のグラスワイン(3.80ユーロ)をちびちびやりながら
ぼんやり外を眺める銘子だった。

トイレも済ませていざ!

ノーマルの入場料は6ユーロ。
特別展まではじっくり見られないと判断してノーマルにした。

まずは庭園からじっくり見ていく。

あれ?晴れてるじゃない???

ま、いいっか。ラッキー。

銘子は庭園を散歩する。

『考える人』がいた。大きなのと、元々の『地獄門』の
上で考えている人と。

彫刻。気の遠くなる行程である。
ロダンはどんな人だったのだろう…銘子は
思いに耽りながら庭園を歩く。

あれ?この人、森進一??

いやあ、『おふくろさん』歌ってるのかと思った。


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…続いて屋敷の中へ。


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どっちが男性でどっちが女性なんだろう?
男性同士?女性同士?

銘子には、男性と女性の触れるか触れないか、の
一番電流の感じる一瞬!と感じられたのだった。
この後、激しく指が絡められたのか、
さっ!とお互い引いてしまったのか、はてさて?

このロダン美術館は志保のお気に入りで、ここも訪れるよう
強く云われていたのだが、銘子は以前、偶然読んだ本で
興味を持ったのだった。

女優・花子。

明治39年にフランス・マルセイユで行われていた
博覧会で興行していた花子。彼女の舞台を観たロダンが
モデルになってくれるよう依頼して…

そこから色々な話になるのだが、明治39年って…!
もちろん船での渡航である。花子さんは欧州興行で
様々な場所を訪れていたのだそうだ。

一旦ポーズを決めると、かなり無理な姿勢であっても
花子さんは好きなだけ長くそのままでいられたという
強靭な筋肉の持ち主だったらしいけど…。

花子さんの出し物の中で『切腹/ハラキリ』の場面があって
その死にっぷりにロダンが惚れたのだそうだ。

唯一の日本人モデル。

一番奥の部屋に花子さんはいた。

その時代に船で渡航して欧州を行脚するなんて
銘子には到底考えられなかった。真似出来ない。。。

石膏のとブロンズの二通りの花子さんがそこにいた!


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美術館を出て、銘子は宿まで歩いて帰ることにした。

通りの花屋やパン屋で足を止めては買物したりしながら
銘子は帰って来た。

荷物を置いて、近くのスーパーマーケットで更に買物。
明日の夜は『お部屋・ディナー』なのだ!

日曜日はスーパーマーケットはお休みとなる。
だからか店内はごった返していた。

必要なものを全て買いそろえてレジに並ぶ。

銘子の前に並んでいたおじさん、かなりの買物の量。

レジのおばさんは傍に立っているご友人と猛烈に
私語しながらのお仕事中。

かなりの品物をレジに通した後、おばさんが手に取った
ビニル袋。そこに値札が貼られてなかった。

見ると、おじさんは野菜売り場で好きなものを
好きなだけビニル袋に入れたままレジに持って来たのだ。

「向こうで計って値札を貼って来て!」

おばさんの命令で、おじさんはいくつかの袋を持って
野菜売り場へすっ飛んでいった。

…え。待つの?

おばさんはご友人とぐだぐだ喋りながら、残りの品物を
レジに通す。

おじさんはまだ帰って来ない。

銘子に何を云うでもなく、おばさんは暇だったので
おじさんの買物したものを袋に入れてあげようとした。
もちろんご友人とお話に夢中の状態で。

銘子の後ろに並んだ人々がそれぞれ身を乗り出して
どうしてレジが進まないのか確認している。
銘子はなるべく後ろの方に下がって、渋滞の張本人では
ない!と必死だった。

おばさんのお喋りは止まらない。

まず袋にクラッカーを入れ、そこへ缶ビールを投げ込む。

うわっ!割れる!

嫌がらせか?と思わずにはいられないほど、
柔らかいもの、割れるものを先に入れては
重いものを上に入れていく。

おばさん、いじわる。

おじさんがやっと帰って来て銘子に謝った。

精算時にクレジットカードがなかなか反応しなくて
さらにレジは渋滞。

銘子はたっぷり待つことになった。

レジのおばさんはちっとも慌てない。

「Bonjour!」

銘子の番がやっときた。

それから部屋に帰ってもまだかなり明るい
夜であった。

買って来たものをそれぞれ冷蔵庫に入れて
シャワーをさっと浴びて銘子は今日買った
バゲットの端っこをかじってみた。

「う…まい」

昨日買って、まだ残っている Monoprix のバゲットをなるべく
早く食べてしまおう!そう決心する銘子であった…。

ワインとチーズとバゲットで軽い夕食を
始めた銘子だったが、バゲットを片手に居眠りしてしまう。

こうして銘子の一日が終わるのだった!


つづく…このお話はすべてハックションである。


第四章・朝市散歩、をお楽しみに!



posted by Avril at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年06月17日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 2

第二章・雨のRoland-Garros 

ぼんやり明るい部屋の中で銘子は目覚めた。
あれ?何時?

携帯でデュアル表示にしてあるのでParis時間と日本時間が
すぐに分かるようになっている。

Paris時間で朝の4時半…。

とりあえずトイレに立つことにした。
昨日、鍵の受け渡しの際にレクチャーを受けたのを銘子は
ぼんやり思い出していた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あのですね、トイレはちょっとコツがありまして…
 とにかく一旦水を流してみて下さい」

「はい」

じゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっつ。

「タンクに水が補充された後が問題なんです。少し待って下さいね」

水を流した分、タンクに水が溜まっていく。
タンクが一杯になった頃、急にレバーも何も触れていないのに便器に
水が再び流れるではないか!

「えっと。こうなったら、ここを手前にちょっとだけ
 引っ張って下さい」

Aikoさんは水を流す時の大きなボタンをちょっと持ち上げて云った。

便器の内をに伝っていた水がやがて止まった…。

「ねっ?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

夜明け前。

トイレでじっとタンクに水の貯まるのを待つ銘子がいた。。。


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「眠い…」

どこをどう引っ張っても止まらない。

「ええいっ!」

勢いよくもう一度水を流してみた。

…止まった。

よしよし。銘子はもう一度ベッドに入るのであった。

次に目を覚ましたのは6時を過ぎようとしていた頃であった。
起きだして窓の外を見ると、ぱらぱら雨が降っていた。

「あ〜あ。雨だぁ」

ぼんやりと朝食を摂りながらテレビの天気予報をチェック。
あまり良くなさそうだ。

スポーツのコーナーになった。
テニスの全仏オープンの試合の模様だ。

そういえば昨日のタクシーのおじさん、会話が
途切れる度にラジオをつけてはチェックしてたっけ。

おじさんのお気に入りは、フェデラーとナダル。
ナダルが早くも負けたと悔しがっていた。

「テニス好きなんですか?」

「ああ、大好きやで!」

「じゃあテニスやりはるんですか?」

「ぜんぜん!」

(ここで銘子は吉本新喜劇のようにこける)

「わしはテレビで観るだけや!」

今日、土曜日は確か女子の決勝。
明日は男子の決勝。

なぜそんなことをテニス音痴の銘子が知っているかと云えば
一週間前の銘子宅での『引っ越し四周年パーティー』で
盛敦が銘子の渡仏時期を羨ましがっていたからだ。

「滞在先のすぐそばで全仏オープンやで!
 すぐそこを選手が歩いてるかもしれへんのにっ!」

テレビではがんがん選手の熱闘ぶりを放映していた。

「よし。観に行こう!」

銘子はもちろんチケットは持っていない。
試合を見るつもりはない。ただ、会場の興奮と高揚した雰囲気を
感じてみたくなったのだ。

ついでに志保お薦めの Parc de Bagatelle 内のバラ園も
見て来よう。

まず La Motte-Piquet Grenelle からメトロ10番線で
Porte d'Auteuil に向かう。
人の流れで会場のRoland-Garros はすぐに分かった。

独特の高揚感。
いい感じ。

雨はしとしと降っていた。

「券!券!券!」

「席あるで、あるで、あるで!」

ダフ屋だ。幾人かに声をかけられる。
いかつい黒人が多かった。

言葉が十分でない東洋人なんか、いいカモだから
放してもらえなかったら怖いので銘子は立ち止まらない。

いくつかの入り口でチケットを提示しては
鞄の中をチェックされて入っていく人たち。

でもがしがし前を進む人がまだいる。

チケットがなくても入れる入り口がどこかにあるのかな?

しかし歩いていくうちに人がめっきり減って来た。
手持ち無沙汰に立っていた係員に聞いてみる。

「チケットないんですが、中に入れる?」

「チケットなかったら無理!」

即答。

試合会場に入る訳ではないのに。
その辺をブラブラしたいだけなのにぃ。

徐々に意地になって先へ進む。
ちょっとモーガン・フリーマン似の警備のおじさんがいた。

まずはとっかかりで銘子は

「この地図でいうと、私どこにいます?」

と話しかける。優しくおじさんは地図を覗き込んだが
老眼だからか目をこすって、すぐに傍の若い兄ちゃんを呼んだ。

「ちょっとこの子に教えたって!」

お兄ちゃんは係員の詰め所に銘子を招き入れて
大きな地図で説明してくれた。

「あの…」

銘子は兄ちゃんにチケットないけど中の写真を
撮ったりブラブラしたりできないか尋ねた。

兄ちゃんの着ているTシャツを指差して、

「そんなのも買いたい」と云うと、

「あ〜。…ちょっと待って!」

うそ!ちょっと期待♪

先程のモーガン・フリーマンに説明してくれてる。

さっきまで柔和な表情だったモーガンはあっという間に
険しい表情になって一言。

「だめ」

「試合を見たいのではなく、そこらの写真を撮るだけ!」

「だめ」

「写真数枚撮ったらすぐに出て行くから!」

「だめ」

絶対にだめなようだ。

兄ちゃんは「あっちの森に行けばい〜〜〜っぱい写真撮れるよ!」

そうじゃないんだってば。

諦めた銘子が「残念やなぁ…。ありがとう、さようなら」と云うと
モーガンはまたころっと表情を変えて「さようなら」。

このフランス人の表情の豹変に銘子はまだついていけない。。。

とぼとぼと来た道を戻る銘子にダフ屋が話しかける。
やっぱり怖い。でも悔しいので優しそうな係員に

「ちょっとここで写真撮っていい?」と聞いては
少し踏み込んで写真を撮ってみる。


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ここで熱闘が繰り広げられてるのね。


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雨が少し強くなって来た。
バラ園に行く気持ちはすっかり萎えていた。

雨の日は美術館に行こう!
銘子はメトロの駅に戻った。

静かな構内でふと足元を見るとちょっとした道しるべがあった。


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構内を点々と誘導している。


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銘子はこの道しるべを逆にたどりながらロダン美術館を目指すのだった。


つづく…このお話はすべてハックションである。


第三章・Hanakoさんとのご対面、をお楽しみに!








posted by Avril at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場

2009年06月16日

“愛の立ちくらみ劇場” '09 Paris編 第一章

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第一章・お願い、前を見てっ!



雨が降っていた。2009年6月5日。銘子は関空へと向かう
バスの中にいた。

座席はほとんど詰まっていた。ほとんど誰も喋らない。
静かなバスがすべるように空港へ到着した。

すぐにチェックイン。

「本日、大変込み合っておりまして、通路側のお席しか
 ご用意出来ないのですが」

「ええ、構いません」

「それから次回からお荷物は20kgまででお願い致しますね」

「え?」

見ると22kg。2kgオーバー。
エコノミークラスの預け荷物の制限は20kgなのだ。

まあ、化粧品やシャンプー等を使い切って
向こうで捨ててくるものも沢山あるし、帰りはエコノミーじゃ
ないもん!

銘子の小鼻が膨らむ。

2年程かかってガス代、電気代、買物、ネットでの酒代などを
全部カード払いにしてちまちま貯めたマイルで、帰りは
ビジネスにグレードアップしてあるのだ。

ビジネスの荷物制限は30kg。楽勝である。

パスポートコントロールもすぐに通過。

それから銘子は免税店でマスカラをまとめ買いした。
別にネットで買えばそのくらいの値段で買えるのだが、何となく
渡航前に買っておきたいのだ。

「こちら、新製品の電池入りのマスカラでございます!…」

おねえさんが、やたら薦めるマスカラ。
勝手に振動して、微妙なニュアンスを作り出してくれるのだそうだ。
スイッチ入れてマスカラ液が飛び散らないのかしら?

昔、電動歯ブラシに歯磨き粉をつけて、そして口に入れる前に
スイッチをONにして、鏡を細かい白の水玉模様にしたことを
思い出しながら、銘子は買ってしまった。

ゲートへ進む。

搭乗口はごった返している。
かなり混んでいる。ツアー客が多いようだ。

搭乗手続きが始まると、長い長い列がすぐに作られた。

三名一列の通路側。どんな人が隣に来るんだろう?
そう思っていると若いカップルがやってきた。
左手の薬指に真新しい指輪が光っている。

新婚さん、いらっしゃい…。

新婦は迷わず窓際へ。
新郎は女性二人の真ん中へ。

「あや、大丈夫?」
「あや、寒くない?」
「あや、ご飯はどっちにする?日本食の食べ納めしておこうっか?」

新婦の名前を銘子は覚えてしまった。

二人に、席を立ちたい時は自分が寝ていても遠慮せずに
起こしてくれ、と銘子は最初に云っておく。

離陸して飛行機が雲の上に出た時、あやちゃんが云った。

「わあっ!雲の上だぁ!」
「どれ?」

新郎が身を乗り出す。
なぜか新婦の内股に手を添えて。

やだ。新婚さんのお隣。
これ以上盛り上がらないでくれ。銘子は祈った。

食事後、機内上映の映画の一覧を見てあまり興味のあるものは
なかったが、暇なので銘子は『容疑者Xの献身』を観ることにした。
原作を読んでいるので期待せずにチャンネルを合わせた。
そして映画が始まってすぐ、銘子は寝てしまった。

気がつくと機内はすっかり消灯時間になっていた。
エンジン音だけがひびいている。

新郎は映画を観ている。新婦は寝ているようだ。

ふと空腹を覚えて銘子はギャレに行って『うどん de Sky 』
(うどんですかい?)を貰って来た。周囲に広がる独特の
カップ麺の香り。なぜか隣から熱い視線がカップに注がれているのを
感じる。新婦もむっくり起きたようだ。

空のカップを捨てに行きがてら、銘子はトイレに立った。
戻ると…新婚さんは二人ともうどんをすすっていた。

よかったね、あやちゃん機内食食べてなかったもんね。

心の中でつぶやき、銘子はまた『容疑者Xの献身』に
トライした。またすぐに寝てしまった。。。

飛行機は無事に着陸。
少し前にAFは大きな事故があったので心配していたが
…よかった。

新婚さんはParisから乗り換えでRomaへと行くらしい。
二人に別れを告げて、いざ、Paris市内へ!

タクシー乗り場に行くと、気のいいおじさんが待っていた。

とってもいい天気。
夕方だが、まだ真っ昼間の明るさである。

「いい天気ですね」

その一言でおじさんが待っていました!とばかりに
話しかけて来た。

「旅行?仕事?」

カメラと携帯の時刻合わせをしながら銘子は
返答した。

おじさんがハンドルを握ったままこっちを振り返る。

あっぶな〜いっ!!
ここ、高速やで。こわ。

と思いながら話していると、おじさんは自分が話す時は
ルームミラーごしに銘子を見ていた。

銘子が話しだすと、後ろを向くのだ。

目を見て話すというポリシ−でもあるのか?

でも危ない。

「大丈夫!大丈夫!」

ほんまかいな。

「ぽ〜り〜ぽ〜り〜ぽ〜り〜」

警察車両が追い抜いて行く。

「何か事件でもあったんですかね?」

「あいつらは、友達を空港まで迎えにいったり
 早く家に帰りたい時鳴らすねん」

「うっそ〜!」

今までの『空港ーParis』間のタクシーで一番話したと思っていると
おじさんが

「ほれ!今から写真撮れ!Parisで一番目の写真撮れっ!」と云う。

「今から目の前に凱旋門が来るで。んでそれから
 エッフェル塔の真横通るから、それも撮りやっ!」

「は、はい」

「ほれ!来た来た!!」

「はい!」

「今や!」

車は容赦なく揺れている。
無理だってば。

でもおじさんの熱意もあって、とりあえずシャッターを切った。

「撮れたか?」

「はい!」

「よかった!」

ぼけてるってば。。。


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凱旋門の周りを周回する車。
阪神高速環状線の合流なんて可愛いものだ。
こわ。私無理!銘子は真剣に思うのだった。

今回、銘子はアパルトマンを8泊の予定で借りた。
La Motte-Piquet Grenelle 駅前にある部屋に向かう。

予定時刻を20〜30分遅れて到着。

「オバマが悪いねんで!」

この渋滞は、当日来仏していたアメリカ大統領の警護で
引き起こされたのだ、とおじさんは云っていた。

部屋のドアをノックすると中で管理スタッフ Aikoさんが待っていた。

「お待たせしました〜っ!」

部屋の使い方、諸々のコツを教えてもらって別れる。

持って来たノートパソコンもインターネットに接続出来る。

「よし!」

数日間、お世話になる部屋を見渡しながらつぶやいて
銘子は駅前のスーパーに急いだ。

何よりも大切な明日の朝ご飯の調達に!!



第二章・雨のRoland-Garros へとつづく…




posted by Avril at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛の立ちくらみ劇場